爺さんの正体は…… 偉い人?
「マチロ…… いいのか?」
「はい…… ごしゅじんさま、ハイエナ連中から街を守ります」
逃げた金豚連中は5機…… 残るハイエナ連中の機械騎兵は7機だが、街の格納庫から新たな機械騎兵が数機が現れる。
「無理はするな。傭兵ギルドの傭兵達も出撃して来た様だし…… 足止めするだけでいい」
「はい」
新たに現れた機体には、傭兵ギルドの所属機体も見えたので…… 俺は、マチロにハイエナ連中の足止めを指示し、挟撃する事にした。
「逃げられない様にだけ気を付けろ」
「はい、街を襲うハイエナは危険なのです」
基本的にハイエナ連中は街を襲撃する事は無い…… 連中の基本行動は死体を漁る事、その為に戦闘後の戦場によく現れる。
「街を襲撃したとなると…… 誰かがハイエナに、襲撃に値するお宝があると漏らしたか?」
だとすると…… 今いるハイエナ連中を全滅させないと、街に防衛力が無いと判断される可能性がある……
「倒さないと…… 次は倍の敵が来る」
この世界も治安が悪い…… ほんの少しでも富があると荒くれ者達に狙われる。街単位でも防衛力が無いと襲撃されるのだ。
「だから、街に力があると周知させないとな……」
ハイエナ連中の最後の一機が、街の防衛機械騎兵のメイスの一撃をくらい動作を停止する。
「お、わった……」
ハイエナの機体が停止したのを見て…… 俺の緊張の糸が切れた。
「ごしゅじんさま?」
そして、俺は気を失った……
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「あらあら、可愛らしいのに…… 此処は中々に凶悪なのね」
「ごしゅじんさまにさわらないでください!」
微睡む意識の中で…… 誰かがマチロと口喧嘩している声が聞こえたので、俺はゆっくりと目を開けた。
「ごしゅじんさま!」
「あら? 起きちゃったわ」
「マチロ…… と、誰…… だ?」
身体を起こそうとして、自分の身体が液体の中に居る事に気付いた。
「此処は…… アバター生成機の中か?」
「アバター? 貴女達はそう呼ぶのね…… 私はマダム、【マダム・ライディ】。貴女達の言う爺さんの古い仲間さ」
「爺さんの…… 処で、俺はどうなったんだ?」
「ごしゅじんさまは、あのあと意識を失われたのです」
「貴女の身体…… 貴女が言うアバターの調整が不完全だったからね。しかし、貧弱な上に特殊な身体だね? そんな身体を選ぶなんて…… そう言う趣味かい?」
「そう言う趣味では無いが…… 選ぶとは、どう言う意味だ?」
「はん、惚けるんじゃないよ! 貴女達は好きに作り出した身体で、この世界に戦乱を振り撒いてるんだろう?」
「作り出した身体…… 戦乱を振り撒いてる?」
「キャシー、そこまでだ」
「チィ…… 私はマダム・ライディだよ」
「街長…… どうして、あんたが?」
「私も関係者だからだよ。あの方の遺言に従い、君に…… その身体とあの方の遺産の話をしよう」
「その身体って、どう言う事だ?」
「君の今の身体、その身体が此処に在るのは…… あの方と私が廃棄される前に盗んだからだ」
「盗んだ?」
「お話の前に、ごしゅじんさまは服を着ましょう」
「え、あ!? 裸!」
「失礼した」
街長は部屋の外に出るとマダム・ライディが近付いてきた。
「私は残るわよ。身体に異常が無いか?確認しないとね」
そう言って、マチロが差し出した布で身体を拭く俺にあれこれと指示をする。
「身体の方は…… 1ヵ所以外は少女よりねぇ。その1ヵ所がすごく御立派で凶悪なんだけど……」
「ごしゅじんさまから、はなれてください!」
「あらあら? 貴女…… そう言う事。大人の仲間入りしたのね…… でも、あまり独占欲が高いと嫌われちゃうわよ」
「!?」
両手を広げて、マダム・ライディと俺の間に入っていたマチロが心配そうに振り返る。
「よしよし、俺がマチロを嫌う事は無いから…… で、どうなんだ?」
「そうね…… 調整は上手くいってと思うけど、身体的に弱いのは仕方がないわ」
「そうか…… 貧弱なだけで異常が無いだけましか?」
「まあ、ズルせずに自分で鍛えなさい…… しかし、センス無いわね」
「お爺ちゃんの残した物で…… ごしゅじんさまが着れる物が少なく…… 性能重視なのです……」
「ごめんさいね。お嬢ちゃんを責めてる訳じゃないの…… たく、これだから男供は…… それと、性能重視ならジェルはクリア系にしなさい」
「それはちょっと……」
「どうせ上に着込むんだから、四の五の言わない! だいたい、戦場でそこまで見えたら終ってるでしょ? それよりも、少しでも性能を優先して危険を避けるべきよ!」
「そうです! ごしゅじんさま、外で着替え無い様にすれば…… だいじょうぶです!」
「くっ…… 死ぬよりは…… 仕方ないか……」
俺は…… 二人の圧力に敗けた……
「服は…… しょうがないから、私が後で揃えてあげる中で選びましょう」
「ごしゅじんさま、私が最高に似合う物を選びます!」
「目立たない奴で…… 頼む…… あぅん!?」
「ごしゅじんさま?」
「ちょっと…… 前の時と感覚が……」
「調整したからね。身体の神経も過敏になったみたいね…… どのぐらい敏感かしら♪」
「ちょっ、ま、待って!」
「む~、ごしゅじんさまから離れて!」
触診と称して、いろいろとこねくり回され…… 最早、尊厳が無いに等しい感じになった俺は…… そそくさと着替えて部屋を出ると……
「大丈夫…… かね?」
なんとも言えない感じの街長が待っていた。
「大丈夫…… ちょっと尊厳が失われただけだから」
「? 大丈夫なら付いて来てくれ」
街長の案内で…… 爺さんの工場の奥に進む。
「此処は…… 機械騎兵の製造現場か?」
「ああ、世界初の製造工場だ」
「世界初…… どう言う事だ?」
「機械騎兵…… あの兵器を最初に作ったのは、君達が爺さんと呼ぶ…… あの方だ」
「何!?」
「まあ当時は、今の機体に比べると、巨大なフルメイル甲冑くらいにしか思っていなかったが……」
「お爺ちゃんが…… 機械騎兵を作った人……」
「当時…… あの方は国の防衛力に悩んでいてね。この世界は平日でも魔物が出たりと、騎士や兵士に平民は常に命の危険がある。その事に対処する為、あの方は魔物のゴーレムを参考に巨大な騎士を作り出した」
「国を…… 爺さんは偉かったのか?」
「あの方は…… 今は亡き我等の祖国の先の国王…… 先王様だ」
「せんおう…… こくおう…… お爺ちゃん、王さま?」
「そうよ。私の旦那とこの人も家臣だったの…… あの頃が懐かしいわね」
「旦那…… お前も家臣だったろう?」
「その頃の私は雇われの術士兼商人だから、王様の家臣になったつもりは無いわ」
「術士?」
「あの頃の私は、怪我を治療したり薬を作って生活していたのよ…… 自分の薬を売る為に商人ギルドにも入ってね。だからこそ、貴女の調整ができたの」
「君の身体を保存する為の薬液は、彼女が作っていたのだ」
「なるほど…… でも、何で調整できるんだ?」
「術士って、言ったでしょ? 病気の回復術の応用ね。貴女の身体の魔力などの通りを良くしたのよ」
「魔力…… 俺には、特殊スキル系の適正能力が無かったはずだが……」
「昔はね。言ったでしょ? 通りを良くしたって、今の貴女なら使えるはずだけど…… 今の今まで使った事が無かったのなら、ちょっとづつ慣らす様にしなさい」
「慣らさずに使うと…… どうなる?」
「頭の中が破裂するわ。パーンって」
「パーン……」
「こわ! 使うのこわ!」
「話を戻すぞ」
「「「はい」」」
「先程、亡き祖国と言ったのだが…… 実は、君達に深い関わりがある。何故なら、その王都だった地で君達の身体…… アバターが産み出されているからだ」
爺さん達の亡き祖国は…… 俺が最初に降り立った場所だった。