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爺さんの遺言と遺産が…… クナンを旅に誘う。


「君に私達が出会う2年程前だ…… 私達の王都は、信じられない物に攻め落とされた」


「信じられない物?」


「先王様…… あの方が作り出した機械騎兵が攻めて来たのだよ」


「な!? どうして? まさか…… 盗まれたのか?」


「ああ…… 設計と知識がな。後で解ったが…… 開発に携わった者が王都陥落前に姿を消していた。そいつが情報を流したのだ」


「随分と用意周到だったみたいだが…… 同型機だろう? どうにかできなかったのか?」


「数と性能が違ったのさ……」


「性能が? 同型機じゃないのか?」


「本体は同一だった…… 本体は…… だが、奴等は足に車輪を付けて、馬よりも速く走りながら見た事も無い飛び道具を使ったのだ! 当時、我が方には機械騎兵が3機…… そのどれもがまともに動かす者が居ない。その上、一機は完成前だった……」


「私達は…… 戦う前に敗けたのさ……」


足に車輪と見た事も無い飛び道具…… これは俺達の世界の技術の応用だ。


たぶん、爺さん作った機械騎兵に戦車や装甲車の技術を掛け合わせたのだろう……


魔法が在るとは言え、剣と槍と弓の騎士と兵士で戦車隊と戦う様な感じだ……


「勝負にならないな……」


「そう、王は…… あの方の息子は…… 自らの命を賭けて、決死隊を率い…… 私達を王都から逃がされたのだ」


「その決死隊に…… 爺さんの近衛騎士だった私の旦那も居たのさ…… 馬鹿だよ。引退した爺さんの護衛だったのに…… 自分よりも若い騎士の代わりにって…… 志願してさ……」


「それが奴の騎士としての信念だったんだろうな…… 孤児だった奴を騎士にしたのは、当時は王子で学生だった王だ。そして、奴の決断が私達を生かした」


「じゃあ…… この街は? お爺ちゃん達の国じゃないの?」


「いや、我等の国だ…… 正確には辺境伯領だった場所だがな。王都を陥落した者に狙われぬ様にと、街に名を変えたのだ」


「気休め程度の誤魔化しにね」


「それに…… 王都は奪われ、王族も散り散りで行方が解らぬ。そして、敵が王都に居座っている…… そんな状態で国と言えぬ…… 死した者の為にも、国の名を捨てて生き抜けと…… 子と名を奪われたあの方が言われたのだ」


「爺さん…… その地に現れた俺に…… なんで良くしてくれたんだよ……」


「あの方が眼帯をしている理由を聞いたか?」


「いや…… 聞いてない」


「あの眼帯の下は魔眼なのだ。あの方の目は…… 知識さえあれば、見た物の使われてる素材と状態を鑑定する事ができるのだ」


「だからか、だいたいの機械騎兵を整備できたのは……」


「ああ、王都が陥落してから半年くらい待って…… 私達は、城に潜入した」


街長の話だと…… 当時、辺境伯だった街長の元に爺さんと王都から逃げた難民が押し寄せたらしい。


何時攻めて来るか不安になりながらも、なんとか難民達をまとめあげて守りを固めたが……


王都から敵が来ない……


国内を制圧するんじゃないのか? と不審に思った爺さんと街長は…… 奪われた王都に潜入した。


「城には、王族だけが知る抜け道が在ったのでな……」


「よく言うよ。王都に入れたのは、私の店が在ったからだろう!」


決死隊に志願した旦那さんの行方を知る為に、マダム・ライディは王都に残って、ある程度落ち着いた時に店を開いたらしい。


爺さん達は、その伝を辿って王都に入り城に潜入した。


「そこで私達は、裏切者の技術者を発見し…… 敵の機械騎兵の知識を回収したのだ」


「なるほど…… この街に防衛用の機械騎兵がある理由が解ったぜ」


「あの方が解析して下されたおかげだ…… その情報は散り散りになった者に流している」


「じゃあ…… 傭兵ギルドが機械騎兵を使っているのも?」


「流した情報が作られた機体だろうな。そして、私達が見た物は機械騎兵だけではない……」


街長が俺を指さして……


「今のお前…… その身体を見付けたのだ」


「確かに、俺が初めてアバターを作った時期と合致するな…… しかし、何故に俺のアバターと解った?」


「答えは…… あの方の魔眼だ。あの方がその身体を初めて見た時に…… ご自身の、王族の血が使われていると知られたのだ…… そして、魔物に追われて逃げる私達を救ったお前…… お前と同じ力が流れている事に気付かれた」


爺さんとの出会いは…… 現実世界(あっち)の施設で仮想世界(こっち)での個人行動が認められるランクに上がった初日の事だった……


あの時の爺さんの顔が忘れられない……


今なら解る…… あれは、怒りと歓喜が複雑に混ざり合った顔だ。


「その後は…… 私から見ると、仇とも言える機械騎兵乗りのお前との不思議な関係だったが…… お前がマチロちゃんを連れて来た時に、あの方はただの技術屋として…… マチロちゃんの祖父になられた」


「お爺ちゃん……」


俺の知る限り、マチロといる爺さんは…… 孫を優しく見守る爺ちゃんだった。


「そして、自分が死ぬか…… その身体が目覚めた時に渡して欲しいと」


街長がスイッチを押すと…… 1番奥の格納庫の扉が開く。


「これは…… 未完成の機械騎兵か?」


「これは、あの方の遺産にして遺言…… あの方は、ご自身の寿命が近い事を予見していた…… その事からご自身一人では、この機械騎兵が完成できぬと…… 1番重要なフレームと動力にコックピット回りをご自身で…… 残りは複数の場所で…… 完成させるかどうかは、お前に任せると…… 自由に生きよと…… そう言っておりました」


「少し…… 考えさせてくれ……」


 ・

 ・

 ・


その日の夜……


「動かすのに…… 必要な物は完成してな…… 爺さん、レバーがかてぇし、ペダルはおめぇよ…… たく、俺は貧弱になったのに…… 爺さんが調整してくれねぇからなぁ……」


未完成の機械騎兵のコックピットで、操作レバーとペダルの感触を確認するクナンの姿が在った。


「ふう…… ちきしょが…… 完成品、乗りたいだろうが! まったく~!!」


そして、朝には……


「決めたかね?」


「ああ…… 爺さんの言う通り自由に生きる。こいつに乗ってな! その為にも、完成させないとな!」


そう言って、笑うクナンは……


「ごしゅじんさま…… 超ヤバにかわいいです♪」


どう見ても、可愛い美少女に見えた。



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