むかしむかし、いまはいま
やぁやぁやぁ子供たちよ。よく来たよく来た。そうそうほら、集まれ集まれぇ。
お菓子あるぞぉ。ん? いらないか、そーかそーか。はいはい、お話を聞きたいんだな? よしよしいいともいいとも。とっておきの話があるんだ。いいか? えー、むかしむかしのこと。えーっと、えー、沼太郎いう少年がおったそうな。えー、沼太郎はなぁ、えー、え? 早く? 急かすな急かすな。まったく最近の若い子はせっかちだというのは本当だなぁ。タイパだったかな? そういう言葉があるのを教えて貰ったんだ。わしはタイ焼きパフェが食べたいのかと思って、買いに行こうかと思ったわ。
ん? はいはい、話な。えー、だから沼太郎は旅に出ました。そして夜……ある山に入ったのだ……。そこでは恐ろしい鬼たちが宴をしていた!
どうだ? 面白くなってき、もう飽きたのか? そんなことよりもって、わかったわかった。まあ聞きなさい。まったく、ここからが大事な話なんだ。
で、だ。鬼どもの宴。奴らにお酌をしているのは何とも美人で可愛らしいお姫さまだったのだ!
沼太郎はフラフラと引き寄せられるように宴に加わった。しかし、鬼どもは沼太郎を嘲笑った。沼太郎は服もボロくて、顔はまあ悪くはないが、ええとそう、老け顔だったのだ。沼太郎は傷ついた。オドオドし、恥ずかしくって帰りたくなった。……が! しかし! 姫はそんな沼太郎に優しくしてくれたのだ! 沼太郎はすっかり、姫に惚れてしまった。何日経とうとも姫のことが頭から離れなくてなぁ……。
それでどうしたか? 沼太郎はじいさん、ばあさんから貰った旅の資金を使い、己を着飾り、またある夜再び鬼の宴に行ったのだ!
それで、エミカ姫にふふふ、え? なんだ? 結論を早く? はぁ、まったく風情がないなぁ。まあいいだろう。しかしなふふふ。話の結末を話してやりたいのは山々だが、この話はまだ途中なんだ。
そう、お前たちは沼太郎にどうなって欲しい? ん? 幸せになって欲しいよなぁ! だが暴力で鬼どもをねじ伏せるなんて今の時代、野蛮だ。正々堂々と資金力で勝負するんだ。そのためにこの家と土地を抵当に入れエミカ姫ちゃんに、ん? キャバ嬢? いいや、あの子は姫様、ああ、うるさいな。確かにキャバクラだよ。キャバクラ山だな。うん。
でな、これがまた良い子でなぁ。ふふふふふ、わしの力でお店のナンバーワンになったら、わしと結婚をと約束をな。だからな、それまでわしと、いや、結婚後もわしとエミカ姫ちゃん二人とお前たちの家で同居をな。来週辺りに引っ越すから。は? 財産? だからそれはもうな、エミカ姫ちゃんに、え? ふぅー……なあ、鬼を倒した桃太郎はその財宝をどうした? 分け与えたよな? そう、金だの遺産だのそんなのを言っていては駄目だ。愛だよ愛。大事なのは愛……ひっ、鬼がおる……