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1.4.2  作者: 雨宮祜ヰ
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帝国の実力⑤

 帝国が西への侵攻を止めて4日。国境沿いにある砦に張り付く帝国軍は来る日も来る日も山を見続け、何の動きも見せない現状に気が緩みきっていた。そこら中で兵士同士の賭けや飲酒が横行し、ミセルとミセルに近しい騎士たちが引き締めに回るが、気の緩みは留まる所を知らなかった。

 厳格な事で知られるティアグラートの軍はこちらより酷くはないが、似たような光景が見受けられると手紙に描き連ねられていた。


「報告します。偵察隊が帰還、気になるものを見付けたとの事で、すぐそこまで来ています」


「気になるもの? ──その偵察隊は何人で戻って……」


「シャァッ!」


 振り返ったと同時に発せられた気合いと共に鋭い2本の刃がミセルの右肩を切り裂き、痛みに顔を歪めながらよろめいて後ろに下がる。更に事態は転がり落ちる一方で、廊下から複数の足音が部屋の中になだれ込み、偵察隊を装った山の民に囲まれる。わざわざ油断した帝国兵の甲冑を奪い、一丁前にたるんだ隙をついて強襲してきたと言うのだ。これが笑わずに居られるかとミセルは口角を吊り上げ、感情の昂りに身を任せて炎を体から噴き出させる。


「帝国をなめるなよ」


 燃え盛る炎に押されて部屋から後退した山の民とゆったりとした足取りで距離を詰めるが、少しでも触れたら食い殺されそうな炎に一定の距離を保つ。そうしている内に後方から1人の騎士が凄まじい速度で短剣を振るい、8人を一瞬で半分に減らしてしまう。


「ミセルさまー! マティルダ遅れて参りました!」


「1人は残す。山猿を狩るぞ」


 挟まれた山の民は4人。2人がマティルダに飛び掛って何とか突破を図り、1人がミセルに肉薄している内に残った1人が逃げ出そうとするが、投じられたマティルダの短剣が足の健を切断して地面に転がす。ワイヤで繋がれた短剣を手の中に収め、作戦通り捕獲に成功する。


「そっちは出口だよ?」


「見事だマティ、そいつを尋問させて情報を吐かせろ。それと無能共を集めろ、仕事を全うしないクズ共を詰める」


「怪我は大丈夫? 肩めっちゃ血で濡れてるよ?」


「炎で焼いた」


 相当気が立っているミセルを止める暇も無く、半ば強制的に後ろを着いて行かされるマティルダは急いで兵士を砦の外に集めさせる。修羅のような空気を纏ったミセルが5000の前で赤い髪を輝かせながら砦の入口を炎の壁で塞ぐ。続いて左右にも炎の壁を築いて塞ぎ切り、唯一の道はシャルウルへと続く道だけとなった。


「猶予は与えた、武器も持っていない馬鹿はその手の中にある紙切れと通貨で戦え。進軍を再開する、帝国の強さを田舎者の山猿共に見せてやれ!」


 ブチ切れたミセルに全員が返事を返すしかなく、武器も持たずに出て来させられた兵士は、本当に何も持たせて貰えずに背後から迫り来る炎の壁に追いやられてシャルウルへ歩を進める。


「ちょっと待ってミセルさま! こんなの良くないよ、まだ尋問も終わってないし、ティアにもミシェイルにも何も伝えてないし」


「マティ。山猿に舐められたままで準備をしてられるか、私は1秒でも山猿相手に準備なんてしたくない。これは私のわがままと、緩み切った無能共への警告、そしてシャルウルの向こう。勇者が居る国への牽制だ」


「そこまで言うなら止めれないし、私もシャルウルの強さは知っときたいからいっかー」


 マティルダが細身の剣をスルスルと鞘から抜き、シャルウルの方へ切っ先を向けると、激しい追い風が吹いて炎を轟々と揺らしながら帝国兵の背中を押す。

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