2
「ミスティア、そいつは?」
「あのままだと毒が広まりそうなので、とりあえず連れてきちゃいました」
「ああ、じゃあ俺はそれっぽいところに突撃してくる、自分の身は守れるかな?」
「もちろんですとも」
俺は周囲を見回しなんとなく怪しいところに向かって動き出した。
周囲にはわらわらと下っ端兵士たちが集まってくるが、俺は真正面から突撃していく。
迷路みたいになっている城内をウロウロ。
その間、兵士たちが現れては睡眠魔法一発で眠っていく。
途中、広い部屋に出たと思ったら身体が雷でできたドラゴンとか巨大な骸骨とかが出てきたがそういうのは睨むだけで消滅していった。
変わった装備を持った兵士たちも出てきたが睡眠魔法だけで押し切れた。
この睡眠魔法は双方の同意がないと効かないはずなのだが、力に差がありすぎて同意無しだとNGの魔法が同意無しでもOKになってしまっている。
威力は下げようと思えば下げられるので、今後どれくらい手加減するのが丁度いいのかわかるだろう。
ちなみに現状、いちいち睡眠睡眠言っていると間に合わないので一定距離近づいたら自動的に睡眠魔法がかかるようにしている。
かすかに周囲の状況が変わってきているように感じられる、下っ端兵士達から動揺が感じられる。
この辺りに本当の王様が居るのかな?
この世界では不思議な力でみんな女になるとは聞いているが改めてウロウロしてても女しか居ないな……と思っていると少し離れたところに誰かが立っている。
睡眠魔法は届いているはずだし妨害された感じもないのに平気で立っている。
三角帽子、三編みのロング、大量の小物、全ての指に嵌っている宝石のついた指輪、大型の錫杖、たなびくマント、オーブが入った肩パット、意味もなく不機嫌そうなすまし顔。
いかにもな昔の魔法使いが出てきた。
とうとう出てきた睡眠魔法で寝ない奴、こういう奴が守っている場所ということはそろそろゴール地点かな?
「こんなところまでやってこれるとは大したものね、だがしかし、この」
「即死しろ」
俺の言葉と同時にまだ名乗ってない昔の魔法使いは倒れた。
完全に死んでいるようだ。
服も含めて亡骸は霧のように消滅した。
その場には鍵のようなものが落ちている。
それを拾って進もうとすると誰かの声が聞こえた。
「せめて名乗らせろ、この私のボディを破壊しよってからに」
少し上の方に半透明になった昔の魔法使いがふわふわ浮かんでいた。
「幽霊?」
「霊ではない、まあいいわこの魔道士チュイ・ローレンスのこと忘れるなよ、1秒たりともな」
それだけ言うと魔道士チュイは何処かに消えた。
追いかけてもいいが今はそれどころではない。
拾った鍵を見る。
先は行き止まりになっている。
「幻影削除」
俺の言葉と共に行き止まりは消えて、その向こうの扉が現れた。
扉には鍵穴がある。
魔道士チュイが落とした鍵を扉の鍵穴に差し込んでまわすと鍵が空いた。
こんな扉簡単にぶち破れるが無理やり開けると爆発とかしそうだし、鍵を使って開ければ問題は起きないと思う。
扉をよく見ると日常的に誰かが出入りしている感じはある。
鍵を使っても何か起きるような作りにすると危なっかしくて住めなくなるだろう。
扉を開けると奥に1人、誰かが居た。




