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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

メキッ、私の女子力強すぎ・・・?〜お嬢様のためならドラゴンだって退治します〜

作者: benibuta

「先日、森で狐の親子を見かけました。とてもモコモコしていて可愛いです」

「フフフ、狐はモコモコして可愛いのね」


 ベッドで臥せているサラお嬢様に今日森であった出来事を話をしております。

 体調が優れず、森であった出来事を仕事が一段落した時にお話させていただくのが日課になっております。


「私も、アリアみたいに元気に、力が強ければ外にも出れるのでしょうけど・・・」

「大丈夫です。きっとよくなります!」


 お嬢様に笑いかけると、優しく微笑んでくれます。

 

「それでは、続きの務めをしてまいります」

「ええ、また今度ね」


ーーーーー


 屋敷の掃除をしているとシルビア夫妻の声が聞こえてきます。


「誰か、誰か! ああ、サラが!!」


 部屋にダッシュで駆けつけると、お嬢様がぐったりとしています。

 

「タイラー先生を呼んできます!」

「お願い!」


ーーーーー


「やれるだけのことはしました。しかし、後3日が限界です」

「先生、何とかならんのですか」


 タイラー先生の治療のお陰で少しお嬢様の体調は戻られました。

 それでも呼吸は浅いままです。 


「もしもヴィラクート山に生えているという世界樹の葉を採ってくることが出来れば或いは・・・」

「しかし、あそこにはドラゴンがいるじゃないですか」

「出来る限りのことはしますが、ご覚悟してください」

 

 ドラゴンの噂は私も聞いたことがあります。

 幾多の冒険者がドラゴン討伐を目指し、破れていったそうです。


ーーーーー


「はぁ・・・」


 本日の務めが終わり、使用人部屋に戻りました。

 タイラーさんの話を聞いて目の前が暗くなりました。

 お嬢様の命は後3日。

 力がちょっと強いだけの私では何も出来ません。せめてもっと力が強ければ世界樹の葉だって採ってこれるかも知れないのに。


「どうか女神様。何卒お嬢様の命を助けてください。そのためなら、私、何でもします」


 机の上にある女神像にお祈りを捧げます。

 毎日、毎日、ずっとお嬢様の体調が良くなるようにお祈りを続けてまいりました。

 祈りを捧げ、布団に入ってからも強く強く、祈りを捧げました。


ーーーーー


「えっ、ここ、どこ!?」


 目を覚ますと見渡す限り真っ白な空間にいます。


「アリアさん、こんばんわ」


 目の前には、女神像の生き写しのような女性がいらっしゃいます。 


「あっ、貴方様はもしかして!」

「ええ、女神です」


 女神様は私ににこやかに微笑んでくれます。


「ここはどこでしょうか?私、死んじゃったんですか?」

「違います。あなたの清き願いが私を呼び寄せました。今日は力を授けるために参りました」

「力ですか・・・?」


 正直私は、力はいらないからお嬢様の病を直してほしいです。

 

「ええ、あなたの<女子力(物理)>を強化します」

「<女子力(物理)>ですか?」

「そうです。ドラゴンも討ち倒せる女子力を差し上げます」

「ありがとうございます!」


 よく分からないけど、これで世界樹の葉を手に入れる算段が立ちました。

 精一杯やらせていただきます。


ーーーーー


 目を覚ますと見慣れた使用人部屋におります。

 そして見慣れないものを見つけました。手の甲に紋様が描かれています。

 やっぱり夢ではなかったようです。


「女神様、お力を授けてくださりありがとうございます」

 

 机の上の女神像にもう一度跪き、祈りを捧げました。

 こうなったら、やることは決まっています。ドラゴン退治と世界樹の葉を採ってきます。


ーーーーー


「旦那様、奥様、おはようございます」

「おはよう、アリア」

「おはよう、アリアちゃん」


 庭先にいらっしゃったご夫妻は昨日の一件もあり、お二人とも元気がありません。

 お嬢様にはタイラー先生が付き添ってくれております。


「実はお話したいことがございます」

「ん?急にどうしたんだい。そんな改まって」

「まず、この紋様を見てください」


 手の甲を差し出すと、ご夫妻はまじまじと私の甲を見ます。


「この紋様はどうしたのかしら」

「実は昨晩、女神様から女子力を授かりました!」

「「え?」」


 お前何言ってんだという顔をされました。

 無理もありません。なので論より証拠です。


「見ていてください」


 近くの手のひらサイズの石を拾い、一抱えはある木の幹に向かって投擲します。

 ビュンッ。

 聞いたことのないような鋭い音を立て、木の幹に穴が空く。ご夫妻の口も空く。


「この力で世界樹の葉をとってきます!」


 ご夫妻の目の色が変わります。

 

「アリア、本当に向かうのかい?」

「はい」

「サラのこと任せたわ」


 奥様がぎゅっと私を抱きしめます。

 お勤めをしっかり果たします。


ーーーーー


 お屋敷から真っ直ぐ最初の目的地に到着しました。

 ドラゴンの生態と目的地のルート確認が必要です。冒険は冒険者ギルドに聞いて見るのが一番です。


 中に入ると当然ながらメイド服を着た方はおりません。見たこと無いような変顔をした、ゴツゴツした殿方がいますが気にしちゃいけません。真っ直ぐ受付カウンターに向かいます。


「ヴィラクート山の登り方とドラゴンについて教えてください」

「おいおい、譲ちゃんがあの山に登るのか? 怪我するだけだからやめとけ」

「お嬢様の命が危ないんです。教えてください」

「そうは言ってもよ。 譲ちゃんみたいに可愛らしい子には似合わない場所だぜ」

「似合う所を見せれば、教えていただけますか?」

「ああっ、いいぜ」


 部屋の中央の丸テーブルが空いている。そこに移動し、テーブル中央に肘を乗せる。


「私に勝ったらお酒を奢ります。さぁ、私と勝負する方はいませんか?」


 周囲が煩くなる。口笛のようなものも聞こえる。


「いやぁ、酒を奢ってくれるなんて気前がいいな?」


 体格が普通の殿方がテーブルに肘を乗せる。


「手がテーブルについたら負けです」

「いいぜ、ゴー」


 力を込めているようだが、圧は感じられない。

 にっこり微笑みながらゆっくり手を倒す。


「はい、次の方」

「俺が相手だ!」


 笑顔を張り付かせて、手を倒す。


「次」


 ギルド内の注目が一段と高まる。


「ガハハ、譲ちゃん俺と勝負だ」


 骨兜を被った、筋肉隆々の巨漢。

 横の面積は私の3倍近くある。


「よろしくお願い致します」


 私を倒そうと力を込めてくる。あっ、この人強い。


「ほう、これで倒れんか」

「あなたも強いですね」

「ガハハ、力比べなら負けんぞ」


 でも、私を倒す程ではないわね。

 身体を前傾姿勢にしてそのまま押し倒す。


「「ウォォォォ」」」


 周囲がざわめき立つ。


「譲ちゃん強いな!ワシの完敗だ」

「ええ、力だけなら自信あります。私が一番ってことでよいのかしら?」


 周囲を見渡す。異論はない。

 受付のおじさんも口をあんぐり開けている。


「ゴンザレスを倒すとはやるじゃねぇか。俺達もドラゴン退治に向かうんだ。一緒に来ないか?」

「はい、お願いします!」


 渡りに船とはこのことですね。

 何だか強そうだ冒険者に誘われちゃいましたよ。

 これで道案内であったり、ドラゴンの弱点について教えてもらえそうです。


「ガハハ、譲ちゃんよろしくな」

「あらあら、よろしくお願いしますね」

「よろしく」


 先程のゴンザレスさん、他、魔法使いの格好をしたお姉さんと、エルフの女の子から声をかけてもらった。


「よろしくお願いします!」


 お嬢様、私、必ず世界樹の葉をとってきます。


ーーーーー


 早速、冒険者の皆様とドラゴン退治に向かっております。

 パーティーリーダーのレオンさん。ハリネズミみたいに尖った髪の毛が特徴です。

 骨兜を被った、バーサーカーのゴンザレスさん。

 魔法使いのカリンさん。胸がとても豊かです。羨ましいです。

 精霊使いのペルラさん。親近感を覚える胸です。


 皆様とてもフレンドリーで、和気あいあいと向かっております。


「あの、ドラゴンってどんな生き物なんですか?」


 ドラゴンのいる山の麓に向けて移動中です。


「ん、一言で言えば最強のモンスターだな」

「どうして最強なんですか?」

「まず、図体がデカイ。俺達の10倍位はある。あの質量から振り回された攻撃を喰らえば、無事で済む人間はいない。しかも全身が固い鱗に覆われていて、生半可な攻撃は通らない。その上、防御が困難なブレスが吐けて、空を飛んで一方的に攻撃出来るんだ。そりゃ弱いわけねえよ」

「えっ、それどうやって勝つんですか?」

「人間には人間様の戦い方があるって話だよ」


 レオンさんが歩みを止めると岩に剣が刺さっている。

 神官の服を着た、おじいちゃんがいる。


「まずはドラゴンを狩るに相応しい武器の確保ってやつだ。 神官殿、勇者診断をさせてほしい」

「挑戦者はあなたですか」

「いや、別のものだ。2名頼みたい。骨兜とお譲ちゃんだ」

「分かりました、ではお代を頂戴しとうございます」


 小袋を神官に差し出し、懐に収める。


「じゃあ、ゴンザレス、任せたぞ」

「ガハハ、任されたぜ」


 腕をまくりながら岩の前へ向かう。


「あっ、あの、勇者選定ってなんですか?」

「あの剣が抜けたらそいつが勇者様ってことになるんだよ。後、抜けたら武器が貰える。俺達は武器が欲しくて挑戦してるわけだがな」

「私が言うのもなんですが、勇者ってもっとこう、厳かに決まるんじゃないのですか?」

「昔はそうだったらしいぜ。ただ、誰も抜けないから観光名所と化してるわけだ。まずはトップバッターのゴンザレスからだ」


「いくぞ。フンっっっっっ!!!」


 顔を真っ赤にして歯を食いしばっているが、ピクリともしない。プルプル身体が震えている。


「がぁぁぁ、駄目だぁ」

「いやぁ、残念でしたねぇ。またのご来場お待ちしております」


 ゴンザレスさんが膝をつき、肩で呼吸している。


「次、譲ちゃんの番だぜ?」

「ええっ!? 本当に私やるんですか?」

「俺の見立てじゃ、譲ちゃんならいけると思うんだがな。とりあえず試しにやってみな」

「失敗しても、知りませんよ」


 剣の前に立つと、無骨な柄が真っ先に目に止まる。剣はどういうわけか、しっかり岩に食い込んでいる。

 女神様、力をお貸しください。


「メイド服を着た挑戦者は初めてですな」

「私も剣を握るなんて初めてなんです」

「言い伝えによれば、この剣は持ち主を選ぶそうです。新の勇者は力を込めずに抜けるそうです。ささっ、まずはやってみなされ」


 言われるがままに、右手を柄に手を添え、少し引っ張ってみる。ビクリともしない。


「私、勇者じゃないみたいですね。力を込めないと抜けなそうです」

「いやはや残念ですな。では、力を入れてみたらどうなりますか?」


 柄を両手で握り引っ張る。ピクリとしない。

 重心を腰に下げる。力を込めて引っ張ると手応えがある。


「ええええぃぃぃ! あいたっ」


 抜けた。踏ん張りが効かなくなって尻もちついたけど抜けたよ!

 あんぐりと、仰天しながらこちらを見る神官様。


「ゆっ、勇者様の誕生じゃ」

「よっしゃ、ドラゴンスレイヤーゲットだぜ」

「予定通りね」

「まぁっ、すごいわぁ」


 レオンさんと、ペルラさんは、さも当然のように。

 カリンさんはニコニコしながらパチパチしている。

 剣の長さは私の身長程あり、長方形のような形をした重量感のある無骨な剣です。試しに剣をぶんぶん振り回してと、見た目に関して軽い手足のように使える剣です。


「あっ、あの、この剣はどうすればよいかですか」

「勿論、お前のもんだ。ドラゴン退治で使うからもっとけ。文句はないよな?神官様よ」

「えっ、ええ。もちろんですとも。 勇者様、お名前を聞かせていただけませんか」

「え? 私、勇者じゃないですよ。やだなぁ。 暫くこの剣使わせていただきますね。皆さん、さぁ、行きましょう!」


 話が面倒くさくなりそうなので、神官様のお話は聞かなかったことにする。

 手続きも緩かったし、断るのもきっと緩いはずだわ!


ーーーーー


「ドラゴンってとっても大きいんですね」


 岩陰に隠れ、眩しい程の財宝の前でとぐろを巻いて眠っている。

 小山のようになっている。身長は私の10倍位だろうか。


「狩りの時間だ。作戦は事前の通りだ。俺とゴンザレスがドラゴンの注意を引く。カリンとペルラはサポート。アリア、お前がドラゴンをぶった切る。なぁに、簡単な話さ」

「腕がなるのぉ」


 カリンさんは目を閉じて精神統一を始めている。

 ペルラさんは懐から小瓶を出している。


「それじゃあ、やるぜ」

「ガハハ」


 二人が走り出す。

 ドラゴンが目を覚まし二人を視認する。


「ギャオー!!!」


 大きな尻尾を振り回す。

 すんで所で回避する二人。二人は左右に分かれる。

 ドラゴンは仰け反るような姿勢をとって喉を大きく膨らます。

 ブレスの予備動作だ。


 咄嗟に傍の岩を持ち上げて、力ませにぶん投げる。


「トリャー!!!!」


 岩は口の中に入り、ドラゴンは目を白黒させる。

 羽を広げて飛び立とうする。


「グラビティ!」


 飛び立ちかけたドラゴンはカリンさんの魔法で地面に縫い付けられる。


「アリア、ゴー!」

「はい!」


 ペルラさんの合図で駆け出す渡す。


「シルフ、彼女に羽を与えて」


 シルフが私に纏わり付いて身体が羽のように軽くなる。

 ダッシュが加速する。


「ジャンプ!」

「はぁぁぁぁ!!!」


 重心を下げてジャンプする。10メートル程飛び上がる。眼下にドラゴンがいる。

 ドラゴンスレイヤーを振りかぶり、渾身の力で振り抜く。

 ドラゴンの首が宙を舞う。地響きと共に地面に落下する。


「よっしゃ! アリア、よくやった」


 首に手を回し、レオンが私の頭をワシャワシャする。


「あはははは」


 変な声が出てくる私。

 みんな無事。世界樹は目の前。早く探さなきゃ。


ーーーーー


「ガハハ、こりゃぁどうやっても全部持ち帰れないわい。いやぁ酒が楽しみだ」

「お前はアリアを見習え。あっちは無欲すぎる気がするけどな」


 金銀財宝の更に奥で、僅かに発光する私の身長程度の気がある。

 名前と比べて小さい。まだ苗木なのかも知れない。

 葉っぱを3枚、なるべく丁寧に枝から抜く。


「まだ小さいのにごめんね」


 葉っぱを採ったら革袋にしまう。


「みんな、ありがとう! 私、お嬢様の元に帰ります!」

「おう、達者でな!ガハハ」

「お前も気をつけろよ」

「また一緒に冒険しましょ」

「バイバイ、アリア、サービスよ」


 ペルラがシルフを遣わさせてくれた。身体が羽が生えたように軽い。

 お嬢様、もうちょっとだけ辛抱ください。きっと一緒に野山で遊べますから。


ーーーーー


「旦那様、奥様、只今戻りました」


 22時過ぎにお屋敷に到着しました。

 バンバンとドアを叩き続ける。


「世界樹の葉は?」

「こちらに」


 革袋からうっすらと発光し続ける葉っぱを見せると、奥様は目を大きく見開き、口元を手で押さえる。


「あなた、アリアが戻ってきましたよ」

「おおっ、本当か」


 お嬢様の部屋に駆け込む3人。

 タイラー先生に葉っぱを差し出す。


「先生、よろしくお願いします」

「任せてくれ」


 乳鉢を取り出すと葉をすりつぶす。水を入れる。


「アリア・・・」

「これできっと良くなります。ご安心ください」


 お嬢様の手を両手で握る。

 先生がお嬢様の口元に水を注ぐこむ。

 か細く荒かった呼吸が徐々にゆっくりと大きな呼吸に変わってゆく。


「アリア、あなたはこの子の命の恩人よ」

「君の勇気に感謝する。ありがとう」


 旦那様と奥様が互いに身を寄せあっている。噛み締めあっている。


ーーーーー


「アリア、こっちに来て」

「はい、お嬢様」


 あの後、お嬢様はすっかり元気になられました。

 今まで外に出られなかった分、こうやって一緒に野山へ駆け巡っております。


「冠を差し上げます。頭をこっちに出して」

「ありがとうございます!」


 お嬢様に跪き、白詰草で作った冠を戴く。


「これからも一緒にいてくれますか?」

「勿論です。ずっとずっとご一緒させてください」


読者様へ


読んでいただきありがとうございます。

76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。

より面白い物語が書けるように精進してまいります。


また次の機会にお付き合いいただけたら幸いです。

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