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31話 ドシリアスな場面で服ビリビリ

 我が国キルカス王国は和解したばかりのソレペナ王国と協力し、紛争エリア東側に現れた海賊との戦いに身を投じることになった。

 海賊以外に仮面をつけた集団が現れ香料の元になった魔法薬をばらまき戦闘不能者を出している。私がいるラヤラの応急救護用で作ったテントには多くの体調不良者と怪我人が運び込まれた。

 すぐに魔法大国ネカルタスから魔道具の腕輪が届き、それをつけると何回か魔法薬を防げる。ここで戦線離脱者は減ったのは助かった。


「あれ?」


 私も念のためだと支給された魔道具をつけると壊れてしまった。三回目で諦める。

 もしかしたら魔眼が影響してるかもしれない。


「ヘイアストインさん、こちらをお願いできますか?」

「はい!」


 今私は軽傷者の手当てにまわっている。最初こそ慣れなかったけど、今ではすっかりこなせるようになった。

 後は少なくなった物資の補填といった細かい仕事をしている。


「ミナちゃんいてくれてよかったわ」

「そうですか?」

「ミナちゃんいると元気でるしなー」

「嬉しいです」


 筋肉の全体バランス8を越えていれば回復も速そう。というか、8以上の筋肉を生で見られるとか最高だわ。


「いい筋肉」

「ん? 俺のが?」

「あ、すみません! 戦争の場なのに」


 ぶはっと笑われた。手当て済みの他の騎士まで混じってくる。


「おれは?」


 こちらも全体レベル8とは。


「あ、なかなかです」


 しまった、応えてしまった。シリアスな場面でなんてことを!


「すみません……」

「別におれたち気にしねえし」

「ミナちゃにいると本当雰囲気よくなるなあ」

「こんぐらいがちょうどいいわ」

「そうそう。空気いいし、手当てしてもらって助かってるし」

「ま、団長が離さないわけだなー」


 オレンの名前がでてきた。離さないって?


「仕事も真面目で丁寧、いつも場を明るくしてくれるってんで」

「団長の女嫌いもミナちゃんのおかげで治ったようなもんだし」

「え?」


 オレンが女性嫌いなんて聞いたこともない。

 嫌いなら二人きりにもならないし、デートもしないし、触れたり抱きしめたりできないはずだ。


「お、団長帰ってきたな」


 海賊が一時的に引いたらしい。副団長に場を任せて怪我人の確認に来たみたいだけど、オレンも怪我をしている。


「団長」

「ヘイアストイン女史、残りの怪我人が三名だ。場所はあるか?」

「はい。団長もお怪我を?」

「私はいい。軽傷だし、止血はした」


 それよりもと自分の部下の心配をする。たぶん騎士団長としては正しい姿だ。けど、大事な人が怪我をしててなにもしないなんて私にはできない。


「手当します」

「ああ」

「団長の手当ですよ」

「いや私は、」

「三名の対応が終わったら団長の手当てするんで待ってて下さい!」

「え?」

「勝手にいなくならないでくださいね!」


 言うだけ言って怪我人の手当てに入った。軽傷者なので大事ないらしい。


「よし」


 終わってすぐオレンを探すと臨時で作られた団長専用の部屋で資料を読みふける姿があった。


「手当しにきました」

「ああ、頼む」


 シャツを脱ぐと左腕を切られていた。オレン言う通り切り口も浅い。手当は存外すぐに終わってしまった。


「ありがとう。怪我人の対応についてはクリスから聞いたよ」


 重傷者も多く出さずに済んだから団長としてもほっとしてるはずだ。


「ミナの早く丁寧な手当のおかげで回せたと言っていた」

「そんな」


 資料をテーブルに戻してシャツを着る。

 ああ、もったいないな。

 というか筋肉をこんな間近に見たのって初めてじゃない?

 絵を描く時は距離あるし、ダンスの練習は近すぎて肌で感じるだけだったし。

 きちんと見るという点では今の距離が最高だ。


「ミナ、自信をもっていい。君は自分が思っている以上の能力を持っている」

「あ、ありがとうございます」


 ああっ、上腕三頭筋がシャツに覆われてしまう!


「周囲の信頼も厚い。妬ける時もあるが、当然だと思う気持ちが上だな」

「は、はい」


 ああっ、僧帽筋が!


「絵だってそうだ。ミナが生み出すものには価値がある」


 大胸筋が隠れちゃううぅう!


「ミナ、」


 パアアァン!!


「……」

「あ……」

「……」

「す、すみません」


 こんな戦争というドシリアスな場面で私ときたら!


「……いや」

「替えの服、用意します」

「待て」

「え?」


 手首をとられ引き寄せられる。あっさりオレンの胸におさまってしまった。


「わ」

「今ここで抑えないといけないだろう」

「いや、大丈夫じゃないですかね?」

「最近なかったから油断していた。他の男のシャツを破かないよう対策しないと」


 シャツの間から漏れる大胸筋に埋もれる。

 はあああ幸せ。テンションあがる。エモい胸熱。胸厚なだけに。


「ひとしきり抱きしめて触れた後は少し描くか」

「そんな……戦ってる中で」

「一時小康状態だ。どちらにしても私はここで待機。書類も目を通したし、次に戦場に出るまで何かをしていないと落ち着かない」


 そう言われてしまうと弱い。

 こんな時でも描ければと一式用意していた自分を見透かされているようだ。


「す、少しだけなら」

「ああ。その前に」

「?」

「もう少し抱きしめよう」

「もう! 大丈夫! かと!」

「触れる時間が長いと破くまでの時間が稼げるかもしれないな」


 折角だから検証してみるかと笑う。からかってるわね。シリアスに張り詰めすぎてたから助かったけど納得はいかない。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

戦争中だろ、と至極真面目なツッコミをいれるような話ではないのです。そういうジャンルなのです。布に覆われると見えなくなる美しい筋肉を見たいと思うのはミナにとって通常運行。

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