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プロローグ 【逃げ足】しかない少年。

連載版です。

頑張りますので、応援よろしくです。










「何度言えば分かるんだ! このビビりの役立たず!!」

「そ、そんなこと言ったって……!」




 ――とあるクエストの終了後、夕刻の街中で。

 ボクはパーティーリーダーのアネスから、詰問を受けていた。

 その原因というのは、クエスト中に発動したボクのスキルにあって……。



「し、仕方ないんだ! 発動したら、勝手に――」

「発動したら『勝手に逃げてしまう』なんて、馬鹿じゃないのか!? しかも、その時だけ誰よりも足が速くなりやがって! 陽動にすら使えねぇじゃねぇか!!」

「うっ……!?」



 そうだった。

 ボクの持っているスキル【逃げ足】は、致命的なまでに非戦闘向き。それが発動してしまえば、誰もボクには追いつくことができなくなる。

 そこだけを切り抜けば、とても有用なスキルに聞こえるだろう。

 しかし、問題はアネスの言う通り『勝手に逃げてしまう』ことであった。



「ボクの意思とは無関係なんだ。信じてくれ……!」



 敵を目の前にして、囮になろうとスキルを使う。そこまではいい。

 だが、それをするとスタコラサッサ。ダンジョンの外まで、一気に駆け抜けてしまうのだった。そうなっては、まともな陽動など不可能。

 そのためボクの固有スキルは、陰で『ハズレ』だと囁かれていた。



「うるせぇ! お前の意思が関係あろうとなかろうと、知ったことか!!」

「うわ……!?」



 必死に許しを請うが、アネスの怒りは限界を超えていたらしい。

 強く握りしめた拳を振り上げて、そして――。



「…………っ!!」



 ボクはとっさに、その拳を見つめてスキルを発動した。

 すると、



「リッド、てめぇ!! ――俺からも逃げようってのか!!」



 彼の拳は、見事なまでに空を切る。

 ボクの身体は意識より先に動き出しており、アネスの手が届かない位置にあった。当然ながら彼は激昂し、腰元から剣を引き抜く。

 このままでは殺されてしまう。

 そう思ったボクは、次にアネスを見つめてスキルを発動するのだった。



「てめぇ!? お前なんか、もう要らねぇ!! ――追放だァ!!」




 身体が感情よりも先に動く。

 背中にアネスの宣告を受けながら、ボクは誰よりも速く駆けたのだった。











 ――そんなリッドの様子を眺める人物がいた。



「いまの動き、そしてスキルは……?」



 赤く長い髪に、切れ長の眼差し。

 背中に大剣を背負った細身の男性は、しばしの思案の後にアネスへ声をかけた。



「やあ、そこのキミ。少しだけ良いかな?」

「あぁ……? なんだ。このあたりじゃ見ねぇ顔だな」

「ちょっとばかり流浪の身でね。それよりも先ほどの少年のことだが、追放という言葉が本当なら、私が引き取っても構わないだろうか」

「は……あの役立たずを?」



 そして、アネスに向かってそう告げる。

 元リーダーは訝しげに眉をひそめて相手を見たが、すぐに鼻で笑った。そして、肩をすくめてこう答えるのだ。



「なんだよ、物好きだな。勝手にしやがれ」

「あぁ、そうか。ありがとう」



 しかし、赤髪の大剣使いは意に介した様子もなく。

 短くそう口にすると、その場を後にした。



「なんだ、アイツ。それにしても、あの顔はどこかで……?」




 一人残されたアネスは首を傾げる。

 だが、そんな彼に明確な答えがもたらされることはなかった。












「はぁ……きっとまた、クビだよなぁ……」




 ボクは街の公園で一人、長椅子に腰かけてそう呟いた。

 日も沈み切りそうな時刻になっている。先ほどまで遊んでいた子供たちもいなくなり、活気あふれる喧騒は消え去っていた。

 その中で、先ほどの一件を思い出してため息をつく。

 そして自身に宿った能力について考え、憂鬱な気持ちになるのだった。



「どうして、ボクはこんな……?」



 逃げるしか能のない役立たず。

 その他にこれといった取柄もなく、穀潰しだと罵られてきた。

 だけどボクにはお金が必要で、必死になって稼ぎを作らなければいけない。冒険者稼業は危険が多い代わりに、実入りが大きいので期待していたのだけど……。



「……くそっ…………!」



 不甲斐なさに思わず悪態を吐いた。

 頭を抱えながら、それでも必死に次の手段を考える。

 こうなったら冒険者は諦めて、いっそ地道にどこかの店で働くしか……。



「やあ、少し良いかな?」

「え……?」



 そう、考えていた時だった。

 一人の男性剣士が、ボクに声をかけてきたのは。



「誰、ですか……?」



 この街では、まず見たことのない人物だった。

 背丈はボクよりも一回り大きいが、全体的には細身な印象を受ける。そんな赤髪の彼は呆気に取られるこちらを余所に、こう続けるのだった。



「キミにはまだ、冒険者を続ける意思があるかな?」――と。




 男性の言葉に思わず首を傾げてしまう。

 そんなこちらに対して、その人――アイロスは、こう告げるのだった。





「是非、キミのことをスカウトしたい。――リッドくん」





 信じられないそれに、ボクはしばし返事をすることができず。

 ただ、沈黙だけがその場に流れるのだった。






面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!



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_(:3 」∠)_

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