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3.それぞれの事情。

色々あるよね、人間だもの。









「騎士団長。先ほどの話は、冗談ですか?」

「いや、私は本気だよ。彼には今後とも、この国の力になってほしい」

「………………」




 リッドと別れたアイロスとリターシャは、騎士団の駐屯地へと向かって歩きながら言葉を交わしていた。部下の言葉に対して、団長は至って真面目に答える。

 だが、リターシャは複雑そうな表情を浮かべていた。



「アタシは納得できません。アイツは、あくまで一介の冒険者です」

「おや、そういった言い方はキミが一番嫌っているのではなかったかな? 所詮は子爵令嬢のお遊びだろう、と陰口を言われ続けたリターシャには、ね」

「そ、それとこれは話が違います……!」



 アイロスの言葉に、少し怒ったように言い返す少女。

 しかし、すぐに神妙な顔になって続けた。



「アタシは貴族として、民を守るという責務がありますから。しかし――」

「リッドくんはあくまで平民であり、守られる立場だ、と?」

「………………」



 そして、アイロスの言葉に閉口する。

 彼の指摘が図星だったのだ。


 リターシャは人一倍責任感が強く、貴族としてあるべき姿を模索していた。

 その果てにたどり着いたのが、騎士となって民を守るということ。四女であったため、政略結婚諸々からは外れていた彼女が行きついた居場所だった。


 だが、リッドはどうだろうか。

 リターシャはそう思った。



「人間だれしも、守りたいものはあるんだよ」

「団長……?」



 その時、ふとアイロスがそう口にする。

 少女が首を傾げて見上げると、そこにはいつになく真剣な表情の彼がいた。




「まぁ、どうするか決めるのはリッドくんさ」




 だが、それも一瞬のこと。

 アイロスはそう言うと、自然な足取りで食事を提供する露店へ向かうのだった。









『辺境伯に謁見し、その後は我々と共に王都へきてほしい』




 ――アイロスの言葉が、耳から離れない。


 降って湧いた士官の話だった。

 ボクが普通の冒険者で、生活の安定を求めるなら願ってもない申し出だろう。だけど、即決はできなかった。だって、ボクにはこの街にいる理由がある。

 それは、他でもない……。




「あぁ! リッド兄ちゃん、お帰り!!」

「りっくん、おなかすいたぁ!!」

「ごはんまだぁ!?」




 大切な家族が、この街にいるからだった。




「ただいま。みんな」

「お帰りなさい、リッド……」

「はい。ただいま、です……院長」




 子供たちに囲まれるボクを見て、安堵の表情を浮かべる老齢の女性。

 彼女の名はミランダ。







 ボクの生まれ育った【リーアン孤児院】の院長だった。






 


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