1
3日後。
俺たちは王都についた、王都という割にはちょっと大きい町くらいのサイズに見える。
町には入りたい放題だが、城は城壁に囲まれている。
水をはった堀と高い壁、堀にかかった橋を渡ると大きな木製の門があり、兵士と思われる人たちが出入りチェックしている。
結構高い壁の上には人が立っていて辺りを見回している。
そろそろ日が暮れてきた。
よし、やるか。
ここまでだらだら歩いてきたが俺は一切疲れていなかった、ミスティアはどうなのかわからないが平気そうな顔をしているので平気なんだろう。
今夜の内に決着をつける。
空には3つの巨大な月が浮かんでいた、そのうちの一つは真っ赤に輝いている。
流石に王都ということもあって結構人が居る。
ミスティアの言うとおりこの世界の人間は今の所全員女の姿をしている。
検問のようなところに居るプレート鎧を着て背中に刃のついていない槍のような武器を背負っている人もよく見ると女性のようだった。
それにしてもロリとティーンと大人のお姉さんは居るのに、そこから上がいきなり皺くちゃの老婆になっているのはなんなんだろうか?
若い期間が長いとかそういうことなんだろうか、もっともNNN72確保にはあまり関係のない情報だろう。
「ではロイ様、地下道から城内に入れます。城内にはこちらの手の者がかなり前から侵入して居ますので速やかに王の寝室に行けます、寝室までしっかり案内しますのでついてきてくださいね」
「わかった」
そう言うとミスティアは片手をあげた、手を閉じたり開いたり指を立てたりしている。
「行きましょう」
「今のは?」
「城内の者とのやりとりです、片手でやる手話で慣れれば普通に会話するように話せるようになりますよ」
ミスティアが動き出した。
ロイも続く。
2人は、なんの障害も無く王様の寝室に到着した。
周りに人は居ない。
巨大なベットの上で20代前半くらいの女性が眠っていた。
近くの机には少量のアクセサリーが置いてある。
……ただの人間にしか見えない。
本当にマジックアイテムに憑依されているのか?
「さあ、やっちゃってください」
「こいつ本当にNNN72なのか? ただの人間にしか見えないが、それにこいつ寝てないぞ。寝たふりしてるだけ」
俺のその言葉と同時に部屋の扉で硬い金属音がした、どうやらロックされて閉じ込められたようだ。
それとほぼ同時に寝ていた女が起き上がってきた、その手にはナイフが握られていてこちらに向かってくる。
俺はナイフを叩き落とすと、女を抱えて顔の前に手をかざして言った。
「睡眠」
俺のその言葉と共に今度は本当に眠りだした。
抱えた女をベットに戻す。
「よくぞここまで侵入できたものだな」
どこからともなく女の声がした、というかこの世界に男は俺くらいしか居ないらしいので女の声なのは当たり前なんだろうが。
「こいつは本物じゃないな、偽王様だ」
「正解、偽物5号だよ。これよりその部屋は毒ガスで満たされる。脱出口は無い、命乞いでもしてみるかね?」
ミスティアが慌てたようにこっちを見てくる。
「出口がない? じゃあ作ればいいんだよ。この声の主の居場所もなんとなく気配で察せる。この声を出しそうな者の気配を探ればいい」
そういうと俺は壁に体当たりした、壁は木製のようだが間に分厚い鉄板がある。
俺は鉄板を軽々とぶち破って隣の部屋に移動した。
隣の部屋は結構広くて、30人くらいの正規兵と思われる者たちが居た。
「睡眠」
「妨害」
7人くらいが同時に妨害を唱えたようだ、俺の睡眠の魔法が7人がかりで妨害される。
7人がかりでかけられた妨害魔法は単純な足し算ではない。
複数人で同じ魔法を使用することを前提として組まれておりその効果と威力は大きく上がっている。
それでも俺の睡眠の魔法を妨害できず、威力を下げることすらできず、魔法使いと鎧を着た兵士を眠らせた。
部屋に居た全員が睡眠状態になった。
俺がぶち破った壁から偽王様を抱えたミスティアが出てきた。