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19話 ミナちゃんが一晩オレンと過ごしたから

「ミナ」


 ああ、筋肉ってやっぱりいい。

 盛り上がる筋肉、力強さとしなやかさを見せてくれる。

 弾力もいい。ただの脂肪よりも筋肉の厚みって重要なのよ。

 きちんと鍛えた筋肉には厚みという深みが加わってくる。ここ重要。


「ミナ、起きて」

「はっ?!」


 良質な筋肉に囲まれ幸せいっぱいこの世にありがとうな夢を見ていたら起こされた。

 というか、寝てたの私?


「あれ……私?」

「二時間ほど寝てただけだ」


 そこそこ寝てた。徹夜は難しい。でもこの様子だとオレンは寝てないのだろう。なんともなさそうな顔をしているのに。


「顔を洗ってきなさい。朝食を食べたら出る」

「はい」


 急いで部屋を出て自室で身なりを整え顔を洗い食堂に行くと既にオレンは朝食を食べ終えていて、いくらか騎士から質問を受けているようだった。そして私が来たら視線が私に注がれる。

 なんで?


「ミナちゃんが一晩オレンと過ごしたからだよ」

「副団長!」


 お察しとばかりに背後から副団長の声がかかった。

 というか、やっぱり徹夜は周知の事実!


「仕事?」

「そうです」


 でも男女が一晩同室だと皆気になっちゃうみたい、と副団長。だから周囲の騎士のちらちらくる視線も興味津々なわけね。


「団長……」


 絵を描く話は言い訳に使えるけどあまり知られたくない。オレンを見るとこちらに目線だけ寄越して瞬きを一つした。

 任せろと言っている気がした。


「私は彼女と婚約している」


 なんで?!

 あ、ほら、わっとしちゃったじゃない。

 オレンへヤジが飛んだり、ピューピュー囃し立てたりして盛り上がる。


「婚約、ねえ」


 副団長はにやにやしながら一つ頷いた。他人事だと思って楽しんでる顔だ。


「仕事には影響を及ぼさないことを約束するが、自由な時間に彼女といることは理解してほしい」


 まあそういうことならと騎士たちが頷く。オレンが普段真面目に仕事をしてる分、信頼されているから許されるわけね。

 いやでも待って。

 婚約というか、責任とって結婚する、はお断りしてるのに!


「だんちょ」

「では急ごう。朝食をとってないものはすぐにとり、朝食を終えてるものは出立の準備に入るように」

「はい!」


 いい返事の騎士たちをよそに私は有無を言わさず席につかされご飯になってしまった。

 責任を取る云々はいいって言ったのに。


* * *


「ラヤラ領に入ったはいいですけど、メネテッタバ辺境伯はいらっしゃらないんですね」

「大方証拠隠滅をしているか、逃亡準備に入っているかだろう」

「ああ、だから第三部隊を辺境伯の元へ行かせたんですね」

「追跡が得意の第七部隊も裏で動いている」


 周到だ。

 ここまでありとあらゆる情報を集め対策をとっていたから当然なのかもしれない。ますます私と絵描きの時間を設けてくれることが不思議だ。気が引けるというのもある。


「着いたぞ。あれが違法建築物か」

「……え?」


 確かに平民の家にしては豪奢で貴族の家にしては小さすぎる。

 けど驚いたのはそこじゃない。


「なにあれ?」

「ヘイアストイン女史?」


 余程動揺が顔に出ていたのか、オレンが不思議そうにこちらを見ている。

 周囲の様子からも、これが私にしか見えないということがはっきり分かった。


「壁に魔法陣が、刻まれています」


 途端、オレンの顔つきが険しくなった。同じように外壁を凝視する。

 赤く光る円と読めない文字が刻まれ特殊な模様で構成されたある種の記号は本で僅かに見たことがある魔法陣だった。


「……何も見えないが」

「やっぱり」


 この眼だ。

 ただ筋肉ステータスを見るだけじゃなかったってこと?


「ヘイアストイン女史、何が仕掛けられているか分かるか?」

「分かりません。申し訳ありませんが……読める文字は"魔法"と"使用不可"ぐらいしか」

「……十分だな」

「え?」


 トラップの類ではないとオレンは言う。

 監禁されているのが魔法大国ネカルタスの王女だとしたら、その王女は生粋の魔法使いだ。

 魔法で逃げられないよう拘束するための魔法陣である可能性が高い。


「なるほど!」

「だが慎重に進むとしよう」


 けどその必要はなかった。

 扉を開けたら騎士と思しき若い男性と侍女と思しき若い女性が並んで待っていた。

 曰く、王女が予知していたので私たちが来ることは知っていたと言う。二階に案内されると小さいながら綺麗に整えられた二部屋続きの奥、寝室で王女が落ち着いた様子で座っていた。


「ヘイアストイン女史、王女殿下と侍女の方を頼みたい」

「はい」


 オレンは王女の護衛騎士という男性から話を聞き、私は二人の女性のケアにまわった。

 まずは建物から脱出、用意していたキルカス最高峰の馬車に女性二人を乗せて周囲は騎士で囲む。

 女性三人、極力話しやすい雰囲気を出しながら事情聴取を行った。

 驚くほど落ち着いた二人は攫われるところから詳細に話をしてくれる。


「……ではやはり海賊が」

「ええ。でも貴方方が助けてくれる未来が見えたから待っていたわ。その未来が最善だったから」

「は、はあ」


 さすが魔法大国ネカルタスの王族。予知の類を標準装備しているのね。


「にしても貴方、面白い眼を持っているわね」

「え?」


 まさか、バレてるの?

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

王女の侍女もいくらか先のヒロインで連載予定となってます(笑)。魔眼バレの後半戦よりも前半の2時間ミナが寝ている間オレンは眺めていたのかどうなのかってとこの方が気になります。

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