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1.4.2  作者: 雨宮祜ヰ
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帝国の実力③

「城内の制圧、残兵掃討完了致しました」


「掃討完了? あそこに並べた豚共は何のつもりだ」


「は? ……この国の国王と王妃にございます」


「無能な豚と話すことはない、お前ともな。従騎士からやり直せ」


「お、お許しを! ティアグラート様、もういちど機会を!」


 2人の騎士に両脇を抱えられ引きずられていく男と入れ替わって隣に立ったのは、燃えるような赤髪に似合う炎の魔術師のミセルだった。煙草を咥えて指先の炎で火を点け、意味も無くそれっぽく手を振って火を消す。


「私が残せって言ったのに可哀想。ずっと頑張ってた子だよ」


「知らない。この軍の指揮官は私。お前が殺さなくても私は直属の部下に全て殺せと命令した、だからあいつがあの豚共を殺せば良かっただけ」


 手の中のハルバードをくるりと回してミセルの煙草の先だけを切り飛ばして消火する。そのまま歩み出てロープで縛られた国王と王妃の前まで歩き、両手で持って右に腰を捻って構える。


「頼む! 王妃だけは、どうか命だけは」


「──お前の子どもはどこへ逃げた」


「子どもはもう居ない! お前たちと戦って──」


 ハルバードが振り抜かれて力無く2つの体が倒れる。それを見ていたミセルはもう1度煙草に火を点けて肩から羽織った軍服をなびかせて玉座の間を後にする。


「西の残党に降伏を促せ。応じない地域をまとめて報告に上げろ」


「はっ!」


 吐いた煙に溜め息を混じらせながら天窓から覗く青空を見上げる。


 ────────────


 6騎将の内2人が出払った帝国の皇城にある一室では、各椅子の背もたれに施された宝石の席に座った4人と、一際大きな椅子に座った男が顔を突き合せていた。それぞれ皇帝の近くから、ムーンストーン、オブシディアン、遠征中のヘリオライト、ヘリオトロープ、同じく遠征中のフローライト、タイガーズアイの順番で並んでおり、オブシディアンを除いて皆若い力が集い揃っていた。しかし若さもあってか、自分たちが非番な事を嘆く2人が延々と文句を垂れていた。


「何で燃やすしか能の無いあのばかと軍師とは名ばかりのいけ好かない女が任されたのだ。私なら半分の兵で半分の期間でその向こうのシャルウルまで平らげられるのに」


「あの2人は陛下に任された上に、俺が育てた馬を使っている。陛下の意のままにしているか、俺の子どもたちを傷付けていないか。俺が任されてさえいればこんな面倒な心配せずにすむのに」


「これ、陛下の御前だ2人とも。陛下の判断に納得が行かないのなら、この場で進言するのだ」


 ヘリオトロープのミシェイル、タイガーズアイのセトラにオブシディアンのベゼルが叱り、ムーンストーンのアルマリアは口は疎か、目すらも開かずに眠るような瞑想を続ける。

 パッと前触れも無くアルマリアが目を開いたと同時に部屋の扉が開かれ、扉の前に立って1礼した伝令兵がメモしていた伝令を読み上げる。


「本日太陽が頂きに昇る頃王都制圧。陽の出ずる国、ヴァンゲーテン帝国に、相応しい烈火の如き快進撃。この勝利を皇帝陛下に捧げます」


「下がれ」


 ()()の向こうから響いた手短な返事が返され、隣のベゼルも2度頷いて勝利を確かめる。ミシェイルとセトラはまたも面白くなさそうに肘を着いたまま鼻を鳴らし、アルマリアは瞬きだけを繰り返す。

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