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22話 パーティーに現れた毒薬

「これより授与式を始める」


 こんな上等なドレスを着ていると逆にそわそわして落ち着かない。

 当然今回の主役は騎士団、その長であるオレンが代表して表彰される。

 南端ラヤラの件はそれほど重要な内容だった。服が破れるからという理由で行くような場所じゃない。

 私とオレンの間でしか分からない話で、誰にも遠征同行の真実が知られてなくてよかった。


「オレン・アイナ・ヴィエレラシ騎士団長」

「はい」


 代表のオレンが王陛下から表彰されると、盛大な拍手が響き渡る。

 そして表彰式から歓談・パーティーになったところでオレンは囲まれた。

 ただでさえ結婚相手にと令嬢を紹介されるくらいなのだから、当たり障りのない挨拶だってそれなりの人数がいるだろう。

 騎士の仕事優先で社交界に出ない分、こういう場は貴重だろうし、周囲がこぞってオレンを求めるのは仕方ない。


「ヘイアストイン男爵令嬢」


 声をかけられるのは分かっていた。

 彼に伴い二人で会場に入った時、ざわついたのがその証拠だ。今までパートナーを連れ立ってなく、女性との噂話すらなかったからだろう。

 しかも明らかにオレンの侯爵家側で用意したドレスだ。いつの間にそんな関係になったのかと思う令嬢も多いはずだ。


「コルホネン公爵令嬢」


 上から下までじっくり見られる。オレンから送られた衣装だから問題はない。馬子にも衣装なのは受け入れる。

 私だって着られている感は否めないと思うし、そもそもこんな高価な衣装を着る未来なんて考えてなかった。


「貴方、今回のラヤラ領遠征に参加していたらしいわね」

「はい」


 やっぱり話は広まってる。ラヤラ領遠征参加はこの際置いといて、オレンが望む婚約者云々の話が広まってるかどうかが鍵だ。


「貴方のような事務員が行って騎士様方のお役に立てたのかしら?」

「公開されている情報通り、ネカルタス王国の王女殿下がいらしたのでその介抱をしました」

「身分も低く爵位のある令嬢としての振る舞いに欠ける貴方が王女殿下のお相手など出来るはずもないでしょう」


 まあ王女様、全部知ってた上での対応だったから見たところ精神的なダメージも負ってなさそうだった。侍女さんとの信頼も厚く仲間たちと乗りきってた感じ。え、私不要だった的な? お相手以前のも問題だった。


「これみよがしにヴィエレラシ騎士団長に色目まで使って取り入ろうなど些かやりすぎとは思いませんの?」

「色目使ってないんですけどね」


 魔眼はある種色目かもしれないけどね! と、周囲を歩いている給仕係にお酒を勧められた。コルホネン令嬢と共にグラスを持つと私たちが仲良くしてるみたい。


「表彰される栄誉の場で、貴族としての振る舞いに乏しい貴方がヴィエレラシ騎士団長と同じ舞台に立つなんて畏れ多いことです。そうではなくて?」


 お酒飲んで適当に受け流そう。

 もらったグラスを寄せると甘い香りが広がった。

 どこか既視感がある。

 嫌な予感が背筋を通った。


「会場にいることも不相応でしょう。たとえヴィエレラシ騎士団長から気遣いでお相手の打診があったとしても辞退されるべきだったのでは?」

「え、これって……」


 お酒を口につけるとビリビリと舌に痛みが走った。よく見ると、白ワインの中にうっすら赤い色がもやのように渦巻いているのが見えた。ラヤラの壁と同じだ。


「聞いているのかしら?」

「いえ……」

「これだから貴方は」


 息を一つ吐いて、コルホネン公爵令嬢がグラスを唇に寄せる。


「コルホネン令嬢、飲まないで下さい!」

「え?」


 急な私の言葉に眉を顰めた。そのまま気にせず飲もうとするのを止めようと手を伸ばす。グラスには届かなかった。


「飲んだらだめなんです!」

「貴方、何を言っているの?」

「危険なものの可能性があります!」

「だとしても手で止めるなど粗暴な行為です。止める時はもっと気品のある佇まいで行わないと」

「今それどころじゃないです! グラスを渡してください」

「まあ……上等すぎて貴方の口に合わなかったのではなくて?」


 まったく、と呆れ気味に私を一瞥し、構わずお酒を一気に煽ろうとした時だった。


「やめたほうがいい」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

本日のパワーワード「魔眼はある種、色目」。いやもう服破いてる時点でラッキースケベだし色目ですよね(笑)。そういうおっさんじみた要素が大好きです(笑顔)。

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