表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/56

7話 今、服を破くことはできますか?

「責任を取る。結婚しよう」


 なんで?


「え、どうして……」

「未婚の女性の裸を見たのだから責任をとって当然だろう」


 意外と古風だ。しかも全裸じゃなくてお腹だけだし。


「いえ、結構です」


 冷静な表情にぴくりと動きが入る。


「……何故だ。すでに相手が?」

「いえ、相手はいませんが……まあその、私から見せましたし」


 というかアウトなのは私だ。今やっと落ちついて来たから分かるけどかなり暴走してた。全ては団長の筋肉が悪い。いやでも今の内ならセクハラでクビにならずに済むかも。


「……団長、もう察してらっしゃるかもしれませんが、騎士の方々の服が破れるのは私が原因です」

「それは、」

「全てはこの眼がいけないんです! ステータスが見えるようになってからおかしいんです!」


 洗いざらい話した。

 あの紅茶を飲んだ日、筋肉のステータスが見えるようになって、服を破くスキルまでゲットしたこと、自分では制御できないとこまで全て。


「私、この眼を治したいんです。けど医師団の皆さんは忙しいですし、同じ症状の人いませんし」


 なのに服をビリビリにするスキルは精度をあげている。

 ステータスを見るだけなら見た目影響がでないし黙っていればバレなかった。直に筋肉を見たくなった私からすれば最高にラッキーだけどバレたらアウトでしょ。


「……ふむ」


 途方もない話に団長は真面目に考えてくれた。顎に手を当て真剣に悩んでる。


「原因に心当たりは?」

「やっぱりあの日の紅茶ですかね……」

「あの時か……やはり毒かなにかだろうか」


 私が疑うあの香料も今は中身を分析中で確定できない。


「やはりもう一度医師団の元へ行こう」

「え、でも」

「忙しくても君も患者の一人、診てもらうべきだ」

「で、でも」

「大丈夫だ。私も一緒に行こう」


* * *


 医師団の中でも若手でリーダー的存在なのがクリスティアン・ハマライネン医師だ。現場には大体彼がいる。


「以前いらした時から眼に違和感があると……相手の筋肉の状態が分かり、最近は服を破いてしまう……今後は初診時に仰って下さい」

「……すみません」


 だって言いづらい。

 ステータスにしたって筋肉だけだし、服を破くなんてセクハラだし。


「クリス、紅茶に毒は入っていたのか?」

「以前提出頂いたものの分析はまだ報告があがってきてません」


 分析担当も体調不良者が出て進捗がかなり悪いらしい。

 医師団以外にも体調不良者が増えているのも原因の一つだ。

 私と団長と同じような状況で倒れた場合、その時の食事や飲み物に食器、なにからなにまで調べないといけない。

 人出が少ない中で調べるものだけが増えていく。悪循環だ。


「ヘイアストインさんのような症例は他にありませんね」

「でしょうね……」

「ちなみに今、服を破くことはできますか?」

「ひ、それは……」

「条件があるのですか?」


 今までのことを考えると筋肉レベルが高くて直に見たいなと思えるか、だと思う。

 いつも私がいい筋肉見たいって思うと叶った。


「……私には適用されず、ヴィエレラシ騎士団長は適用される。騎士の中でも中堅以降の勤続年数が高い者達に現れましたね。ある程度鍛え上げられた筋肉を持っていないと破れないのですか?」

「ひっ」


 分析が早くて正確!

 自分の性癖が明るみになって辛い!


「できれば症状を直に拝見したいのですが」


 それはちょっと遠慮したい。ちなみに失礼だけど、目の前のハマライネンさんの筋肉レベルでは直に見たい欲求がわかない。


「私でもう一度やればいいか?」

「そ、そんな!」


 あんな良い筋肉目の前にしたらまた暴走しちゃう!

 さっきからなるたけ見ないようにしてたのに!


「団長は先程破けましたし確実ですね」


 ではどうぞみたいに言わないで!

 うぐぐと言葉をつまらせた私に団長が遠慮がちに聞いてきた。


「私では駄目か?」


 そんなわけない! 見たい! 欲を言えばまた触りたい!

 そんなこと、言えるわけもなかった。


「あ、う……」

「治療の為に必要なら私は構わない」


 そういうのよくないです団長!

 と叫びたかったけど今は筋肉見たさの欲求と戦うだけで精一杯だった。身体がざわざわする。

 と、助け船か扉が叩かれ、ビリビリに服を破くスキルを見ようとする二人の意識が私から離れた。


「マキネンです。ヴィエレラシ騎士団長はそちらにいますか?」

「ああ、マティアスか」


 団長が扉を開ける。

 そして私はうっかり見てしまった。

 団長と副団長を、胸元にうつるステータスを。


『全体バランス10! おめでとうございます!』

『全体バランス9! あと少しです!』


 うそおおおおお?!

 副団長ってば間違いなく団長に次ぐナンバーツー!

 あと少しでマックス!

 10と9が並んでる!

 壮観だわ! 奇跡! 奇跡が起きてる! 見たい!


「あ」


 パアアァン!!


「……成程」

「え?」


 はらはらと舞い落ちる布切れ。

 やってしまった。


「ふむ……クリス、どうだ?」

「あと二・三回確認したいです」


 やめてえええ!!

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

医者は無慈悲(笑)。団長オレンが非常に協力的なのは冒頭婚約申し込みお断りの会話からも匂わせてる通り、オレンのミナに対する好感度の高さのおかげです。筋肉を前にしたミナは結構気持ち悪いと思うけどね!(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ