102.心強い仲間たち
扉を開けて入ってきたのは、俺の大好きな二人だった。
俺が声を上げる前に、二人から俺の側へ近寄ってくれる。
「話の途中にすまんな」
「ハルさーん! 来ましたよぉ。元気になられたみたいで良かったです! その件なら、ラウディ様のご指示でレリオル様へ話を通しておきましたぁ」
「ウルフとモグ! 二人とも……ありがとう!」
「今日はエライ賑やかなお客様たちやなぁ。おおきに。そんなら話は早そうや。早速、アビスヘイヴン経由で目的地まで急がんとな。先に家のもんが場所取りしてる。そこに合流せな」
「ハル、オレたち精霊は一緒に行くことはできないが……頑張れよ」
「ハルさぁん! また戻ってきてくださいねぇ。ラウディ様と一緒に待ってます!」
ウルフとモグの励ましを受けて、今度はラウディが何かを外して俺の首へ付けてくれる。
これはペンダント?
「ラウディ……」
「僕の力を込めてあるペンダント。ハルのことを守る。無事に帰ってきて」
ラウディは俺の耳元で心配そうな声で伝えてくれたけど、その瞳には俺の無事を確信している強い信念が宿っていた。
色々な人の想いが詰まってるんだ。失敗はできない。
「みんな、任せて。すぐに準備を済ませてきます」
「ああ。いい表情になったな、ハル。ほな、神殿前で待ち合わせしよ。精霊様方、ハルは必ず無事に守らせていただきます。フィッツロイ家の名に懸けて」
モーングレイは姿勢を正してから、精霊たちへ向けて最敬礼の形をとる。
やっぱり貴族の家の人なんだってことが分かる。
俺はラウディたちと一緒に一旦店を出て、自宅へ帰ることにした。
ここで旅立つ雰囲気になったけど、みんな心配だからって結局家までついてくることになった。
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「いいか、ハル。敵に襲われたときは身を低くして、一旦防御に徹しろ。そして、隙を狙って反撃だ」
「ウルフ……俺、戦った経験がないからうまくできるか分からないけど……頑張ってみるよ」
「ハルさんならできますよぉ! はい、カラスが作った剣をどうぞ」
「ありがとう、モグ。二人とも……本当にありがとうな」
ウルフとモグは俺の事情を察して、少しでも助けたいと動いてくれたらしい。
モグが俺の事情をウルフへ話してしまったことを謝っていたけど、ウルフなら安心だし問題ない。
「ハル……無理しないで」
「大丈夫。これでも逃げるのは得意だし、俺には秘策があるんだ。だから、安心して待っていてくれ」
みんなが心配してくれて、普段とは違う旅支度の服装をするようにと準備してくれた。
なんていうか……冒険者風とでも言えばいいのかな? 制服じゃなくて、皮でできた胸当てを付けて上下動きやすい布の服を着てブーツを履いている。
そして、腰にはカラスの作ってくれた剣をぶら下げた。
俺自身に剣の心得はないんだけど……これにもちゃんと意味はある。
他のみんなは俺も剣が扱えると思ってるみたいだけど、残念ながら俺が握ったところでおもちゃにしかならないだろうな。
「じゃあ、行ってくる。みんな、留守番頼んだ」
「ハルさんのご無事を祈ってますからねぇ! 妹さんを助けてあげてくださいー」
「ハル、お前ならできる! 信じているぞ」
「ありがとう、二人とも。じゃあ、ラウディ。行ってくる」
ラウディは無言で俺を抱きしめたあと、俺の額に口づける。
そして、額と額を合わせた。
「ハル……行ってらっしゃい」
本当は行かせたくないという気持ちが見え隠れしているけど、俺のことを応援して送り出そうと腹を括ってくれた気持ちが伝わってくる。
俺も不安な気持ちを抑えて、笑顔で頷き返す。
みんなに見送られながら、急いで神殿を目指した。
今までの色々なことを思い出しながら、今度だけは絶対に失敗できないと自分に気合いを入れる。
何せ、俺の真のハッピーエンディングの締めくくりはハルミリオンの幸せも含まれるんだからな。




