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18話 一晩を共にする誘い

 南端ラヤラへ遠征日当日。


「ヨハンナさん、アンナさん。すみません、よろしくお願いします」

「大丈夫だよ、気にしないで」


 事務仕事もだけど騎士団の雑務を二人に一時的にお願いしないといけない。

 ギリギリまでストックできるものはしたけど負担を考えると心配だった。


「ラヤラ遠征に駆り出されるから騎士の人数減るしね」

「そうそう。それに帰って来てから三人で頑張ればいいじゃない」

「ありがとうございます!」

「でもミナちゃん、気を付けるんだよ」

「え?」


 こういった遠征に女性が混じると魔が差した男性からちょっかいをかけられるらしい。


「特にペッタくんは危険ね」

「そうねえ、あの子片っ端から女性に声かけてるんでしょ?」

「毎日連れてる女性が違うとか」


 指をさして教えてくれるのはいいけど本人にバレてないよね?

 私も確認したけど、以前シャツを希望した全体バランス平均値の騎士だった。確かにあの時女性とお茶するって言ってたから噂通りの人なんだろうな。女泣かせな人ね。


「気を付けます」

「ミナちゃんには団長がついているから大丈夫だろうけどね!」

「そうね! これを機に距離ガツンと縮めておいで!」

「あはは」


 仕事なんですけど、とも言えず、私は二人に改めて感謝を伝えてオレンの元へ戻った。


「すみません」

「いや、大丈夫だ。仕事の連絡はもういいのか?」

「はい」


 私は馬に乗ることが許された。

 こんな時乗馬ができてよかったと思う。ここで働くようになってから事務員といえど遠出もあるという理由で乗馬を学んだ。馬車を使ってもいいそうなのだけど、王都内なら馬の方が早い。

 滅多に馬で移動はなかったけど、公費で研修しててくれて本当よかった。


「途中ヴァラスユキュで一泊します。現在の移動距離・時間共に予定通りです」

「メネテッタバ辺境伯から返事は?」

「騎士団の視察に対し、難色を示しました。違法建築物は領民が勝手に建てた為、即時取り壊すとのことです」

「現場は?」

「取り壊す素振りもありません」


 その方がありがたい。現場を抑えるのが一番だ。


「難色を示しつつも迎え入れる準備はするとのことなので領地には入れるかと思います」

「抵抗すれば強行突破する」


 王命で権限がある騎士団さながらだ。


「ヴァラスユキュに到着しました」


 キルカスは国内に遠征用騎士舎をいくつも持っている。

 普段は民間用の宿屋だけど、こういう時は騎士が優先順位が高く確実に宿泊できる。

 明日の出発時間までは自由となった。大概は食事と軽い鍛練で終わる。


「ラヤラの書類確認が先の方がよくないですか?」

「内容は頭に入ってるし、最新情報も先程確認した。明日の為にも今解消しておくのがいいだろう」


 ということで、団長にあてがわれたいい部屋で半裸の団長を目の前にスケッチタイムだ。

 最高の筋肉! 素敵!


「私の筋肉はどうだ?」

「はあいいい仕上がってますっ!」


 はっとして我に返るも、オレンは嬉しそうだ。ことあるごとに筋肉の感想を求められる。本音で話せば話すだけ喜ばれるからか最近筋肉を語る口が軽くなった。


「ミナの服が破れる力はれべるがあがっているのか?」

「少しあがって8ですね」


 団長のシャツだけ破くようになった。無差別に騎士たちの服を破いてた時ほど急激なレベルアップはない。


「一緒に来たはいいが周囲が騎士だと大変ではないか?」

「団長の近くだと平気です」


 誘惑は多いけどね!

 それなりの精鋭騎士と経験を積ませるための新人たちとでバランスよく配置されている。団長以外に視線を寄越すと全体バランス8がちらほらいる。たまらなく見たくなるけど、予備の服には限りがあるから気を付けないといけない。


「今日はもう少し対策を強化するか?」

「強化?」


 誘惑多い分、私の筋肉欲を満たしておかないとラヤラ領に入った途端事件が起きる可能性もある。

 さすがオレン、考えが深い。


「明日の朝まで私の筋肉を描くか?」


 まさかの徹夜!


「いえ、それは」


 私の指、腱鞘炎になる。


「なら、眺めるだけでもどうだろう?」


 それはそれでいいかも……じゃない!


「だんちょ」

「名前」

「ぐっ……オレンさん、明日早いんです! 徹夜は身体によくないです!」

「私は構わない。ミナと一緒にいられるなら嬉しい」


 ひいいい破壊力! そんな口説き文句言われたらいくらでも一緒に徹夜するでしょ!

 いくら仕事でという建前で騎士団長専用の部屋に来てるとはいえ、一晩一緒にいたってなったら問題になるんじゃない?! 気づかれないわけないし!


「ミナと一緒なら徹夜でも明日やる気になるな」

「わ、私となら?!」

「ああ。私の為にも付き合ってくれないか?」

「オレンさんの、ため」

「モチベーション維持だ」

「あう……」


 どうする?!


「折角だから足の筋肉を描くか?」

「乗ったああああ!!」


 あっさり徹夜することになった。


「あああああこれが大腿四頭筋んんんん!」

「満足か?」

「はいいいい素晴らしいですううう!!」


 筋肉を目の前に幸せしかない。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

ツッコミがほしいですねえ(笑)。遠征といえど戦争手前、このドシリアスをことごとく打ち破ってくれます。

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