6.標的。
「いやぁ、非常に美味しかった!」
「本当に食べることばかりですね……」
「団長の健啖家振りは、王都でも有名だから……」
会食を終えて。
ボクたち三人は、ひとまずの客間へと案内された。
そこで今後の打ち合わせをしようと、そういう話になったのだが。アイロスはいまだに食事のことで頭がいっぱいであり、リターシャはそのことに肩をすくめていた。
この場合、議題を提示するのが自分になってしまうのはどうなのだろう……?
「ところで、今回の標的、ってどんな魔物なんですか?」
しかし、それもやむなしだった。
ボクは会話の流れをぶった切って、そう訊ねる。
するとアイロスは一瞬だけキョトンとして、そうだったと一度手を打った。
「あぁ、そのことだけどね。今回の魔物は、本当に厄介なんだよ」
「厄介なのは聞きましたけど、具体的にどんな奴なんです?」
さらに深掘りすると、アイロスに代わってリターシャが引き継ぐ。
「ゴレムよ。それも、超大型の、ね?」
「……ゴレム?」
その言葉を聞いて、ボクは首を傾げた。
たしかにゴレムは強力な魔物で、危険が伴うのは理解できる。しかし、それはあくまで一介の冒険者レベルでの話だ。
騎士団に所属している二人――さらには、共にきた一団には魔法を駆使する者もいるだろう。だとすれば、圧倒的物理耐久を誇るとされる相手も、苦にはしないはず。
そう考えていると、アイロスがこう補足をした。
「今回のゴレムは、本当に特殊でね。端的に言えば――」
実に困った様子で。
「あり得ないほどに、身軽なんだ」――と。
それを聞いて、ボクはさらに首を傾げた。
ゴレムが、身軽とは……?
「それってつまり、攻撃しても回避される、ってことですか?」
「あぁ、簡単に言えばそうだね。ただ問題はそれ以外に、こちらが魔法を詠唱し、前衛が時間稼ぎしている間に殲滅される可能性が高い、ということだ」
「そんなバケモノみたいな……!?」
そこまで聞いて耳を疑った。
アイロスの実力は、エンシェントドラゴンとの一戦で把握済み。
そんな彼が断言するのだから、そのゴレムは余程のバケモノだと分かった。まともに接敵することもできず、後方からの魔法も回避、ないしは妨害される。
往々にしてゴレムとは、動きの遅い魔物だ。
そこに規格外の速度が加われば、たしかに尋常ではない。
「……そ、それで。もしかして、ボクの役割って?」
さて、そうなったら、だ。
ボクはいよいよ、今回自分に言い渡される役割を訊く。
ただ、この時点である程度の予測はついていた。そして――。
「あぁ、そうだね。今回、リッドくんには――」
アイロスは、笑顔を浮かべてこう告げるのだ。
「その絶対回避能力を駆使して、最大限の時間稼ぎを頼みたい!」――と。
……やっぱり、か。
ボクはそれを聞いて、思わず苦笑い。
しかし、一度決めたことだからと腹を括るのだった……。
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