1.酒場で。
ここから第1章(*‘ω‘ *)
「騎士団長だなんて、一言も言ってくれなかったじゃないですか……」
「はっはっは! だって、先に話したら恐縮しただろう?」
「それは、そうですけど」
酒場でボクとアイロスは、食事をしながら会話していた。
何度も思うのだが、このアイロスという人物は本当に掴みどころがない。クエストを終えてから、彼の部下であるという少女がやってくるまで、その素性は露ほども知らなかった。冒険者稼業というものでは、実力がすべてだ。
だから、あえて聞かなかった部分もあるのだが。
そうといっても、騎士団長であるという情報は程度が違うと思えた。
「アイロス、本当に意地が悪いね……」
ボクは頭を抱えながら、ついついそう口にする。
すると、もう一人がムスッとした様子でこう言うのだった。
「たかが平民が、団長を呼び捨てにしないでくれる?」
「えっと、キミは――」
「リターシャ。アタシの名前は、リターシャ・イグレシアス。イグレシアス子爵家出身の騎士団員であり、アイロス騎士団長の右腕よ」
「あ、うん。リターシャ……ごめん」
「ふん……!」
少女――リターシャは、こちらが謝罪するとそっぽを向いてしまう。
傍らには、身の丈に合わない戦斧があった。先ほどの話を聞いた限りだと、それこそが彼女の得物なのだろう。肩ほどまでの金の髪に、蒼の瞳。容姿や態度はどれも年相応の子供らしく、斧がなければ可憐な少女、という印象が第一に立っていただろう。
「……そ、それで。二人は、いったい何のためにこの街へ?」
「あぁ、そのことだけどね」
だが、それよりも。
ボクは疑問をアイロスにぶつけた。
すると彼は、至って平静な様子でこう話す。
「最近、この地域で魔物の動きが活性化している、ということがあってね。ガリア王国は市民の安全を第一に考え、調査団として私たちを派遣したのだよ」
「な、なるほど。思った以上に、真面目な任務だったんですね……?」
「ははは。その途中、偶々キミを見かけてね!」
ボクのスキルに興味が惹かれ、寄り道をしてしまった、と。
そう語ったアイロスの表情は幼く見えた。
「アタシたちは困るんですけどね。もう、諦めてますけど……」
「あぁ、いつもすまないね。リターシャ」
「本当に反省してます……?」
そんな彼に、リターシャが釘を刺す。
飄々とした態度の団長に、少女は大きくため息を吐くのだった。
「それで、だ。私からリッドくんに、一つお願いがあるのだが、いいかな?」
「え……お願い、ですか?」
「あぁ、そうだ」
その時だ。
アイロスが途端に真面目な口調になり、そう言ったのは。
彼の真っすぐな視線を受け止めて、ボクは次の言葉を待っていた。すると、
「あぁん? お前、まだ冒険者続けるつもりなのかぁ?」
「あ、え……アネス…………!?」
ボクに乱暴な言葉を投げつける人物があった。
その人――元リーダーのアネスは、赤ら顔でこちらを見ると口角を歪める。
「それで、今度はこの二人に迷惑をかけるのか?」
そしてアネスは、アイロスとリターシャを見て笑った。
こちらを小馬鹿にするようなそれに、ボクは何も言い返せない。そして、
「アンタ、ずいぶんな口振りじゃない。雑魚のくせに」
「あん……?」
相手の言葉を受け入れようとした時だ。
リターシャが、つくづく呆れた声色でそう口を挟んだのは。
「なんだ、ガキ……!」
「リターシャ!?」
驚き、彼女を見る。
するとそこには、ひどく不快そうな表情を浮かべた少女がいるのだった。
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