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8話 彼女に相応しい筋肉は私のようだな

「やめてください!」

「しかし症状を分析する為にも何度か見ておきたいのですが」

「い、嫌です!」

「あまりに一瞬ですし、初めての症例ですので」

「お願いします、無理ですうう」

「……え? どういう状況?」


 押せ押せの医者に全力拒否の私、訳も分からず半裸で戸惑う副団長、そして何故かドヤ顔の団長、床にはシャツだった布切れが散乱していた。

 本当、どういう状況よ。


「あー、最近服が破けるのミナちゃんが原因?」

「マティアス、軽々しく名前で呼ぶな」

「いいじゃんよ」


 一気に三人の男性に知られてしまった。不可抗力とはいえ、これ以上知られたくない。


「あの、他の方には黙っててもらってもいいですか?」

「もちろん、ミナちゃんのお願いなら」

「こちらは患者情報をもらすことはありません」


 大丈夫だろうか。ここまできたら仕方ないけど、これ以上広まってほしくない。


「二人が外部に漏らさないよう私が責任を持つ」

「団長……」


 そういえば責任をとるって言ってた。

 団長は本当真面目だ。


「では、すてえたすというものがどのようなものか知りたいのですが教えて頂きますか?」


 説明してもあまりピンとこないようだった。

 馴染みがないだろうし……できれば同じように見てもらえれば早いのにできないのがもどかしい。


「あー……紙をお借りしても?」

「はい」

「左胸あたりに、このぐらいの大きさで勝手にでてきて、筋肉の状態が表示されます」


 書いて渡すとハマライネン医師が感心して息をついた。


「ヘイアストインさん、お上手ですね」

「えっ」

「……本当だな。絵を描くのが趣味なのか?」


 いけない。


「ち、ちがいます! た、たまたま上手くかけただけです!」


 もう諦めたことだもの。言うべきことではない。


「そうですか。ではどのような内容が書かれているか何名分か教えてください」


 え、でもそれは個人情報になるのでは?

 筋肉だけど。

 筋肉だって個人の尊厳だし。


「ええと、それは……」

「私のすてえたすを書いてみてはどうだろう?」

「いいんですか?」

「ああ、問題ない。むしろ私も興味がある。今後の鍛錬にも活かせるだろう?」


 じゃー俺もーと副団長も手を上げた。団長は「私だけで十分だ」と言ってるけど、気を使ってくれたんだと思う。私が少し渋っただけで把握してフォローしてくれるとかすごい。


「なら……団長の上から申し上げますと、浅頭筋8、頭蓋表筋7.5、この頭蓋表筋の内の後頭前頭筋の前頭筋と後頭筋がそれぞれ7.5、側頭頭頂筋8、鼻根筋7.5」

「お待ちください、ヘイアストインさん」

「え?」


 苦々しい顔をしているハマライネン医師にやりすぎたと心の中で焦る。

 かなり細かく語ってた。気持ち悪い、よね……メジャーな部分だけ言えば十分のはずだもの。


「す、すみません」

「いえ。情報があまりにも多いので、紙に書いていただけますか」

「え?」

「私が学んだ人体解剖学の領域を越えています。今の医学ではそこまで多くの筋肉を教えていない」

「えっ」


 医師として悔しい限りですと歯噛みをするハマライネン医師は次に顔を上げると「ぜひ学ばせて下さい!」と瞳を輝かせた。


「我が国キルカスで筋肉について発展を遂げるチャンスです! 是非!」

「は、はい」


 さっき書いた絵に筋肉の名を書いていく。そういえば私はすんなり受け入れていた。内側の見えない筋肉は解明できていない部分が多いらしく「学会発表だ!」とハマライネン医師は盛り上がっている。


「クリス、彼女の治療が先だ」

「勿論です!」


 治療イコール研究。

 そんな思考が見え隠れした。

 服が破れなくなるためにも仕方ないと飲み込む。純粋に喜んでいるところも分かったから仕方ない。

 ハマライネン医師もかなりきわどいけど筋肉大好きな私も人のことは言えないし、気持ち悪がられなかっただけよかった。


「えー、俺団長より下?」


 書ききった筋肉レベルを見てマキネン副団長が喚いた。

 対して団長は自身の完璧な筋肉レベルにご満悦だ。


「彼女に相応しい筋肉は私のようだな」


 私にふさわしいって?

 私の筋肉は女性平均値より少し上なだけだから、そもそも私は団長の筋肉にふさわしくないと思う。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

本日のパワーワード「筋肉だって個人の尊厳だし」。というか、そもそもミナの思考がおかしいですよね。自分の筋肉レベルはバランスマックスレベルの団長にふさわしくないって思う時点でかなりズレてます。まあこういう抜けてる部分がラブコメになるからいいですよね!(笑)

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