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陣と輝夜はバス停でバスを待っていた

 陣と輝夜はバス停でバスを待っていた。

 そして、バス停にやってきたバスに乗り込むと、バスの中は前の方は混んでいた。


 バラバラに座らなくていい場所を探して、俺たちはバスの後部座席で並んで座ることができた。

 その時、輝夜さんの携帯が鳴った。スマホ画面に表示されている相手は彩夏先輩となっている。声を落として電話に出る。


「はい、今、バスの中なんです。電話を切りますから」

「電話を切らないで! もしもし輝夜ちゃん。さっきはゴメンね? 私たちの勘違いだったみたい。それより宇良神社って面白そうだから、近々行ってみたいの。案内をお願いできる?」


 謝っているのに疑問系? 小声でも図々しいお願いに変わりない。そんなところが彩夏らしいところだ。でも、先輩に頼まれると断れない。それに実家に興味を持ってもらうこと自体は悪い気はしていないようだ。


(鬼退治をしていない浦島太郎は桃太郎とは違うんです)輝夜はため息交じりに小さくつぶやくと、電話に向かって声を弾ませた。


「はい、いつでもいいですよ。それで陣君も一緒でいいですか?」

「ジン? あっ陣ね。いいわよ。もう名前呼びをする仲になってるんだ?! 輝夜ちゃんて見た目より積極的だね」


 また難癖を付けられたら庇えれるように、輝夜は俺にも聞こえるようにスピカーにしていた。その選択は裏目にでたようで、先ほど俺がした恥ずかしい思いを、今度は輝夜がしているみたいで、口をパクパクさせているのに言葉が出てこないみたいだ。


 でも、キッと大きな瞳に力が入ると何とか持ち直した。いや開き直ったみたいだ。


「先輩だって、初対面の人を名前呼びしているじゃないですか? 私も陣君を名前呼びしたからって何か先輩に迷惑かけています?」


「いや、迷惑なんてないよ。仲良きことは良きことかなって。陣も一緒でオッケー!! でも寂しいな。私の輝夜が男とできちゃうなんて~」


「俺たちは付き合ってません!!」


 絶句している輝夜さんに代わって、俺はスマホに向かって全力否定した。


 乗客が一斉に後ろを振り返ってこちらを見たのでしまったと思ったのだが、その視線は怒っているじゃなくて安堵している表情だ。


 普通なら非難される公共交通の場での電話。ただし、電話しているのが輝夜さんのため、周りの人たちは聞き耳を立てていた。


 つり合いが取れていない冴えない男と付き合っていないことが判明したんで、彼らは再び神を信じられるようになったということだ。


 俺自身は神の存在は知っているが、神を信じることは無いだろうと宣言できる。ただ、乗客に気が行ってしまったため、俺の宣言を聞いた輝夜が絶望したような顔になった瞬間は見逃していた。


 輝夜に視線を戻した時、表情だけでなく声色までまじめモードに染まっていた。


「ふざけるのはここまでですよ。それでいつ宇良神社に参拝するんですか?」

「早いほうがええかな? 来週の土曜日とかどう? 私が車を出すから」


「来週の土曜日ですね。わかりました。両親にもそう伝えます」

「それじゃあシクヨロ!! 陣、それまでに輝夜ちゃんを落としておくこと! ええな?」


 輝夜も俺も何か言う前に電話が切られた。

 最後の爆弾発言だけは、輝夜に聞かれたくなかった。


 様子を窺うように見ると、スマホをバックに直した輝夜も俺に視線を向けた。その頬は心なしか赤くなっている気がする。でも、なにごともなかったように会話が始まった。

 無関心を装ってくれるのは俺もありがたい。


「陣君……。都合も聞かないで約束したけど大丈夫かな?」

「俺も興味があるから大丈夫」


「興味があるって……? 聞きたいことがあればなんでも聞いて。あっ、でも答えられないこともあるかも……」


いや、俺は都合を聞かれたから答えただけなのに、頬に手を当てて瞳を輝かせている。なにか期待させるようなことでも言ったのか?


「やっぱり、神社って言うのは、禁忌で答えられないことも多いんだろうね?」


 俺の発言で輝夜さんの瞳は輝きを失い、ショボンと顔に書いてある。なにか言葉を間違えたみたいだ? それでも、輝夜さんとの関係がここで切れるのは正直困る。


「でも、連絡を取りたいこともありそうだし、電話番号を教えてほしい」


 俺のお願いにコクコクを頷く。表情がコロコロ変わる。この子なら美人でもいつまでも見飽きることがないだろうと、自分の発見に心が揺れた。


「そうだね。お礼のノートとかあるし、学校以外でも連絡を取り合わないといけない場合があるから交換しとかないよね」


 そういって、おずおずとスマホを俺に向けて差し出した。俺もスマホを出して赤外線でピッと電話番号のやり取りが終わった。


「いつでも、連絡が取れるね」

 満足そうに輝夜が言葉を紡ぐ。


 こんなやり取り、免疫のない俺にとっては精一杯だった。いつかボロが出るかも?輝夜に幻滅されるかも? これ以上続くとハズい。

 バスは停留所で止まったところで、輝夜が立ち上がった。

「あっ、ここで降りないと! 陣君、バイバイ!!」

 バスから降りると、輝夜を目で追っていた俺に気づかず、マンションの中に入っていった。


 ここから、俺の下宿までバスで一駅、距離にして八〇〇メートルほど。少し行くと俺たちが事故に遭った場所で、そこから北に大通りを三〇〇メートルいった所に同志館大学大学 文学部キャンパスがある。


 お互いに大学に行く途中に事故にあったわけだ。もっとも下宿の位置関係は、俺の方が京都駅や繁華街から遠い学生たちの下宿が並ぶ学生街だ。


◇ ◇ ◇


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