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1.4.2  作者: 雨宮祜ヰ
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第2の心臓

 どよめく王城の中を休暇途中だった騎士たちが忙しなく歩き回り、いよいよ戦争の準備が進められていると実感が湧いてくる。ピリッとした空気に背筋を伸ばしてから襟元を正し、怒鳴り声が漏れて聞こえるドアを開く。


「どうして王は突然宣戦布告をなされのだ!」


「なぜ誰も相談を受けていなかった! 我々のような大国に囲まれた小国が一体どこに勝てると言うのだ!」


「セブンスターを侮るな! 我々には大国から独立した実績がある、ここまで生き残ってきたことがその証明でもあろう!」


「守ることは何度も前例がある、だが攻めることはセブンスターであろうと我々も測れていない」


「ご、ごめんなさい。わわ私たちが……情けないばかりに」


 入って来た事も気付かれないほどに覇気のない猫背の少女に、威厳と貫禄のある大臣たちが一斉に立ち上がって両手を後ろに組んで背筋を伸ばす。

 それに何度も頭を下げて応える姿に大臣たちは慌てふためき、何度も何人も頭を上げるように促すが、少女は小さくなりながら謝って席に着く。


「申し訳ございませんガゼル様。我々の心無い言葉は本意ではなく、皆不安と動揺からのものなのです」


「あ、あの、大丈夫ですので。わわ、わ私たちと父の代は、国内の野盗としか、た。戦ったことがないので」


「我々は信じておりますとも、セブンスター様の強さは。こうなってしまった以上、仕方がありませんな」


「わ、私たちも。全力を尽くしま──」


「何をしている! 早く準備を進めろ、こんな所で話していて国が取れるのか」


 国民にも苦境を強いる戦争の足音に落胆する大臣たちをなんとか鼓舞しようとガゼルは言葉を絞り出すが、荒々しく怒鳴りながら部屋に来た国王に一蹴される。ここ数年の内に人が変わってしまった国王に誰も口答え出来ず、皆逃げるように部屋から飛び出していく。


「この栄えある騎士の国が小国のままなのはセブンスターを始め、それをまとめるセブンスター第1席のお前が情けないからだガゼル。この戦争で役に立たなければ、口答えをした大臣たちのように一族皆殺しだ」


 1番最後に部屋を出かけていたガゼルは話し始めた国王の言葉に立ち止まり、最後までしっかりと聞いて何も言わずに立ち去る。

 廊下に出てから早歩きで国王から離れると、大臣らは一様に口を揃えて愚王と罵り始める。もちろん誰にも聞かれない事を前提としているが、それでもガゼルはその悪口の1つには入らなかった。


 ただ1人大臣たちとは分かれて練兵所に入り、藁で作られた訓練用の人形に腰の剣を振り抜く。大きくない腕には不釣り合いな剣が寸分も違わぬ見事な一閃を走らせ、ズドンと切れた藁人形の上半身が落ちる。


「苛立ってるね。いや、悲しいのか」


 12の子どものように小さなガゼルよりも頭1つ分だけ背の高い、これまた小さな少女が練兵所に顔を出し、ガゼルの斬った藁人形の残った下半身に拳を叩きつけ、地面に刺さった杭ごと吹き飛ばす。


「悲しい時、悩んだ時、迷った時。筋トレしたら全て吹き飛ぶ。筋肉は全てを解決してくれる」


「そそそ、それは……あなただけです」


「珍しく君の言葉に刺がある、私で良ければ聞こうじゃないか」


「い──今は、ひひひとりにしてください。 せ、戦争の準備、しないといけないのでは?」


「心配はいらないさ、もう進めさせているからね。でも君が1人で居たいなら、私は尚更君の傍に居てあげたいかな」


「けけけ──結構です。わ、私の傍に居ても、良いことないですから」


 何とも聞いている方が照れてしまう言い回しに腕を振り回した拍子にガゼルの剣がすっぽ抜け、弧を描いて少し遠くの藁人形に突き刺さる。

 剣の行方を追った2人の視線の先にあった藁人形の傍らに居た騎士が腰を抜かし、大口を開けて思考と共に体も停止する。


「ご、ごごめんなさい。おぁおぅおぅ──お怪我は、ななないですか」


「じっ、準備が、整いましたので。出撃のご報告を」


「すす、すぐに合流するので。お、ぉお伝えください」


 何度も頷くだけで言葉を発せない騎士がよたよたと戻って行き、ガゼルもすぐに出撃の準備をして城から出る。

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