8.責任。
書けたので出す_(:3 」∠)_
「それで、その巨大ゴレムの対策って何かあるんですか?」
客間に戻り、ボクはアイロスに訊ねた。
すると彼はしばし考え、難しい声色でこう答える。
「いいや、これといってないな。つまり、キミがどこまで粘れるかが鍵だ」
「う、うわぁ……」
それを聞いて、改めて自分の責任を思い知る。
失敗すれば騎士団だけでなく、多くの人々に損害が出るだろう。それはボク自身にとっても無関係ではなく、孤児院にいるみんなにだって関係あることだった。
守りたいものがある。
それだけで、この戦いに挑む理由は十分だった。
「私たちは一時、後方で隙を見る。先鋒としてリッドくんがゴレムの注意を引き付け、魔法による援護の準備ができたら合図を送るんだ。それで――」
そこまで、彼が話した時。
ふと、声を上げたのはリターシャだった。
「やっぱり、アタシは納得できません! 素性も知れない冒険者に、この重要な任務の要所を任せるなんて!!」
「リターシャ……?」
「…………」
ボクは首を傾げ、アイロスは押し黙る。
それでも、彼女の感情はさらに熱を増していった。
「団長は先ほどあのように言いましたが、アタシはやはり貴族なのです。そして、それ以前に騎士団員として民を守る責務があります! だから――」
そして、強く唇を噛む。
拳を震わせて、うつむいたまま彼女は無言となった。
「リターシャ!?」
しばしの沈黙が場を支配した後に、いよいよ耐えられなくなった少女は客間を飛び出していく。ボクはその名を呼ぶことしかできず、ただ背中を見送った。
アイロスも同様に、背を見送る。
だが、彼の場合はどこか別に思うところがあったらしい。
深いため息をついたのちに、眉間に手を当ててしばしうつむくのだった。
「あの、アイロス……?」
「どうしたんだい。リッドくん」
「リターシャは、どうして――」
――あのように、誰かを守ることに固執するのだろうか。
それを訊ねかけて、ボクは口を噤む。
これ以上は踏み込んで良いものなのかと、そう思ったのだ。
しかし、こちらの意図を察したらしいアイロスは、少しだけ考えた後にこう口を開くのだった。
「これはまだ、彼女が騎士団に入ったばかりの頃の話だよ」――と。
そうして耳にしたのは、あまりに深い彼女のトラウマだった。
◆
『キミは、逃げろ。リターシャ……』
少女の頭の中には、常に彼の最期の言葉が響いている。
ある任務に失敗した時のこと。敗走の最中、敵を引き付けると残った先輩騎士が心配になり、リターシャは命令を無視してその背中を追ったのだ。
その騎士は、彼女にとって見本となる生き方をしていた。
貴族出身という境遇もさることながら、民を命懸けで守る強い覚悟。
そして何よりも、その人は自分が過去に失った人の面影を強く感じさせた。
「…………!」
そんな彼の言葉が聞こえて。
リターシャも、まだまだ年端もいかない少女だった。
今にも泣き出しそうになり、人気のない木陰で膝を抱えて震えている。
「リオス、さん……!」
そして、こういう時は決まって彼の名を口にするのだ。
胸元から彼の形見であるペンダントを取り出し、握りしめる。こうすると、自身の心を落ち着けることができた。自分は間違っていないと、そう思える。
だが、どうしても感情が収まらなかった。
「アタシは、まだ分かりません……」
自分の為すべきことが分からない。
民を守るのが、騎士の役目。それと共に、貴族の在り方であると信じていた。
だが、それは傲慢なのだろうか。他よりも力がある故に、驕っているというのだろうか。それとも――。
「……あ、いた!」
「え……!?」
そんな迷いの中にいた時だ。
木陰に隠れた彼女を見つけて、声を上げる少年が現れたのは。
「リッド……?」
「探したよ。少し、話いいかな……?」
そう言って、彼は少女の傍らに腰かけるのだった。
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