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ソフィアは走っていた。
目指す場所は城門の中の正面玄関、背中に居るスライムは背中に貼り付いて隠れてもらっている。
正直できるかどうか自信無いがここが大勝負である。
多分、人生最大の大勝負。
みんな王様に偽物が居るなんて知らないだろうとソフィアは睨んでいた。
突如現れたロックゴーレムの軍勢に引き続いて現れた人影にクレイドル城の兵士たちが警戒し弓矢を向ける。
だがその姿が王様だと指揮官が気がつくと慌てて弓矢を下げるようにと伝令を出す。
兵士たちは一斉に弓矢を地面に向ける。
「ソーフィアー王様、何故ここに。ここは危険でございます」
「私なら大丈夫よ、私をロックゴーレムのところに連れて行って」
「え?」
「聞こえなかったのかしら?」
「それは危険で」
「聞こえなかったのかしら? もう一度言いましょうか?」
「はい、すぐに案内いたします。ただ私だけでなく私の部下が全員付いていくことをお許しください」
ロックゴーレム達が破壊されては高速で再生しつつ暴れている。
いくら兵士たちが強いとはいえ無限に再生するロックゴーレムと一つしか無い命では、戦闘能力が拮抗していると死んだら終わりの方は戦いづらい。
ロックゴーレム達は身を守るということを一切考慮せず、完全破壊されてでも指一本でも折れたら儲けものとでも言わんばかりに突撃してくる。
当然そんな無謀な戦い方をするロックゴーレムは次々に破壊されていくが破壊されたボディが崩れて地面に付くまでにはもう再生が終わっている。
そして戦いながら少しづつ人間の戦い方に対応しつつあり、どんどんロックゴーレムが優勢になりつつある。
増援をもっと呼んでこないとロックゴーレムの進撃を止められないし、根本的には魔法が使える者を呼んできて再生を止めてもらわなければならないだろう。
2階の小さなバルコニーにソフィアが現れた。
「モンスター達よ、止まりなさい」
ソフィアが一言、言うとそれでロックゴーレム達は動きを止めた。
モンスターが人の言うことを聞くなどということは今まで聞いたことがない。
だが、実際に王様の一言でロックゴーレム達は動きが止まった。
王様が何かしたことは確かだ、今までも王様ことNNN72が常識はずれなことを散々してきたから最早驚かない。
「皆のもの、安心せよ。この城を襲ったモンスター達は王である余の一言で動きを止めた」
ソフィアが高らかに宣言する。
1階にいる兵士から歓声が上がった。
攻め込むように指示したのもソフィア、止まるように指示したのもソフィアである。
完全に自作自演だがこの場はしょうがない。




