第2の心臓③
ウォルフとジャレンが率いる50が先に向かっていた集落は、正しく戦争のもたらす惨状が広がっていた。噛みちぎられた兵士、血を流して倒れた村の人、そして燃え盛る家々から集められた金品が広い空き地に積み上げられていた。
「流石お頭だ! この山の中にあったちっさな集落が、まさか王族の逃げ道だったなんてな!」
「この村のやつら、いつでも協力させられるように、こんなに色んなもん貰っては溜め込んでやがったぜ!」
先に行った50とはそれ程時間差が無く到着したはずだったが、既に全てが終わった後だった村の真ん中で戦利品を手に取って物色しているウォルフが居た。
その奥の燃える家から咳き込みながら這って出て来る小さな影が見え、崩れかかった屋根を見てジュリスは咄嗟に救おうと足を前へと出す。
「おいガキ、ちょっと待てや」
ウォルフの背中を掠めるぎりぎりを行こうとしたジュリスが不自然にその場に止まり、止まった本人も進まなくなった状況を一瞬飲み込めないでいた。思考が止まっている間に家が崩れて子どもが下敷きになって姿を消す。
「お前なんなんだよ! 何で止めた!」
ようやく自分の襟を掴んで止めたウォルフに振り返って腕を掴み返すと、帰って来た言葉にジュリスは言葉を失う。
「蹴ってんじゃねぇよ俺の戦利品を、お前も殺すぞクソガキ」
自分の腕を掴んでいた手から力が抜けたのを確認して、木に向かってジュリスを放り投げる。
受け身も取れずに背中から木に叩きつけられ、斜面のように湾曲した木の幹をずるずると滑って地面に落ちる。
「お頭! ──何してんすか?」
「役に立たねぇゴミを森に投げ捨てただけだ。それでどうした」
「ようやく王族が地下の通路を吐いたっす、案内させるんで呼びに来ました!」
「帰る準備しろお前ら」
「かか、帰る準備すかお頭!?」
「お前らこの匂い気付けよ、こんな近くに俺ら以外に火を放つ馬鹿がどこに居る」
ウォルフに言わせるまでもないと出て来たジャレンが聞くと、見計らったように物見が駆け込んでくる。
「王都陥落! 王都陥落だ!」
「今は右半分を人間にくれてやる、だが左半分は俺らが掠め取る。頭はそう考えてる、分かったらすぐに砦攻めの準備を始めろ!」
弾かれるように砦攻めの準備に走り出した狼たちを見て、何故か不満げな顔でジャレンは奥歯を小さく鳴らす。
「不満かジャレン」
背中を向けていたウォルフからの予想外の言葉に、ジャレンは顔を元に戻せずに振り返ってしまう。
「いや、落として気が緩み切った今。連続で砦を落とし続けて来た今、攻め時なんじゃないかってな」
「そんな面倒な事しねーよ。俺たちは周りの砦を楽に落としまくる」
「そんな事したら1箇所に追いやられて人間が増えるだけだ。俺たちは獣人、あっちはあくまでも人間同士だ。例え隣国に攻め込んだ脅威でも手を組んでこっちを潰しに来る」
「まぁ見てろよ。面白くなるのはこれからだ」




