2.戦い方。
オープニングはここまで。
次回から、第1章です。
『キミのスキルはきっと、その魔物を標的にするのでは力を発揮し切れない。だから、真に対象とすべきなのは――』
アイロスの言葉を信じ、ボクは矢を放った直後に魔物の前へと姿を晒す。
狙い過たず眼球を射抜かれたエンシェントドラゴンは、怒りを隠そうともせずに侵入者であるボクを見定めた。そして、そのあまりに大きな腕を叩きつけんと振り上げる。
「このスキルは、標的からの確実に逃げる能力。だから――」
ボクは弱気になりそうな自分を叱咤し、ドラゴンの攻撃を確認した。
その上で、こう口にするのだ。
「真に対象とするのは、敵からの『攻撃そのもの』だ……!」――と。
それは先刻、アイロスに告げられた戦い方。
ボクのスキルを最大限に発揮し、役目を果たすもの。
意思とは無関係な逃避行動ゆえに、役立たずと罵られたスキル。
だがそれは、使い方次第で――。
「相手の攻撃を『絶対回避』するスキルに、変貌する……!」
――エンシェントドラゴンの一撃が、大地を抉る。
しかし、攻撃を喰らったと思われたボクの身体はすでにそこにない。
ボクはいつの間にか、それを回避していた。どのように動いても回避不可能と思われた攻撃から、因果律を捻じ曲げたかのように逃げ出したのである。
そして間を置かず、ボクは必中の神弓を引き絞ってもう一つの眼球へ矢を放った。
――エンシェントドラゴンの絶叫が木霊する。
その一撃は、確実に巨竜の両眼を潰して時間を作り出した。
それを好機と見て、トドメの一撃を繰り出すのは他でもない彼である。
「さすがだね。私の見立ては、間違いなかったようだ……!」
アイロスは炎を纏った大剣を振り上げ、エンシェントドラゴンへと肉薄する。
そして、分厚い鱗に覆われたその首へ一撃を繰り出した……!
――断末魔の叫びが、響き渡る。
それは一つの大きな生命が終わりを迎えた咆哮だった。
◆
「いやはや、キミのスキルは素晴らしいね!」
「そ、そんな……」
戦いを終えて。
ボクとアイロスは、街へと戻ってきてた。
その道中で幾度も褒め称えられたが、どうにも小恥ずかしく思えてしまう。ボクは彼から視線を逸らしつつ頬を掻き、しかし少し嬉しくも思っていた。
だから、ここは素直に感謝を述べることにしよう。
「あの、アイロス……?」
「あー!? こんなところにいたー!!」
「え……?」
そう考え、口を開いた時だった。
身の丈に合わない戦斧を背負った少女が、そう声を上げてこちらにやってきたのは。何事かと思い、首を傾げていると……。
「騎士団長! 遠征中は勝手な行動しないでください、って言いましたよね!?」
「あっはっはっはっは! そう目くじらを立てないでくれ、リターシャ」
「遠征のたびに単独行動されたら、目くじらも立てますよ!!」
…………へ?
「あ、あの……?」
「あぁ、そうだ。キミには、自己紹介がまだだったね」
あまりの事態に状況が呑み込めず、ボクが困惑していると。
アイロスはそう言って、改めて自己紹介をするのだった……。
「私の名前はアイロス・フォン・オルガティン。ガリア王国騎士団で、長を務めているのだよ」――と。
彼の口から出たのは、この大陸最大の国名であった。
「…………え」
ボクはそこで、しばし沈黙してから。
「ええええええええええええええええええええええええええええ!?」
驚きのあまり、絶叫するのだった。
これがすべてのスタートライン。
ボクこと、リッドという田舎者の物語が始まった瞬間だった。
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