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1.4.2  作者: 雨宮祜ヰ
12/52

いし

 ゲルダとの訓練が始まってから2ヶ月。この2ヶ月の間は徹底的に足腰を鍛えられ、毎日山を登っては下りを繰り返し、休みなくぬかるんだ湿原を走らされた。それらを乗り越えてやっと訓練用の木剣を握らせてもらい、同じく木剣を構えるゲルダと向かい合う。


「今日は呆気なく終わってくれるなよアンジェ」


「言われなくても!」


 鋭く飛び出したアンジェの突きから繋がれる連撃を、ひとつひとつ丁寧に捌きながら後退する。2人の足の動きが完全に一致していたが、ゲルダが引いた足を捻ってアンジェの攻撃の隙を突いて体を当てて弾き飛ばす。

地面にお尻から着地して滑ったアンジェは直ぐに立ち上がって再び攻撃するが、またも同じように完全に合わせられては、隙を突かれて跳ね返される。


「なに、やり辛いんだけど! 見覚えのある剣だし……からかってる?」


「泣くんじゃないぞアンジェ、その歳にしてはうちの騎士相手に5回に1度は勝てるんじゃないか?」


「泣いてない! やりにくいんだから仕方ないでしょ」


「私の剣はジェーダン様に教わったものだからな。お前はそれを真似た剣だから私との相性は当然最悪だ。だから私は完璧に合わせられるし全て見切っている」


「お父さんは私たちにさえ教えてくれなかったのに、何でゲルダが教えてもらってるの」


「私だって2ヶ月しか教われてない。あの人は2ヶ月だけしか軍に滞在しなかったからな。お前たちは何年も見て貰えてたんだろ、私にはそれが羨ましい」


 不毛な言い争いをしながら打ち合う2人のすぐ近くで、見知らぬ赤髪の女と、整い過ぎたが故の怖い顔をした女が立っていた。

2人とも似たような軍服を身に纏っているが、どちらも個性的な着こなしをしている。だが、どちらも羽織ったコートは全く同じものだった。

 あまりの鬱陶しい熱視線に痺れを切らしたのは、ここまで何もかもが気に食わないアンジェだった。


「何ずっと見てるの、未熟だって笑えば良いじゃん」


「え? いやそんなんじゃないよ。騎士王二世って言われる新しい勇者が居るよって言うから呼ばれて見に来たんだけど。今の所うちの軍師様はがっかりしてるなーって、だから喋りかけれなくて」


 たばこを咥えた赤髪の女は見た目よりもずっと幼い声音と口調で弁解を始め、隣の低い軍帽を被った黒髪の女に何度も視線をやる。話し掛けられたにも関わらず黒髪の女は微動だにせず、睨みつけてくるアンジェを睨み返したまま舌打ちをして背を向ける。

歩き出した黒髪の女を追いかけようと赤髪の女が走るが、突然吹いた風に袖を通さずに肩に乗っていただけのコートが飛ばされたのを必死に追い掛け、やっと捕まえてから恥ずかしそうにこっちを見てから遠くに行ってしまう。


「彼女らは帝国6将の内の2人だ。私も直接話したことは無いが、同盟国であるヴァンゲーテン帝国からの客人だ。炎髪の魔道士、ヘリオライトのミセル。神将、蛍石のティアグラート。どちらも18歳ながらも大陸最強である帝国の主力。帝国建国以来の最強と言われている」


「あれが? 特に赤髪の方は抜けてたし、黒髪の白ニーハイの方は華奢過ぎじゃない?」


「ミセルは戦場に出ると性格が変わるし、ティアグラートは軍師にプライドを持っているからな。ティアは策略を巡らせたった3人で3000が守る砦を陥落させた怪物だ。だが軍師ながら武にも長けていて、私たち聖騎士とも良い勝負をするだろうな」


「2人の事詳しいけど、仲良いの?」


「私は元々帝国出身でな。ジェーダン様に連れられて今のブロッケン卿に引き取られ、金色の鎧と共にセブンスターを継承した。だから帝国内部の事情にはある程度詳しい」


「ゲルダって結構大変だったんだ。だからこんなに優しいのかな、苦しさとか知ってるから」


 唐突に珍しく憎まれ口を聞かないアンジェから顔を逸らし、むず痒そうに咳払いして引かれた白い線の上に戻って木剣を構え直す。

同じく白線の上に立ち直したアンジェと打ち合いを再開する。

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