ラブスピ考察編 2 ハルミリオンSIDE
何を期待しているのかは知らないが、俺がこちらの世界に来た時点で何やら察しているようだ。
ハルの名誉のために妹の好奇心は刺激しないようにうまく誘導してやり、事の顛末を聞かせてやった。
「すごーい! お兄ちゃんはハピエンの更にハピエン! ベストエンドっていうヤツに辿り着いたから、ハルミリオンがここにいるんだね!」
「ハピエン……という概念はよく分からないが、そういうことらしい。精霊神様のおかげだな」
「そう、それ! 精霊神の名前、もう一回教えてもらっていい?」
「名前はリクナとルイサ。双子の精霊神だ」
リムは興奮気味に俺の手を握ってまたブンと一度振る。
「うんうん。あと、運命の三女神!」
「確か、マキーヌとユアンヌとモモリーヌだったな」
「やっぱり! その名前、今見たばっかりなの! あ、ハルミリオンにも見せるから待ってて」
そういうとリムは俺の手を離し、傍らに置いてあった長方形の何かの道具を俺に見せてきた。
そこには綺麗な絵のようなものが見える。
エーテルヴェールの景色と、精霊たち。それにハルとカティか?
順番に移り変わっていく様が目まぐるしい。ただ、どちらかというと実際の本人ではなく描かれた絵画のようだ。
神殿にある大鏡の原理と似ているのだろうか? そのうち絵の中に文字が流れてきた。
「あ、ハルミリオンは文字は読める?」
「ああ。正直見たことのない言語なはずだが、何故か頭の中で翻訳されているな。ただ、言葉の真の意味は分からないが……」
「これはね、ラブスピのスタッフロール。スタッフは……なんて説明したら分かるかなぁ……まあいっか! お兄ちゃんに伝えてほしいからこのまま記憶してもらえばいいのかな」
「兄に丸投げか? いいだろう。この文字列を記憶すればいいのだな?」
かなり長い文字数だが、集中すれば記憶できるだろうか?
俺が記憶しようとすると、リムは慌てて全部じゃなくていいと言ってきた。
「私が教えたところだけで大丈夫! そろそろ来るよ……まずは、ここ。プランナーはマキーヌ。で、プログラマーがユアンヌ、更に……デザイナーとデバッガーがモモリーヌ」
「妙な単語が多いな」
「小さなゲーム会社だからね。みんな兼任して作ってるんだよ。私も検索した単語で説明するから間違ってるかもだけど……マキーヌはプランナーっていうお話を書いた人で、ユアンヌはプログラマー。イベントを作る人だから、ラブスピでいう中間報告かな」
「その説明で俺には理解できずとも、ハルならば分かるということだな」
俺にとってはまずラブスピという名前と、ゲームという概念が分かっていないからな。
ハルに教えてもらったが、この世界の根本が分からないので完璧に理解はできない。
この世界の神のような存在が、この箱型の道具の中に俺たちの世界を創造したということだろうか?
「難しいよねー。とりあえず単語として覚えてもらえばきっとお兄ちゃんが理解して補足してくれると思う! で、モモリーヌ。デザイナーは……なんだろう? 大まかにいえば芸術家?」
「芸術家?」
「描いたり作ったりするって感じかな? デバッガーは間違いを正す人だね」
「つまり、それが三女神ということか」
リムは何度も頷いてみせる。三女神はこの世界を創ったという解釈はあっているらしいな。
そして、最後に二人の名が流れてきた。
その名前が流れた後に、葉に雨が降り注ぐような絵が流れてきて箱の中央で止まった。
「で、プロデューサーとディレクターのルイサ、全てをまとめるプロデューサーがリクナ。で、このゲームを作った会社の名前はレインリーフ。リクナとルイサが二人で作った会社なんだって」
「かいしゃ?」
「会社は人が働いている場所かな。事業を二人で立ち上げたって言えば分かる?」
「事業か。それは理解できる」
この世界独特の単語はあるようだが、つまりこの道具の中の世界を作り上げたという解釈もあっているようだ。
同じ名前でこの世界にも存在しているということだろう。




