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41話 団長の見合い相手が来る

「そいや大陸から客が来るんだろ?」

「ああ、ネカルタス王国だっけか」


 末端の騎士たちにも話がいったらしい。けど内容まではきていなかった。


「魔法使いがくるのか~」

「なんでも身分の高い女がくるって。しかも美人らしいぜ」

「あの国は美人多いんだろ?」

「しかも団長の見合い相手が来るって」

「えー自分気になってたんすけど?」

「ペッタ、お前いくらなんでも手出しすぎだろ。女なら誰でもいいのか」

「てか団長、ミナちゃんと付き合ってるじゃん。なのに他の女と見合いすんのかよ」

「そういうのと縁ねえからよく分かんねえし」

「はー、モテる男うらやましー」


 全部聞こえてますよと思いつつ、すすすと柱の影に隠れる。

 キルカス王国は婚姻で国同士が繋がる形、ソレペナ王国と同じ道を歩むのかな?

 医療特使はあくまで建前。もっと強固なつながりを求めるってことか。


「ヨハンナさん、洗濯物終わりました」

「ああ。ミナちゃん、ありがとう」

「では私は事務仕事に」

「ミナちゃん!」

「はい」


 仕事に行こうとすると呼び止められた。嫌な予感、と思ったらやっぱりさっきと同じ話だ。


「ネカルタス王国から来るのが団長の見合い相手だって?」

「私もさっき騎士の方々が話してるのを聞いて知りました」

「なんだかねえ……」

「まあよくある話ですし」

「貴族や国の事情は分からないけど、団長はミナちゃんを裏切るような不誠実な男じゃないよ!」

「そうだよ! なんだかんだミナちゃんのことしか見えてない男だし大丈夫!」


 これが王命の場合、断れないけどね、と内心ごちる。二人が私に気を遣ってくれてることが分かるからだ。


「ありがとうございます」


 私とオレンが婚約しているという話をオレンが周知してたとしても、こうして身分の高い女性との話がきたら、当然私との婚約はなかったことにされる。そもそも彼が婚約していると言っても、軽い男女のお付き合い程度かと思う人の方が多い。


「ふう……」


 婚約を有耶無耶にしておいてよかった。

 これならスムーズに身を引ける。筋肉の誘惑は正直最高に幸せで辛かったけど、これで少しは落ち着くはずだ。

 私の血の検査と特効薬の開発で魔眼は解消、その頃に絵を描き終えていれば綺麗に別れられる。

 多少は傷つくけど立ち直れないほどじゃないはずだ。


「おはようございます」


 事務室内は緊張感に溢れていた。なんで?


「え?」

「ミナちゃん」

「あ、はい」


 そそそと静かに自席に座る。


「どうしたんですか?」

「どうしたもなにも、ほら見て」

「団長……」


 いつもはこんなに緊迫していないのに、妙なピリピリ感のある事務室の空気を作っているのはオレンだった。

 眉間に皺を寄せてひどく難しい顔をして書類にサインをしている。

 普通に仕事をこなしているのに、表情と醸し出す雰囲気は尋常じゃない。ラヤラ領に行った時やセモツ国との戦争中を超えている気がする。


「私達は外回りに行ってくるから留守番頼んだよ」

「え?」

「よろしくお願いします」

「え? 皆さん全員ですか?」

「団長のあれはミナちゃんにかかってる」

「ええ?」


 何故か頑張れと言って皆出て行ってしまった。

 残るのは私とオレンのみ。

 しばらく様子を見ながら書類仕事をこなす。

 あまりの緊張感に大して書類仕事は進まず、頃合いを見てお茶の提案をした。


「お茶、か」

「はい。新しい茶葉が入ったんですよ。あ、もちろん安全性のチェックは以前より厳しくみてもらってますので安心してください!」


 明るく提案すると、オレンは暫く考え、視線を左右に一度動かした後、遠慮がちに囁いた。


「……頼む」


 そこでやっと事務員が私だけになっていたことに気づいたのか、はっとした表情をして次に静かに休憩用のソファに移動した。


「ちょっとお茶の時間は早いですが、騎士舎への見回りがいつもより早い時間でスケジュールが組まれていたので」

「ああ、ありがとう」


 お茶を飲んで一息つく。

 少し疲れと焦りも見えた。


「お疲れですか?」

「いや……」

「もしかしてお見合いがあるから緊張してるんですか?」

「ブフッ」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

自ら地雷を踏みに行くタイプのヒロインです(笑)。身を引くことを考えつつも、傷つくことを考えつつも、真実を確かめに行くその姿勢…私にはドMにしか見えません。

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