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男装令嬢の求婚  作者: じぃ
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のんびり更新していきたいと思います。

「お父様! 婚約の話はお断りして下さいといつも言っているではありませんか!!」



グリノール王国首都グリノワにある王城の一室から、少女の悲痛な声がする。



「お兄様も無事結婚し、男性が苦手な私は結婚しなくても良いという話になったのではありませんか!」



「ああ。確かに私と君の間ではそういう話になった。しかし、アンジェ、世論がそうはさせないのだよ。君は私の娘だ。第一王女だ。断っても断っても他国から婚約の話はわんさかやってくる」



「ですから!お父様がそれをお断りして下さるという話だったのではないですか!」



第一王女アンジェリカは小さな拳を握りしめて、目に涙を溜めながら訴える。



紅茶色のふわふわした髪に飴色の瞳を持つ愛らしい愛娘のその表情に王はうぅっと怯みながらも話を続けた。



「わかっておる。だからこそこの婚約の話なのだ」



「殿方と一生を添い遂げるなんて、仮面夫婦でいいと言われても無理です!触れることですらままならないのに…」



アンジェリカは男性恐怖症である。

身内以外の人間に触れられると蕁麻疹が出て、酷い場合は発熱する。

夜会に出る時は厚手の手袋を着用し、ダンスは必要最低限しか踊らない。



「わかっておると言ったではないか。この婚約証明書を見なさい」

王はでっぷりとしたお腹を揺らしながら、アンジェリカに証明書を手渡した。



「ちょっと待ってください!私の了承を無しに婚約したのですか!?」



書類には

『アンジェリカ・ソアラ・グリノールとリオン・ジェブリの婚約を認める』

と記してあり、下部には大司教のサインがしてあった。



「…え? リオン・ジェブリ…?ジェブリ家にリオンという名を持つ方はいらっしゃらないわ」



ジェブリ家は侯爵家であり、王家とも親交が深い。

先々代の王妃はジェブリ家出身である。

アンジェリカは勿論ジェブリ家の面々とも面識がある。

長男のセルゲイは第1皇子の側近だし、長女のリオはアンジェリカの執務の補佐をしている。



「それがいるのだよ」

「どういうことですか? それにいくら仲の良いジェブリ家といえども、結婚なんて絶対に無っ──」



──トントン

アンジェリカの言葉を遮るように、来客を告げるノックの音がした。



「ああ。リオン達が来たようだな」

「お父様!?聞いていませんわよ!!嫌です!絶対に婚約だなんて認めません!!拒否します!」

もはやアンジェリカの声は悲鳴に近い。



「大丈夫だから落ち着きなさい」



そんな彼女に優しく微笑み、王は自らドアを開けた。



現れたのはジェブリ家特有の群青色の髪をした男性2人。

口元に甘い笑みを浮かべるすらりとした中年の男性はアンジェリカもよく知っているジェブリ侯爵である。



「こんにちは、陛下。ご機嫌麗しゅう。この度は婚約の話を受けて頂きありがとうございます」

侯爵が頭を下げると、隣にいる青年も優雅に礼をはらう。



「こちらこそ、我が娘のために面倒な婚約をさせてしまって申し訳ない」

王は言葉とは裏腹に、嬉しそうにジェブリ侯爵の横に立っている青年に目を向けた。



「後悔はしておらんかな?」

「後悔だなんて。滅相もございません」



心地よいテノールの声を発したその青年は、父親譲りのすらりとした長身で、目鼻立ちが通った整った顔をしている。

薄い唇には柔らかな笑みが浮かべていた。

「陛下には私の突拍子の無い提案を受け入れて下さり、心より感謝しております」



そんな青年を見て、アンジェリカは固まった。



「……え?」



王は青年の肩を抱える。

「アンジェ、紹介しよう。この方が君の婚約者、リオン・ジェブリ君だ」



「……な、何を言っているのお父様? この人は…この人はリオよ?」

飴色の双方をいっぱいに広げて、リオンと呼ばれるリオを見る。



「リオ…あなた女の子なのに、どうしてそんな格好をしているの?」




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