7.在り方。
すんません、1時間遅刻(´;ω;`)
「団長、少し良いですか?」
「ん、どうしたんだい。リターシャ」
リッドが席を外した時。
不意にリターシャが、アイロスに声をかけた。
騎士団長は不思議そうに小首を傾げたが、部下の表情は至って真剣だ。
「今さら作戦に文句を言うつもりはありません。しかし、どうしてあの者なのですか?」
「あの者、というと――リッドくんかな?」
「はい、そうですね」
その問いかけを受けて、団長であるアイロスは察したらしい。
リターシャはまだ、迷っているのだ、ということを。
「たしかに、団長の言葉を信じるならリッドのスキルは最適解です。しかしながら、いまだ実戦経験の少ない一般人を巻き込むことには疑問が拭えません」
「あぁ、たしかに。普通ではあり得ない判断だ」
「それなら……!」
「でも、ね――」
責め立てるような彼女に、アイロスはこう言った。
「私はそうやって、決めつけることが危険だと思うんだよ」――と。
それを聞いて、リターシャは眉をひそめた。
「決めつけることが、危険……?」
そして、意味が分からないといった様子で言葉を繰り返す。
アイロスはその反応を見て、こう続けた。
「リターシャ。キミは貴族として、国民を守ることが責務だと思っているね。それ自体は素晴らしい心がけだと思うし、否定するつもりは微塵もない」
「………………」
「だが、裏を返せばそれは『見下している』節もある、ということではないか?」
「えっ……?」
その言葉に驚き、目を丸くするリターシャ。
彼女は今まで思い至らなかったであろう思考に、声を失った。
「もちろん、キミがそれを意識的にしている、とは思えない。だが、どこかで貴族を上の者、平民を下の者と、分断しているように感じられたんだ」
「そ、それは……」
言い返せない。少女は、なにも言い返せなかった。
何故ならそれは、図星以外の何物でもなかったから。それでも、彼女が声を荒らげて怒りを露わにしなかったのは、彼女自身ができた人物であったためだろう。
「いいかい、リターシャ。私は思うんだ」
黙ったままの彼女に、アイロスはこう語った。
「国民の信あってこそ、貴族は貴族足り得る。貴族らしく振舞うということは、すなわち国民と協力して有事に当たることだ、と」
そこに、分け隔てなどない。
あるのはただ、若干の視点の違いだけだ。
アイロスはそう語って、リターシャに問いかける。
「もっとも、これは私の考えに過ぎないよ。キミがこの先、どのように考えるかは任せよう。――いいかな、リターシャ」
「………………はい、分かりました」
するとようやく、少女騎士は重い口を開いた。
まだ、合点がいったわけではない。
だがそれでも、彼女は必死に考えを巡らせているのだった。
「さて、そろそろリッドくんもお手洗いから帰ってくる。いまの話は内緒だよ?」
アイロスはそう言って、少女の肩をポンと優しく叩く。
しかし、リターシャはなにも返せなかった。
「私は、しかし……」
そして、アイロスに聞こえない大きさで。
彼女は本当に小さく、そう呟くのであった……。
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