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9.過去。

書けたので出す_(:3 」∠)_









「…………聞いたよ。リオスさん、って人のこと」




 アイロスは掻い摘んで事情を話してくれた。

 彼曰く、過去にリオスという先輩騎士がリターシャを守って命を落としたという。詳しくは聞かせてもらえなかったが、それが彼女の心に深い傷を残しているのは確かだった。

 ボクはそれを知って、居てもたってもいられなかったのだ。



「そう、ですか」



 だけど、リターシャはまだ心を開いてくれていない。

 固く心を閉ざしたまま、静かにボクの隣で空を仰いでいた。



「ねぇ、リターシャ? ボクの話をしていいかな」

「貴方の……?」



 自身を守って命を落とした恩人。

 その人の意思を尊重しようとして、彼女は必要以上に意固地になっている。


 だったら――。



「ボクもね、騎士の人に命を救われたことがあるんだ」



 ボクが孤児院や、みんなのために戦う根本の話をしよう。

 そう考えて、ゆっくりと話し始めた。









 ――それは、ボクがまだ幼い頃。



 孤児院の子供たちは、街の中でも特に迫害を受けていた。

 しかし、イジメられているボクのことを庇ってくれた人がいたんだ。名前も知らないその人は、王都から派遣された騎士だと言っていた。



『お兄さんは、どうしてボクを守ってくれたの?』



 イジメられるのが当たり前だと思っていたボクには、それが疑問で仕方ない。

 だから自然と、そんな問いかけが口をついて出ていた。

 すると――。



『理由なんて必要ないんだよ。酷い目に遭っている人を助けるのは貴族も、平民も、そして孤児だったとしても関係ないんだ。みんなが平等で、助け合いで生きているのだから』



 彼は優しく微笑んで、そう語ったのだ。

 その言葉は、ボクの心にいまだ深く根付いている。










「その方は、まるでリオスさんみたいですね……」

「そうなのかな。でも、その人ならきっと今の状況でも手を取り合うと思う。だって助け合うのに、身分なんて関係ないんだから」

「………………」



 付け焼刃のようにも思えた。

 それでも、ボクがこの戦いに身を投じる決意は示せたはず。

 あとはリターシャが、それを受けてどう決断するか、だけだった。



「でも、もしかしたらリオスさんも同じことを……」

「ん、そのペンダントは?」



 すると、そこで彼女はペンダントを取り出す。



「リオスさんの形見です。あの日、アタシに託してくれた大切なもの」

「え……?」



 形見のペンダントを大切そうに抱きしめるリターシャ。

 でもボクの目に入ってきたのは、どこか見覚えのある家紋だった。



「それってもしかして、これと同じ?」

「え……!?」



 ボクは懐から、昨夜のペンダントを取り出す。

 そして、彼女のものと比べてみた。

 すると――。




「同じ、家紋……?」




 ボクは驚き、息を呑む。

 それはリターシャも同じで、明らかに動揺している様子だった。しかし、ゆっくりと目を伏せると小さく微笑むのだ。





「これは、もしかしたら何かの縁なのかもしれませんね」






 リターシャは、そう口にする。

 ボクを見るその眼差しは、どこか温もりが感じられた。




「そろそろ、団長のもとへ行きましょう。対策を練らなければ」

「…………うん、そうだね」





 彼女の言葉に、ゆっくりと立ち上がる。

 まだ分からないことはある。




 でも、それは任務を終えてからでも十分だと思うのだった。





 


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