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異世界から来た美少女と自宅でまったりダンジョン運営する話  作者: 猫野 ジム


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第51話 本音が隠されている

 ついにエリンの転移のマスタースキルが開花したようだ。


「頑張ったな! エリン」


「ありがとうございますっ!」


 ただ開花したというのはエリンの中での感覚で、エバースさんから教えてもらった通りに魔力のコントロールができるようになったということらしい。


 なので実際に試したわけじゃないが、エバースさんがサポートをしてくれるそうなので、確実に成功するということのようだ。



 そして俺の休日の朝。日本には俺とエリン、異世界にはアナスタシアさんとエバースさんが画面越しに対面している。


「エリン、もう転移のマスタースキルが開花したとは驚いた。私は数ヶ月かかったというのに」


「お父様の教え方が良かったからです!」


「そんな謙遜しなくていいんだぞ。私はエリンの才能を見抜けなかったことを反省しているんだ」


 エバースさんはそう言う。リーンベル家の顔であり、世間的にもその地位はかなり上のはず。

 それなのに人の気持ちを考え素直に自分を省みることができる。ウチの職場に来てくれねえかな。


「エリン、最後に聞くが異世界(にほん)でやり残したことはないか?」


「ほんとはもう少しだけマスターと一緒にご飯を食べていたいなって思いますけど、またここに帰って来ればいいだけですよね!」


 それを聞いたエバースさんは黙ってしまった。アナスタシアさんも。そして俺ですらも。


 エリンは分かっているんだろうか? 転移魔法といっても、ダンジョンマスターのマスタースキルとしての転移であることを。


 エバースさんと同じマスタースキルというのなら、その効果はダンジョン間限定だ。

 つまりエリンが俺の家に転移したことはただのイレギュラーで、本来なら転移先は絶対にダンジョンの中ということになる。


 ならば日本にダンジョンがあるか? 少なくとも俺は見たことない。ニュースでも取り上げられていない。

 つまり一度でも日本から転移すると、二度と日本には来られないということ。それはエリンと二度と会えないことを意味する。


 この場にいる全員が言葉を探しているかのように黙り込む。


「ミカゲ君、君はどうしたい?」


 エバースさんが俺に決定権を委ねる。これは丸投げなんかじゃない。俺の本音を聞いているんだ。


「俺はエリンが一刻も早く帰れるようにとの思いでここまでやってきました。微力だったとは思いますが、ようやくその願いが叶おうとしているんです。やっぱり家族は一緒にいるのが一番だと思います」


 エバースさん達は家族で俺は他人。どちらを優先するかなんて、考えるまでもない。


「そうか……。ありがとう、ミカゲ君」


「いえ、お礼を言ってもらえることは何も……」


「ならば今すぐにでもと言いたいところだが、先ほど緊急の用事が入ってね。今日はもう時間がないんだ。だからエリンが帰るのは明日でも構わないだろうか?」


 先ほどって、エバースさんはずっと画面に映っていたじゃないか。なのにそんな連絡いつ受けたというんだ? 「ウソが下手ですね」と言ってあげたい。


「分かりました。今日はエリンと過ごします」


「ああ、それがいいだろう。ところで君は気が付いただろうか? 先ほどのエリンの言葉の本当の意味に」


「はい、とても光栄だなって思います」


「やっぱりエリンが君の家に転移したことは幸運だったようだ」


 そしてエバースさんとアナスタシアさんが帰り、思いがけずエリンともう一日過ごせることになった。


 さっきエバースさんが言った、エリンの言葉の本当の意味。「ほんとはもう少しだけマスターと一緒にご飯を食べていたいなって思います」。それはそのままの意味で間違いない。


 もちろんそれだけでも嬉しい。だけど重要なのはその次。「またここに帰って来ればいいだけですよね!」。その一言にこそエリンの何気ない本音が隠されている。


「またここに()()()来ればいいだけ」。つまりエリンの中で俺の家は『帰る場所』になっているということ。


「またここに来ればいいだけ」でも言葉として意味が通じる。でもわざわざ「帰って」と付け足すということは、俺はエリンが帰りたくなる場所を作ることができたということだ。


 エバースさんも即座にそれに気が付いたんだろう。当のエリン本人はキョトンと首をかしげていたけど。きっと無意識なんだろうな。


「さて、思いがけず一日時間ができたな。エリンは何がしたい?」


「一緒にお買い物に行きたいです!」


「えっ、そんなことでいいのか? もっと楽しいことならいくらでもあると思うけど」


「私にとっての楽しいって、何をするかじゃないんです。誰と過ごすかなんです」


「そっか。よし、それならショッピングモールにでも行くか」


「えっと、それもいいですけど、お昼ご飯と晩ご飯の材料を買いに行きましょう」


「それなら普段と変わらないじゃないか」


「私はそんな時間が好きなんです。そして二人で一緒にご飯を作るんです。さらにそれを二人で一緒に食べるんです。それってとっても素敵な時間だと思いませんか」


 その時のエリンの笑顔には、まるで優しく包み込んでくれるような輝きと温かさがあった。


 俺も笑顔で「うん、素敵だな!」と返し、二人で近所のスーパーへ出かけることになった。


 野菜のコーナーへ行き、自慢げに野菜の名前を俺に言ってくるエリン。もうニンジンをリンジンと言ったり、ブロッコリーをヌロッコリーと言ったりはしない。


 俺が「もうすっかり日本に馴染んだな」と言うとエリンは、「私だってもう立派な日本人ですからね!」と胸を張る。

「さすがに日本人ではないよな!」とは言えない俺だった。


 結局この日もいつもと変わらない日常を過ごし、あとは寝るだけになった。

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