26話 特殊ケース筋肉
「ひっ、なにあれ?!」
ドゥエツ王国外交特使ディーナ・フォーレスネ・ループト公爵令嬢のステータスを見た時の感動を伝えたい。
当然私はかなり遠くから騎士の皆さんと一緒に見た。オレン含めキルカス王国のお偉い様方が対応する女性はゴリマッチョの気配なく、どこにでもいる細身の令嬢だ。自信に満ちた佇まいと明るい雰囲気を持っている。只者ではないことは分かった。
そして遠すぎたためかステータスは出てこない。顔も見えないぐらいだから仕方ないか……残念。後でお近くでステータス見られることを祈ろう。
「ヘイアストイン女史」
「団長」
ループト公爵令嬢は両陛下との会談に入った。オレンがこちらに戻って来て神妙な顔つきで南端ラヤラ領の件を持ち出す。
「ラヤラに来ていたソッケ王国の令嬢が姿を消したと王陛下宛に書状がきたそうだ」
「え?」
「件の令嬢の姉君をドゥエツ王国が保護しているのもあり、ループト公爵令嬢からラヤラの件を聞かれる可能性が高い」
「わかりました。ラヤラの資料、全て用意します」
「ありがとう、助かる」
ラヤラに絡んでいる目撃多数の令嬢の姉がソッケ王国から国外追放されてドゥエツ王国にいるのは割と有名な話だ。ソッケ王国王子の婚約者だった姉令嬢は王子に婚約破棄された挙げ句国外追放、王子妃候補の後釜は婚約破棄された令嬢の妹というセンセーショナルな内容だった。
「それと気になるんだが」
「はい」
「私が送った書状がループト公爵令嬢に届いてないようだった」
香料の件でループト公爵令嬢に助けを求めていたけど彼女は知らない様子だと言う。オレンが仲良くしているループト公爵令嬢の護衛騎士に「もしかしたら情報操作をされているかもしれない」と言われたそうだ。ループト公爵令嬢は両陛下との会談もあり、この話はそのまま流れた。ループト公爵令嬢は気にしていたけど、オレンがその場で名宛違いだったとフォローして終わったようだ。
「ループト公爵令嬢がラヤラの件を知りたいと言ったら先にそちらを受け、その後に時間をもらい香料の件を相談しよう」
「はい」
今回は騎士団長として持っている部屋に案内するという。事務室から近くて助かった。
「団長、こちらで全てです」
「ありがとう」
書類を山ほど抱えて部屋に入ると見知らぬ女性がソファにかけていた。ばちりと目があう。
『特殊ケースです。内包筋肉が規定値を超えています』
なななんと! 待ってどういうこと?! 特殊ケース?!
内側にある見えない筋肉がマックス10を超えているらしい。
それどころか内側の筋肉の在り方も通常とは違うとか!
なによ、それ。詳しく教えてほしい! もっと説明文交えて出てきてほしい!
なんとかして数値を確認したい!
強く念じたらステータス画面が妥協してくれた。ピロンと音を立てて追加の文章が出てくる。
『内包筋肉は全て100を超えています』
「ひっ!」
『内包筋肉が100を超えていることで、全体バランス10を超える力を発揮できます』
「す、素晴らしいですううう」
なにこのステータス! すごすぎない?
内側にしかない筋肉は表で活躍する筋肉に大きく影響を及ぼさないと思っていたけど、さすが特殊ケース。強さとして表側の筋肉に反映するらしい。当然内側が100以上あれば、表に出てくるものもマックスを超える……そんな筋肉がこの世に存在するなんて……この時代この場所に生まれてきてよかった。
目が合った女性は笑顔で私を見上げる。見た目はどこにでもいる令嬢の細さだ。
『特殊ケースの為、内包筋肉の部位を示します』
なんと内包筋肉が分かりやすく光った。
なによこれ、内側から輝く筋肉が見える。あれ私もしかして破かなくても筋肉見えるようになったの? 魔眼のレベルがあがった?
にしてもすごすぎない?!
光る内包筋肉を見れば一つ一つ説明がついてくる。柔らかさ、しなやかさ、弾力、形状の良さを兼ね備えててもはや芸術でしかない。
「ああ、なんて美しい筋肉っ!」
たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。
前作を読んでいなくてもなるたけそのまま読めるようにしていますが、前作を読んでいるとなお面白いかと思います。前作22~27話ぐらいまでですかね。