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1.4.2  作者: 雨宮祜ヰ
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白い太陽

 ココの冴えた判断に助けられ、比較的少ない会敵でティメリアの内へかなり戻る事に成功するが、アンジェの足が徐々に重くなり前に進まなくなる。気遣いながら進み続けてくれていたココももう限界だと判断したのか、腰を下ろしてアンジェの傷の具合を見る。


「足の傷が開いていますね。よく頑張りました。ですがもう少しで森を抜けてしまうので、ここから先は隠れられません」


「まだ走れる。ちょっと疲れただけだから休めばまた走れる」


 酷く汗をかいている額を布で拭き、少し悩んだ末に頷いて手を組む。手を組んで祈るココの額に浮かび上がった紋様から光が徐々に広がり、さっきまでぼろぼろだったアンジェの体の傷を癒す。


「とても目立つので使いたくはなかったですが、やむを得ませんよね」


「凄い……私にも出来る?」


「今は森を抜けて一刻も早く合流しましょう。魔法を使える者に場所はバレてしまいますし、そうでなくても光を目印に大勢集まります」


「あの光はここら辺が発生源だ! 隈無(くまな)く探せ!」


「こんな感じです。行きましょう」


 声が聞こえる近さまで追い付かれていた事実に足を早め、当初の予定通り森の外目指して直線に走る。

 全く体幹がブレないココの姿を輝いた目で見ていたが、突然大きく揺らいで後ろに飛んで両手を広げる。見入っていたアンジェは反応が遅れ、その背中とぶつかって押し戻される。


「なんで急に止ま……」


 ココのクロークの下から飛び出した9つの剣が円を描くように前方に展開され、飛来した大量の矢を全て叩き落とす。すぐさま指を動かして3本が森の外へ飛んで行き、血を付けて帰って来る。


「やられました。やっぱり戦上手です、怪鳥ヴィルゴ」


「ヴィルゴが居るの!?」


「居ませんが、恐らく本隊から分隊をアンジェさんの追っ手として散りばめたのだと思います。恐らく、私たちは逃げなくても良い数の追っ手から逃げ続け、逃げなければいけない程の数の分隊に誘導されました」


 追っ手を警戒して背中合わせに来た道を見ていたアンジェの目に、追っ手が乗った馬の左右に空馬が繋がれている光景が映る。しかもそれが5つとなれば、地鳴りのように森に反響し、実際の数よりも遥かに多く感じさせられていた。

 くるくると2人を囲んで回る9つの剣に守られてはいるが、内から外を見るには視界の悪い森の中に居る2人は、本隊がどれだけの数が居るのか、確認出来ずに包囲を確実に進められている。


「時間が経てば経つほど状況が悪くなります。幸い後方の追っ手の空馬が沢山あるので、それを奪取して逃げるのが最善です」


 同じ事を考えていたアンジェは頷きも返答もせず、ココの左の太ももを右手で軽く叩いて同意を送る。


「ここまでだ! 空馬を奪おうと考えているのだろうが、それは不可能だ。始めろ!」


 森の外から姿を現さず、若い青年の声の合図で一斉に放馬される。手綱も何もなくなって解放された馬たちは一斉に走り出し、瞬く間に森の中へと姿を消す。


「後ろしかない、後ろに行こ」


「後ろは厳しいです。このまま国境へ逆戻りになれば、完全に合流出来る可能性が無くなります。馬があれば話は別でしたが」


「騎兵の馬はどう?」


「私馬は経験が……」


「私も剣ばっかりで」


「勇者は捕らえろ! もう1人は殺せ」


 ようやく完全な包囲網が完成したのか、合図と共に一斉に押し寄せた敵に次々と剣を送り出し、全く隙の無い攻撃で近付けなさせない。それを分かっていたのだろうか、森の外から歩いて来た2人の騎士がココ目掛け、それぞれ魔法で炎と水を飛ばす。


 全方向に散って敵を切り伏せていた剣が再びココの元へ集結し、盾となって2つの魔法を防ぎ切る。

 その2人が現れてから状況が一気に転がり落ち、ぴったりと息の合った連携にココが押され始める。


「すみません。魔法使いは私が相手をするので、包囲の薄い所を突いて抜け出して下さい」


「その必要は無い」


 ココがアンジェを癒した光よりも遥かに眩い閃光が轟音と共に辺りを満たし、視力が戻って来たアンジェの目の前に白い鎧を纏った誰かが立っていた。

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