第2の心臓②
狼の群れが平原を疾走する異様な光景のど真ん中で、ジュリスは1人慣れない馬を駆って前を行く背中を無我夢中で追っていた。前を走る不埒ものを追い抜こうとする馬の本能だけでただ背負われているだけなのだろうが、それでも何とか食らいつく。
「待った待った! 俺初めて馬乗るから、早いって!」
叫ぶジュリスに見向きもせずにただ前だけを見て走る列の外から1匹狼が合流する。
「お頭! 俺らと逆の国境から人間が攻め込んだらしい! それも俺たちが砦を避けてるってのに、その人間は砦を落としながらだってのに俺らより速い!」
「んだそりゃあよォ、このまま王都まで貫通させられちゃ先陣切った俺らが馬鹿にされるじゃねえか」
「通りでこっちの守りが薄くなってきた訳だ。俺ら完全に舐められてるぜお頭」
左目が潰れた狼が唸りながら先頭を行くウォルフに少し近寄り、未だに黙って思考を巡らせる横顔を一瞥する。何も言わずに少し早くなったウォルフに合わせ、後続も少しずつ足を早めながら何かを察する。
「1番王都から近い集落はどこだジャレン」
「ここから俺たちの脚で走り続けて半日。そこに名も無い集落がある」
「先導しろ」
ベルベットから下された命令は王都への夜襲により緊張を高める事だったが、ウォルフの言葉に少し間を空けてジャレンは頷く。
先頭の変わった隊列は少しずつ進路を左に逸れて走り始め、遥か遠くから微かに見える陥落した砦から上がる煙を横目に、新たな目的地である名も無い山の中にある集落へと向かう。




