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12/12

貧弱過ぎるクナンは…… 移動手段を手にする? そして、動き出す上級民達……

今年もよろしくお願いいたします。




「お見事ね」


マチロのハイキック一閃で吹き飛んだ男を見ながら、マダム・ライディが拍手している。


「くは~! 苦しかった」


「ごしゅじんさま、大丈夫ですか?」


「ああ」


「大丈夫なら良かったけど…… で、何者かしら?」


マダム・ライディが俺の安否を確認した後、マチロの一撃で痙攣しながら失神した男を指さす。


「しらない人ですね……」


「でも、なんか見た感じが…… あ!」


「どうしたの?」


「こいつ…… 吹き飛ばされた俺達の家の地下を掘ろうとしていた傭兵だ」


「あっ、おじいちゃんが近付くなっていってた人です!」


マチロの話から、爺さんが言っていた流れ者の傭兵の話を思い出した。


「爺さんの事を嗅ぎ回っていた奴か?」


「あの方は機械騎兵のカスタムや整備で、知る人は知る方でしたからね…… あの方がカスタムした機体を狙って、あなた達の情報を流していたのかしらね?」


「たく、傍迷惑な…… で、俺の死体は…… 無い?」


改めてコックピットを覗くと…… 在るはずのオッサンだった俺の死体が無い。


「この染み…… 血痕だな。しかもこの量…… 確実に死んでるよな?」


「えぇ…… この破損状態に所々に引っ掻けた後があるから、誰かが引き摺り出したみたいね…… そう言えば、ハイエナ達が余所者の死体を回収してるって話があるわ」


「死体を…… ハイエナで禿鷹って訳かよ…… よっと!」


「なにしているの?」


「いやちょっとな…… よっしゃラッキー♪」


衝撃で変形したコックピットのシートを引き剥がして、装備品を収納していたウェポンケースを引っ張り出そうとするが……


「ふぬ~! だめだ…… 引っ掛かって出ない……」


「ごしゅじんさま、ちょっとよけてください!」


ドガ! バキ……


マチロが、飛び蹴りで引っ掛かっていた変形したシャフトを蹴り…… へし折った。


「マジか…… あいつ、死んでる?」


「だいじょうぶ♪ てかげん?しましたから」


「辛うじて生きてるわね…… 固形物は一生食えないでしょうけど」


「まあ、自業自得って事か…… よっと、うわぁ!?」


話ながら、ちょっと大きめのウェポンケースを引っ張り出すと……


「柩?」


今の俺がすっぽり入りそうな…… 黒い長方形の柩の様なウェポンケースが飛び出て来た。


「ごしゅじんさま!?」


「いてて…… こんなに大きかったか?」


危うく下敷きになりかけながら、改めてウェポンケースを見ると……


「ほんと…… 棺桶みたいだな……」


黒いウェポンケースは、ただ鈍い光をたたえていた。


 ・

 ・

 ・


『困りますよ、オクさん』


「ふん、なんの事だか解らないな?」


『不用意に〝データプレイヤー〟を殺すのは、ルール違反……』


『彼等は、皆さんとは違い……〝全て〟が現実と同じ感覚でデータを収集する存在…… 彼方での死は此方でも死になるのですよ。後始末が大変なんですよ…… 世論やバッシングとか…… 死体の始末も……』


「はん! 元々俺の奴隷を奪ったのが悪い! 所詮は施設の屑…… 俺の物に手を出した報いだろうが!」


『何が報いか…… 運営から直接情報を貰っていながら、それを逃した間抜けのくせに』


「なにを!」


『やめたまえ。此処は話をする場であって、争う場では無いだろう?』


『えぇ、争うなら彼方で…… 私も参加するわ』


『あ~やめだやめだ』


「チィ…… 誰が魔力適合者供とまともに戦えるかよ」


『彼等の収集したデータは、皆さんの機械騎兵にも反映されるので…… むやみやたらに殺さない下さい』


「ふん! なら、俺の機体を強化しろ」


『オクの機械騎兵は使い方が違うだけで、ちゃんと強い機体だろう?』


『重装の遠距離型なのに近接カスタムって…… バカなの?』


「うるせぇ! 近接特化の奴隷が乗るはずだったんだよ!」


『いやいや…… せめて奴隷を手に入れてからカスタムしろよ』


『そもそも機械騎兵の操作くらい自分でしないさいよ』


『よわよわ……』


「黙れ! 俺は上に立つ人間なんだから、面倒事は下僕がやれば良いだろうが!」


『まあまあ、オクさんには複座のデータ収集と検証にも役立って貰って居ますから…… 解りました。オクさんの要望に合わせた機体を用意します』


「よし!」


『やれやれ…… オク君だけ特別扱いかい?』


『ずるい……』


『もちろん、皆さんの要望にもできる限り対応させていただきますよ。できる限りですが……』


 ・

 ・

 ・


「ごしゅじんさま!?」


ウェポンケースから取り出した黒いアーミーポンチョを見たマチロが驚きの声を上げる。


「懐かしだろ?」


この世界に来た時からずっと使っていた初期装備……


「最近まで強化し続けてきたからな…… 今の俺には最強の防具だぜ」


男だった時には膝上だったのだが、今の俺に引き摺る程に大きかった。


「まるで…… てるてる坊主だな「ごしゅじんさま!」うお!?」


突然マチロに飛び付かれて、潰されたが……


「ごしゅじんさまのにおい♪」


「たく…… しょうがないな……」


嬉しそうなマチロの姿に…… 俺は大人しく黙たまま下敷きになっていた。


「あれ? 浮いてる……」


潰されたままに寝転がっていた俺は、ウェポンケースが空中に浮かんでいるのを見た。



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