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28話 特殊ケース筋肉が魅力的で理性が飛んでる

「下半身を鍛えて下さい。上半身ばかりだと殴る時に腕に足が持ってかれるし足元も掬いやすい」

「ありがとうございます!」


 無事キルカス王国王都に帰還した。

 賊は全て殲滅されソレペナ王国の軍勢が回収、今後は二国間友好関係を築いていく形で纏まる。

 そしてループト公爵令嬢が騎士団鍛練場に訪問し、騎士組手の指導をするので見に来た。筋肉の動きを見るために!


「ふわあああ美しいいい!」


 近くで見られる分、筋肉の動きがよく見えた。成程、身体強化魔法は内包筋肉を表側の力に変えるためのツール。魔法を使ってる間が見た目は違えどゴリマッチョ状態というわけね。


「すごすぎます!!」

「ヘイアストイン女史、抑えて」


 ループト公爵令嬢の護衛騎士、リーデンスカップ伯爵令息がいるのに取り乱してしまった。けど彼は「ディーナ様はすごいでしょう」と笑っている。


「ループト公爵令嬢は魔法に頼りきりでなく、御自身の戦い方に最適な筋肉の使い方をしています!」


 さすが拳で戦うを主体にしてる方だ。変換される内包筋肉の力を上手に使っている。


「ディーナ様は鍛練を欠かさないので」


 令嬢で鍛練をするなんて聞いたことないけど彼女なら納得だ。

 リーデンスカップ伯爵令息は心底嬉しそうにループト公爵令嬢のことを語る。

 王都に帰還した時も徹夜した彼にループト公爵令嬢が寝るよう言っても護衛をすると主張して首を縦に振らなかった。見かねたループト公爵令嬢が自分が寝るから同じ時間寝るようにと言ってやっと睡眠をとったぐらい。それほど一緒にいたいなんて情熱的だ。


「リーデンスカップ伯爵令息とループト公爵令嬢は恋人同士ですか?」

「ヘイアストイン女史」

「あ、すみません、つい……」


 言葉に出てしまっていた。特殊ケース筋肉が魅力的で理性が飛んでる。

 けどリーデンスカップ伯爵令息は笑顔で応えた。優しい。


「先日婚約しました」


 そしたらループト公爵令嬢の筋肉に触るのは御法度かな。あわよくば腕ぐらいと思っていたけど、お相手がいるんじゃ無理そうだ。


「自分は嫉妬深いので同性でもディーナ様に触れてほしくありません」

「はっ! 私、声に?」

「はい」


 オレンが苦い顔をして視線を明後日の方へ向けていた。

 色々すみません。


「ヘイアストイン女史、リーデンスカップ伯爵令息は懇意にしているからこそ許してもらえているが、他国の特使の方の身体を触るのは良くない」

「そうですよね……」

「ディーナ様はご遠慮頂きたいですが、自分であれば構いません」

「えっ!?」


 いいの?! 特殊ケースの内包筋肉所持者ただし通常全体バランス8の筋肉に?!


「ヘイアストイン女史」

「すみません!」


 冗談を本気にしてた! オレンの声で我に返れた……危ない危ない。


「ディーナ様、終わりましたか」

「うん、お待たせ」


 指導を終えたループト公爵令嬢が戻ってきた。

 嬉しそうに迎えるリーデンスカップ伯爵令息と少し緊張した様子のループト公爵令嬢に頬が緩む。初々しい付き合いたてのカップルって感じだ。


「ループト公爵令嬢、騎士達の指導までして頂きありがとうございます」

「いえいえ、楽しかったです」

『内包筋肉が100を超えています』


 近くで見ても最高すぎる。


「ループト公爵令嬢、相変わらずいい筋肉ですね!」

「ふふ、ありがとう」


 と、二人が揃ったところで思い出した。内包筋肉持ちの特殊ケースについて少し調べたから報告しないといけない。


「お二人の筋肉についてです!」

「?」

「ヘイアストイン女史、唐突すぎる。丁寧に説明を」

「あ、そうですね」


 特殊ケースというからには事情があるはずとできる限りで調べ、一つの本に辿り着いた。

 魔物の血を引いていれば出現率は上がるという内容で、古い伝承では救世主と呼ばれる人物のスーパーマンな強さが描かれていた。まさにループト公爵令嬢そのものだ。その救世主は魔物の血を引いていた。


「そういうこと」

「ディーナ様、心当たりが?」


 ループト公爵家は龍に関わりがある家門らしい。もしかしたら龍の血を引いているとか。

 ルーツがどうあれ美しい筋肉があればそれでいい。その筋肉を大事にしてと思うばかりだ。

 と、オレンが本題に入った。香料の件だ。


「出所が掴めませんでした。ヘイアストイン女史は侍女から譲り受けたらしいのですが、その侍女も侍従から、侍従もまた他の侍女からと人を介していて最初の人間に辿り着けなかったのです」


 キルカス王国では限界がある。他国に頼らざるを得ない。

 ループト公爵令嬢は香料を受け取って、ドゥエツ王国内に在中する魔法使いに分析をお願いしてくれるというとこで話が落ち着いた。


「よく見分けがつきましたね」

「ヘイアストイン女史のおかげです」


 オレンは薬の解明で私の魔眼解消の話を持ち出してくれた。早急に対応することを約束してくれるループト公爵令嬢に思わず「私はこのままでもいいんですけど」と声を漏らしてしまった。

 今後何が起こるか分からないし、悪化して取り返しのつかないことになる可能性もある。けど、以前の表彰式の時みたく未然に防ぐことができるなら魔眼はこのままでもいいのではと思った。


「体調不良者がたくさんいるんです! 次またあるかもしれないから私、この力で少しでも止めたいんです」


 同時、オレンとの時間も失いたくないと思った。いつか魔眼は治るとネカルタス王国の王女に言われたことを思い出す。早く治す方がいいと分かっていた。周囲のため国のためと言いながら私利私欲に走っている。だめだと分かっているのに。

 ループト公爵令嬢は香料の真意を理解していたのか、真相に迫るために魔法大国ネカルタスへ行くと笑う。

 これにはさすがに私もオレンも驚いた。ネカルタスは他国の人間の入国を許さない。ループト公爵令嬢は入国許可証を持っているから行けるらしいけど、それ自体が稀だ。


「では私たちは」


 すぐに魔法大国ネカルタスに行くと言うループト公爵令嬢にオレンが頭を下げた。


「何もおもてなしできず申し訳ない」

「いいえ、こちらでは実りがありましたし、御二人には助けられました。きっとまたすぐにお会いすることになりますよ」


 特殊ケース筋肉に会えるなら喜んで!


「嬉しいです! 御二人の結婚式には是非参列させてください!」


 いけない。つい軽い調子で話してしまった。首を傾げるループト公爵令嬢にフォローの言葉を探す。


「ループト公爵令嬢とリーデンスカップ伯爵令息は婚約されているんでしょう?」

「ヴォルム話したの?」


 おっと聞いてはいけないことだった? フォロー、フォローをさらに!


「護衛と令嬢の恋は王道です!」


 だめなフォローな気がしたけど、ループト公爵令嬢が笑ってくれたのでよしとした。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

前作の話をミナ視点にしてるだけなので、ぎゅぎゅっと詰め込みました。文字数が他より多めなのはそのためです。でも今作で必要な話もであるんですよ。

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