世代の勇者「ヒューラとカイの記憶」
本編「世代の勇者」に登場するキャラクターの過去編です。
「シネシネシネシネ死ね…死ね。死ね!」
初めて人を殺した時…俺はまだ9歳だった。性別すら判断出来ない死体のそばで妹は泣いていた。
俺が殺したのは実の父親だった。
〜〜〜ヒューラとカイの記憶〜〜〜
/???村/
母親は俺が2歳の時に妹を産んで死んだ。顔も…名前も…声も…覚えておらず、優しかった事だけは覚えてる。
父親は9歳の時に死んだ。俺が殺した。仕方なかった。優しかった父は母が死んだ事で性格が変わった。毎日朝から晩まで俺に暴力を振るい、いつか殺されると思ってた。正直…死にたいと思ってた…でも…
「にぃに?だいじょーぶ?」
栗色の髪を靡かせ、涙を浮かべながら手を握って来る妹を俺は残して死ねなかった。
幸い、妹は母親似で父親から手は出されなかった。
「大丈夫だよ…ヒューラ。にぃには大丈夫だ…」
ヒューラは俺の生きがいだった。
ヒューラには普通に…生きて欲しかった。
俺が8歳になり、秋になったある日村に商人が訪れた。どうやらこの薄暗い村には特殊なキノコが生えており、そのキノコが人体の蘇生を及ぼすらしい。俺はそのキノコが生えている場所を知っていたのだが、そのキノコは夏にしか生えない事も知っていた。
「何で知ってるんだ?」
母親が教えてくれたんだ。
「そうか…そうだったな。」
どうやらそのキノコを商人に渡した最初の1人には、その後の人生が守られるほどの大金が貰えるらしい。
「それで?どうしたんだ?」
必死に隠したよ。情報を…
俺は隠した。情報を…
最初は必死にキノコを探していた住民もいつしか探さなくなった。
「夏にしか生えないんだろ?」
そうだよ
「何で探してんだ?馬鹿なのか?」
仕方ないだろ。情報を持ってないんだから
「で?大金手に入れたらどうするんだ?」
決まってるだろ?
「?」
ヒューラには幸せに生きて欲しい。俺の願いはそれだけだった。
一年が経ち、キノコが生える夏が訪れた。そして…その日が父親の最後の日だった。
朝早く俺は家を出て村を出る。キノコが生えている場所は、何回も行ったから覚えている。
昼頃には緑に輝くキノコを見つけた。
ここから先は…よく覚えてる。
帰ろうとしたんだ…ヒューラの元に…
天気はいつだって気まぐれで俺達の味方をしてくれない。
その日に限って雨と…風が強い日だった。
「ヒューラ!待ってろよ。兄ちゃんが絶対。お前を…」
その時だった。体が吹き飛ばされそうな程の突風が吹き、降り続ける雨が針の様に痛くなる。雨の音に紛れて聞こえたのは。
ヒューラの声だった。
「ヒューラ?」
なんで?俺は今村の外で…雨だって降ってる。外にヒューラが居るわけない。逃げて来たのか?親父から…でも…手は出さなかったのに…
!!!!!!!!
聞こえた…完全にヒューラの声だ。助けを呼んでた。にぃにって。俺を呼んでた。
「そんなに走ってどうしたよ?」
ヒューラが殴られてるかもしれない!
「そんなの。いつもの事だろ?お前の方が。いつも殴られてる」
関係ない!!
ヒューラは…ヒューラだけは!!
森を抜けると扉の開いた小屋があった。
直感で分かった。ヒューラはここに居ると。
「ヒューラ!!」
そこには…
「何を見たんだ?」
思い出したくない
「そうか…だったら教えてやるよ」
やめろ
「俺が目に写したのは、息を荒げる父親と!」
ヤメロ!!!!!
「血塗れのヒューラだ」
?!?!?!?!や?!ヤメ
「やめねぇよ!!もっと早く殺すべきだったんだ!!俺が!アイツを!」
…
「殺す!」
ころ…
「殺す!」
そうだ…
……………
/王国/
「ねぇ!お兄ちゃん!私猫を見てみたい!」
「…」
「お兄ちゃん?」
「…ぁ」
「?」
「ごめん…思い出してたんだ…」
「まーた泣いてる。おにぃ…大丈夫?」
「ああ。お兄ちゃんは大丈夫だ!」
「よかった!」
カイ(18歳)
ヒューラ(16歳)
死んだはずだったヒューラはカイの持っていた緑のキノコで一命を取り戻す。
本編「世代の勇者」にて、二人はかなり関わります。
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