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47話 茶会

「王妃殿下から茶葉を頂きましたの」

「まあ通りで香り豊かな」

「お、おうひでんか……」


 何を隠そう私は今、爵位の高いご令嬢たちとお茶を飲んでいる。ティータイム、茶会だ。


「仕事中とはいえ、時間をいただけて助かりました」

「いえ、そんな……」


 制服が一番上等な服なので丁度いいです、なんて言えない。

 王城敷地内、王族のご厚意で中庭に場所を借りてコルホネン公爵令嬢とライネ公爵令嬢と一緒にいる。きっかけはコルホネン公爵令嬢が事務室に現れオレンに直談判しただけだ。貴族たるもの仕事の最中であってもティータイムぐらい作れなくてどうする、というのがコルホネン公爵令嬢の主張で、オレンは軽く頷いてオッケーしてしまった。


「ヘイアストイン男爵令嬢には助けられました。この場を借りてお礼を申し上げます」


 オレンが了承したのはここだ。ライネ公爵令嬢に場所と時間を提供するためだろう。


「お気になさらず……その、大事なネックレスが無事でよかったです」

「ライネ公爵家は宝石に精通してらっしゃるから希少石もお持ちなのよ。ですが相手の身の上はやはりよく調べないといけませんね」

「ええ本当に。何故あんなに夢中だったのか今でも不思議ですわ」


 目が覚めたらしい。よかった。


「それでヘイアストイン男爵令嬢、ケットゥ侯爵が会いたがっていました」


 今度時間を作りサロンで顔合わせはいかがかしら? とさらっと言われた。なんで?


「会いたがってるってどういうことですか? 私、お会いしたこともない方だと思うんですけど」

「貴方の絵の買い手よ」

「ちょお?!」


 ライネ公爵令嬢いるじゃん! って思ったら彼女も知っていた。


「私は貴方がヴィエレラシ侯爵令息と画材を扱う店に入るのを見たことがあります。ヴィエレラシ侯爵家は芸術を主としてなく彼自身も絵を描きませんから、貴方が描いてることは察していました」

「さいで……」

「貴方が公に絵を公表しないからこそ、ケットゥ侯爵閣下はサロンで静かに顔を合わせたいと仰ったのです」

「……いやあ遠慮します」


 サロンに行きたくないので。


「閣下は貴方にさらなる絵をお求めです」


 報酬は弾むと言われて目が眩んだ。えらい金額が発せられたことだけは明記しておく。もう本当すごい世界だ。


「ですが、ヴィエレラシ侯爵令息が許さないのでは?」

「ええ。彼にも許可を得ないといけませんね」


 なんだかオレンが私のマネージャーみたくなってる。我が社のアイドルを起用する場合は事務所通して、みたいな。


「余程ヘイアストイン男爵令嬢を手離したくないのですね」

「ええ、彼女が絡むと中々手強いのです」


 肖像画完成してないし、オレン経由するにしても断ってほしいなあ。


「ヴィエレラシ侯爵令息は本気でヘイアストイン男爵令嬢を愛していますのね」


 飲みかけの紅茶を吹きかけた。危ない危ない。


「いやいやまさか」

「ライネ公爵令嬢の仰る通りですわ。あの日、私が止めなければ即貴方と詐欺師の間に入るつもりだったようです」


 本気とか詐欺師とか、そんな言葉使うんだ、なんて感心してしまった。そこじゃないんだけどね。


「いいえ。最初こそ認めたくなかったですが、貴方とヴィエレラシ侯爵令息との間には確かな信頼関係がありました。それが恋愛感情だと言われても納得できる空気もありました。貴方と彼の信頼は確かにあるのですわ」

「そ、そうですか」


 応援、してくれてるのかな?

 否定されないのが嬉しいっていうのはオレンに絵を褒めてもらって知った。

 雰囲気も声の色合いも嘘でないのがまた嬉しい。


「ですから貴方は彼の婚約者として堂々と隣に立っていればいいのです」

「あの……団長のお見合いの話、信じてないんですか?」


 魔法大国ネカルタスの特使が女性でオレンとの見合いがあるという噂だ。既に特使が男性だったから収束したけど未だネカルタスと婚姻での関係強化を望む声がある。

 オレンがいくら否定して私に見合いなんてないと真実を告げても周囲が許さない。


「たとえ見合いが本当の話だとしても、彼は貴方を選ぶでしょう。だから先程の通り、貴方は隣で堂々としていればいいのです」

「うへえ」

「それぐらいの善行は積んでいるのですから」


 滅茶苦茶応援された。


「ではケットゥ侯爵閣下の話はヴィエレラシ侯爵令息に伺うとして、私達の次の茶会はいつにしましょうか?」

「次、あるんですか?」

「当然でしょう」


 あれ、なんかコルホネン公爵令嬢ってばすごくデレてない?

 なんだかこそばゆくて嬉しい。



* * *



「ヘイアストインさん」

「はい」


 令嬢二人と別れ、騎士舎の雑務をしてから帰ろうとすると一人の騎士に声をかけられた。

 ペッタ・ヴィルタネン騎士だ。この時間は騎士の鍛練時間でないのに、ここにいるなんて珍しい。なにか物品不足してたかな。


「少し、時間いいですか?」

「はい。なにか足りない物がありましたか?」

「あ、いやそうではなく……」


 周囲を確認した後、息をついてからこちらを見た。


「ヘイアストインさん、自分と結婚してください!」

「え?」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

コルホネン公爵令嬢のデレがすごい(笑)。ツンデレ好きなんですよね~コルホネン公爵令嬢はセモツ戦あたりの帰ってこい張り合いがないってくだりぐらいのツンデレが一番好きです。ツンデレげへへ(´ρ`)それはさておき、ペッタくんが急すぎる(笑)。


明日からの平日は朝一回の更新です。次の土日も2回更新で、6/9完結です。

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