第42話 クリア
アイスゴーレムの飛び道具であるデカい氷の塊を、数メートルの距離から盾で受け続けており、その度にコントローラーが激しく振動している。体感だけど約3秒に一回という短い間隔。
画面の中の視界は顔の前に出した盾でほとんど塞がれてしまっていて、反撃の糸口を見つけられない。
(このまま防御してるだけじゃ勝てない……)
攻撃は最大の防御という言葉もあるけど、ここは多少無理してでも攻撃に転じるべきだろうか?
盾だって万能じゃないから、盾そのものが壊れることだってあるんだ。
俺の中では盾は緊急時の防御手段であって、敵の攻撃は避けるに越したことはない。いや、盾の使い方はまだあるか。
895:名無しの冒険者
なんか盾よりもアイスゴーレムが飛ばしてくる氷のほうがデカいよな
896:名無しの冒険者
今のところは盾に当たった氷は全部粉々になってるけど
897:名無しの冒険者
やっぱり片手剣だと盾が使えるのがいいよな。これ盾が無かったら顔面にクリーンヒットしてる
898:名無しの冒険者
でも盾そのものがいつまで耐えられるかだな。盾って壊れるから
ヴヴッ、とコントローラーを握る手に振動が伝わり続ける。盾を構えるために防御ボタンを長押ししているので、動きに制限がかかってしまっている。俺の腕は二本しか無いのだ。
俺は防御ボタンを押しながら左へとサイドステップして、盾を構えたままその場を離れようと試みた。
ところがアイスゴーレムも同じように照準を変えたため、状況は変わらない。
(どうやらこの攻撃を止めるつもりはないらしいな)
アイスゴーレムは味をしめたのか、今も絶え間なくデカい氷を飛ばしてきている。
しばらく受けているうちに、俺はその間隔が等間隔であることに気が付いた。
俺は意を決して盾の構えを解除すると、タイミングを見計らって画面の視界の中で迫り来る氷に飛び乗った。
それを足場にして一度だけ高く跳べる跳躍魔法で、瞬間的にアイスゴーレムの頭上へとジャンプ。
そして重力を味方につけ持っている盾を思いっきりアイスゴーレムの頭に叩きつけた。それに連動してコントローラーも振動する。
頭部に硬いものを叩きつけられて脳しんとうを起こしたのか、アイスゴーレムの動きが少し止まったため、すかさず肩に着地した。
それから至近距離で初級魔法のファイアボールを頭部めがけて連発し、アイスゴーレムの氷が一時的に少し溶けた部分に集中して片手剣での斬撃を加え続ける。
899:名無しの冒険者
へえ、こんな戦い方があるんだな
900:名無しの冒険者
ファイアボールしか使わないのはなんで? あれだけできるなら中級の火属性魔法だって使えるだろうに
901:名無しの冒険者
火属性の中級魔法だと爆発を伴うものがあるから、爆煙で見えなくなることを避けたんじゃないの? せっかくあんなとこまで登ったんだから、ジッとして振り下ろされたくはないはず
902:名無しの冒険者
巨大な氷を少しずつ溶かしてるようなイメージか。そして柔らかくなったところで火属性の剣で斬りまくる
903:名無しの冒険者
どうやら効いてるみたいだな。最初みたいに弾き飛ばされてないから
コントローラーに振動が来ないということは、ダメージが通ってると判断してよさそうだ。
一見すると闇雲に攻撃してるみたいで見栄えがよくないかもしれないけど、特別な力や装備が無くても戦い方次第で勝てるんだということが伝わればいいな。
しばらく攻撃すると、足場にしているアイスゴーレムの肩がガクッと下がった。
そのまま持ち直すことなくどんどん体勢を崩していったため、俺は地面へと降り立つ。
そしてアイスゴーレムはガラガラと大きな音とともに、大小さまざまな大きさの氷へと姿を変えた。つまり倒したんだ。
その近くに宝箱が現れた。ボス撃破の報酬で間違いないだろう。
俺は忘れずに鑑定の魔法を使い、その安全が保証されてから開けた。
中身は一定時間、氷属性の攻撃によるダメージをゼロにしてくれるポーション2個だった。
904:名無しの冒険者
微妙な中身だな……。ゴミではないけどそこまで貴重でもないっていう
905:名無しの冒険者
材料さえあれば店で調合してもらえるからな。まあその材料を集めるのが少し大変ではあるが……
906:名無しの冒険者
効果を考えると当然ではあるんだけど、使いどころが限られるってのがな……
907:名無しの冒険者
2個ってのがまた微妙だわ。2個入れといたから文句ないよな? って言われてるみたい
大不評。名無しの冒険者さん達、みんな微妙な反応だなあ……。確かエリンの個人倉庫にも30個ほど在庫があったっけ。
とにかくこれで俺の探索は終わったわけだ。ボスは復活できるから、あとは国選パーティーが戦うことになるのか。まあ楽勝だろうな。
探索での評価は俺としてもメインじゃない。あくまでダンジョンマスターとしての評価が大事なんだ。
「マスター、お疲れ様でしたぁ!」
「ありがとう、エリンもお疲れ様」
隣にいるエリンと目が合うと、お互いに笑顔になる。このまま打ち上げといきたいけど、まだ終わったわけじゃない。




