帝国の実力④
帝国がアルケア全土をを占領して2日が経ったそのまた次の日の早朝。帝国から軍を率いて新たにやって来たのは、大陸最高峰と名高い真っ赤な槍使いである、ヘリオトロープの称号を与えられたミシェイルだった。満を持しての出撃にも関わらず、その表情は既に不機嫌極まりないと言う顔だった。その顔の理由は、既に抵抗していた残りの地域を先に来ていた2人が抑え、アルケアではもう何もやる事が残っていないからだった。
それではなぜ帝国が新たな将を送り出したのかと言うと、その答えはさらに西へ進んだシャルウルとの国境にあった。つい先日出た皇帝からの次の命令は、アルケアを領土化するまで周辺諸国へ絶えず圧を掛け続けると言うものだった。
「遅いぞ女。待ちくたびれ過ぎてアルケアの国王が世代交代してしまうんじゃないかと思ったぞ」
「黙れ七光り。囮くらいには使ってやるから精々逃げ回るのを頑張るんだな」
帽子の唾から鋭い眼光を覗かせたティアグラートと早速火花を散らすが、そんな事は些事と言わんばかりに無視をしてミセルに詰め寄る。
「怪我は無かったかな帝国の花。この戦も君の美しい活躍により勝利したと聞いている。是非今晩夜通し僕に語り明かしてはくれないか?」
「私が? 私はティアの言う通り好き勝手やってただけだよ?」
「軍師を立てるその謙虚さも実に美しい!」
「ティアはすごいよね!」
噛み合わない会話を叩き切るように2人の間に紙を差し込み、それぞれが今後担当する役目を簡潔に、それでいて分かりやすく纏めたものを渡す。
「お前たちと居ると頭が痛くなる。とりあえずミセルはこの中央から、七光りは北、私は南から西へ侵攻する」
「命令するな忌み嫌われた黒髪女。お前たち一族が居るだけで空気が淀む、神聖なる戦場が穢される」
ティアグラートもミセルも何も返さずに背を向けてそれぞれの役割に向かい、残されたミシェルは「返す言葉も持たないのか」と最後まで毒を吐き続ける。
「シャルウルは謎に包まれた山の民が治める国だから気をつけろミセル。どんなやつが息を潜めてるか分からん」
「大丈夫だよティア。マティルダが居てくれるし、皆も居る。私たちは勝てる」
「分かってる。気を抜くなって釘刺してるんだ、私たちに失敗は許されない」
「うん。やろう、ティアが戦ってるなら私も戦ってる。2人は1人のために」
「あぁ、2人は1人のために」
お互いを象徴する石を交換し合った2人は自分の軍に戻って準備を進め、王城から出撃するティアグラートとミシェルの軍をミセルたちが見送る。




