100.僕のモノ
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
気づくと、ラウディの腕の中にすっぽり収まっていた。
「ラウディ?」
「ハル……起きたの?」
頷く代わりにラウディへ身を寄せると、額に唇が落とされた。
何を言っていいのかも分からずに黙っていると、今度は髪を梳くように優しく撫でられる。
「これで……ハルは僕のモノ」
「なっ……」
いつの間にかいつものラウディに戻っていて、ペースを崩されっぱなしだ。
でも、後悔はしていない。
「……俺は、ラウディのモノになったんだよな」
ラウディに力強く頷かれると、余計に実感してしまって恥ずかしくなった。
ラウディの執着心にはじわじわと気づかされてはきたけれど、まさかこんなことになるなんて。
俺自身が一番驚いている。
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最初はどうリアクションを返せばいいのかとか、余計なことを考えていたけど……ラウディに触れられていくうちに考えている余裕がなくなっていた。
ラウディの暗緑色の瞳は俺のことだけを求めていて、見つめられていると抵抗する気力も奪われていく。
最後までするのかって思った時は不安すぎて緊張してぎゅっと目を瞑っていた。
往生際が悪いのは分かってるけど、怖いものは怖い。
だけど……ラウディが優しくしてくれて。それで……あっさりと、だもんなぁ。
妙に器用で手馴れているのは仕様なのか?
乙女の妄想が詰まったゲームだからとか……?
色々考えている余裕があったりなかったりだったけど、俺がひたすら恥ずかしい思いをしたことは間違いない。
「んなとこ食べても、美味しくないから……」
「そんなことない。ハルはどこも甘くて美味しい」
とかなんとか言ってたし。思い出しちゃったよ、もう。
俺はラウディのデザートになっちゃってるし!
いや、もっと別の言い方があるのかもしれないけど……でも、文字通り食べられてるって感じだったんだよな。
「分かってる。俺に全部任せて?」
って、ラウディが言ってた時は……本気になると僕から俺に変わるんだなって気付かされた。
俺モードの時のラウディは執着度が半端ないだろうから、聞こえた時には色々な意味で腹をくくっておかないとな。
……忘れそうだから、また確認した方が良さそうだけど。
今回も……今までで押しが一番すごかったし。何がとは言わないけど。
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でも……ラウディと本当の意味で打ち解けられた気がする。
これがきっと、二人が溶け合って一つになるってことなんだ。
だから、行為自体が恥ずかしくてもいつかきっと慣れる……のかな。
だって、今も心はぽかぽかと温かいままだ。
ラウディの熱に答え続けられるかは分からないけど、できる限り答えていきたい。
……恥ずかしぬから、控えめにとはお願いしておかないとな。
今、この瞬間もラウディはしっかりと俺を抱きしめたまま、満足そうだ。
肩口に顔をすりすりと擦りつけながら、俺自身を堪能しているとでも言えばいいのかな?
自分で言っていても恥ずかしすぎるけど、事実……なんだよな。
「……これからも一緒にいような」
恥ずかしすぎて小声で呟いたのに、ラウディに聞かれてしまったらしい。
ぎゅうぎゅうと抱きしめてきて、無言の承諾をされてしまったようだ。
それが俺の素直な気持ちだから別にいいんだけど……付き合ったばかりの恋人同士みたいな台詞だよな。
可愛い子が言えば可愛いなで済む話だけど、俺が言ってもなぁ……。
でも、ラウディは喜んでくれているみたいだし……いいか。
ラウディのキス攻撃にも慣れつつある俺は、どこまでもラウディのペースに巻き込まれてしまっているかもしれないな。




