表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/47

キャプテンの想い

  本日2度目のスタートライン


  スタートを見送った男は静かに戦士2人を待っていた。


  お膳立てをしたのが自分である以上、見届ける責任が僕にはある。


  純の走りが変わったのには直ぐに気づいた。

  ある冬の日から、あの子が陸上部に入部してから、徐々に。


  それを肌で感じる為に一度俺は彼と練習を共にした。

  一番は練習と練習との間。


  俺は観察するという目的を忘れ、彼の姿勢に学ばされた。


『常に戦士であれ』


  そう言っているようであった。


  彼の瞳は常に一歩先を〝見つめよう〟としている。


  それが〝見つめる〟に変わる時、彼は一段、階段を登るのだろう。


  ────前を見つめ続けようとする彼はあまりにも純粋な戦士だった。


  そしてまた彼女も、こちらもまさに一片の陰りもなき純度。

 

  ただ走るのが好きで

  ただ足を動かすのが好きで

  ただその瞬間が楽しくて


  そんな彼女が彼の横で天を見あげている。



  2人の戦士が帰ってきた。

  トラック二周半を走りきり、またスタート地点までの半周をジョギングしてくる。

 

  共に心が空を、同じ空をを上げている。



  僕の心にざわめきが生まれる。

  キャプテンのしての勘なのか、それともアスリートとしての勘なのか。

  いずれにしてもこの感覚は心地よい。

 


  右足は引き、前に出すのは左足。

  やや前傾姿勢でその時を待つ。


  変わらない姿。


  少なくとも横からではその変化は気づきにくい。


  低く下げられた頭部。男ながらも短い髪の毛は彼の身を隠している。


  だが、今見るのはそこではない。その若干下の部位。


  この男。自覚しているかはともかく気持ちが表面化しやすい。


(笑ってる)


  それが何の笑みであるのかは分からない、でももうじき分かるだろう。

  キャプテンとしての行いはこれで十分だ。


  あとは、────同じ部活に所属する、1アスリートとしてその走りを見届けたい。


「オン ユア マークス」


「「お願いします!!」」


  全く元気のいい事だ。

 

  呼吸さえも止まるその一瞬、全てを見つめれるのは僕だけだ。


(見届けたい、この2人の走りを、その道を)



 パァン!



  ────二度目の音が地を這った


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ