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「さて、これからどうするかね」
マリーアリーとその仲間たちを撃退後、俺はテーブルについた。
長方形のテーブルの向こう側にミスティアと偽王様が座っている。
なんか普通に偽王様が席についているんだが、俺があの手品師と戦っている? 間に何かあったのだろうか。
「ええっと、まず自己紹介しようと想います」
偽王様が挙手して発言した、そういえば名前を聞いてない。
「まず私の名前はソフィアといいます、王様に似ているということで偽の王様として目立つところに居るという任務がありましたが、本物のクレイドル王国の王様というのは私も一度も会ったことがないので、本当に似ているのかどうかはわかりません。それでええっと、長いものには巻かれるのが私のモットーなのでできれば殺さないでもらえるとありがたいかなと、知ってることは全部話しますんで、なんなら荷物くらい持ちますんで、馬車の運転もできますし」
ミスティアがじっとこっちを見ている、顔の上半分、唇の上から額までを巨大な目が描かれた布で覆っていて表情はわからないが、何故かちょっと嬉しそうにしている。
というか、この国の名前ってクレイドル王国というのか。
今まで国名すら知らなかったぞ。
俺は偽王様ソフィアを見ながら言った。
「危害を加えてこないどころか協力するというのならば殺したりはしないさ、俺は暗殺の依頼を受けて完遂したこともあるが……一貫して任務遂行の為に殺しておいたほうがいい相手以外の奴は殺さなかった、だからソフィアを殺すつもりはない」
「おお、私のことを信用してくれるのですか?」
信用するなどとは一言も言ってないのにすっかり信用する流れになっている。
このままだとソフィアのペースで話が進んでしまう。
俺は返事を返さず、黙った。
俺が何も言わないのを見てソフィアよりミスティアの方が焦っているようだった。
2人はすっかり友好関係を築いているようだ、ミスティアは本気でソフィアの身を案じている。
勿論、ミスティアが精神操作されているなどということはない。
それなら一発でわかる。
ソフィアは魔法ではなく純粋な話術、身振り手振り、表情、感情の起伏、そういうものを駆使してこの短い間にミスティアと友好関係を築いたのだろう。
ソフィアがそう言ってから5秒、辺りを沈黙が支配した。
誰も口を開かない5秒は長い、ソフィアがゴクリと喉を鳴らす音がした。
一言返事を間違えればここで殺されるのではないかという恐れの中に確固たる自信がある、戦闘力は無さそうだが無能な相手ではない。
危ない相手だが重要な手がかりだ、使えるものは赤でも黒でも使っておこう。
俺は笑顔で言った。
「信用してくれといっている相手を信じないのは先に裏切っているのと同じだからな、余程の事情がない限りは裏切り者にはなりたくない。ソフィア、君のことを信用しよう」
ちょっともったいぶって、時間をかけてそう言うと俺は手を差し出した。
ソフィアは力強く俺の手を握り返してきた。




