造花⑦
「あなたたちは何をなさっているのです! 自分の犯した事の重大さを理解されているのですか!」
「してるわよ」
「いいえされていません! 隣国の人間が兵を興したと報告がありました、獣人による襲撃を受けたとのことで!」
「まぁそれくらいにしてやれキサラ、今か後かの違いだ。結果的には狼牙が先陣を切ったんだ、獣牙も直ぐに動き出す」
「俺の故郷を見に行ったんだ、ミアハもケルシーも悪くない」
「あなたたちは口を挟まないで下さい! 私は王女であるミアハ様にその自覚を問うているのです!」
お手上げと言わんばかりに半笑いで手を挙げて部屋から姿を消したベルベットに続き、戦争の準備が進められていると言う中庭に顔を出す。次々と備蓄庫から運ばれる兵站の列が途切れるのを待ち、間を素早くすり抜けて指示を出すアルダンの隣に立つ。
「王とジュリスか、キサラはああなったら長いな」
「ふふっ、全くだ。あいつは私だろうが龍人王だろうが構わずに怒鳴り散らしてくる、お前も気を付けろよジュリス」
「そうだ、お前の所属部隊がまだ決まってなかったよな」
持っていた紙の束をぺらぺらとめくり続けて数秒、ピタッと止めてジュリスの眼前に突き出す。
「先鋒2000の中の奇襲部隊、先陣を切るウォルフ隊」
「ウォルフ隊は厳しいぞ、遅いやつから置いてかれるからな。その代わり攻め込む速さは狼牙でも屈指だ」
「流石に狼の脚に着いてけってのはアリなのかベルベット!?」
「死ぬ気で走れ、じゃないと死ぬぞ。お前がケルシーの穴を埋めて来い」
「うちの女王の許可も出たし、頑張れよ。お前が空けた穴はでかいかもな」
カカカッ、と笑い飛ばして通りすがる隊ひとつひとつに声を掛けて回る忙しい背中を呼び戻せず、本気で行かせる気のベルベットは行くぞと言って再び歩き出す。
「本気でやらせるのかよベルベット!」
「やってくれるなジュリス。私たちを蹂躙し虐げようとする人間を、1人として逃がさずに殺してくれ」
「……分かったよ。お前が望むなら何でもやるさ」
何故か少しズレていたベルベットの右目を隠していた前髪の隙間から覗いた瞳と目が合うと、頭の中がもこもこして自分が何を考えているのか、何を口に出したのかもあやふやになる。不敵に笑った口角さえも、脳の奥底に染み付いたもこもこで掻き消される。




