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なぜこうなった?

ご覧いただいている方、本当にありがとうございます。異性の視点って…めっちゃ難しい…何卒ご容赦を…ひらにひらに。

蒸しパンを4つ店のカウンターに置く。

女性店員に代金を言われて、金を払う。

何故か顔の赤い女性店員から、パンと一緒にお釣りを受けとると、店の前で力なく座り込んでいるエレナに声をかけた。


「地べたに座るなんて品がない。

公園で食うぞ、立て」

「おばあちゃんみたいなこと言わないでよ……

もう歩けない」


エレナは両手を俺に伸ばしている。

しょうがないやつだ。だからヒールのある靴は止めろって言ったのに。

初めて母親に買ってもらったヒールありの靴だからって捨てようとしないからだ。


「お前なぁ…」


仲が良いならなんで家出なんかしたんだよ。

俺はかがんでエレナの体に腕をまわし、横抱きをした。


「よっ…と。ちゃんと腕を俺にまわせ――おい、こら、動くな」


やだやだ、と小さく暴れている。


「は、はずかしいってば」

「自分でねだったくせに」

「違う違う、私はパンをそこで」

「――よっと、よし、これなら落っこちないな。」


話しを聞いて、とか、ねぇちょっと、とか、頭や背中をつつきながら色々言っているが、全部無視して正面に見えている公園に向かった。

通りすがりの町の人が、あら、とかいいわねとか言って、その度にエレナは必死に顔を隠そうと俺の体に頭をくっつけた。

でもまぁ、歩けない女の子を介抱するのは男なら当然だし必然だ。こういうマナーは、ちゃんと遵守しないとな。



公園にベンチを見つけると、そばにいた少年に声をかけて、持っていた布でベンチを拭かせた。

礼を言って蒸しパンをひとつ少年に渡した。

少年がどこかに行くのを見てから、エレナをベンチに降ろした。


「あの…ありがとう」

「いや、まぁ…別に。で、どこが痛いんだ」

エレナはきょとんとしている。

「歩けないんだろ?」

怪我をしているなら適切な対処が必要だ。

「へ…平気。大丈夫」

嘘の可能性もあるな。

「よし、靴脱げ」


化膿したら厄介だし、何もないならそれに越したことはない。


「へ?いや、朝からずっと履いているし蒸れて」

「それっ」

「ひゃっ」


エレナが言い終わる前に靴と靴下をずらした。

足裏や爪を一通り確認する。

うん、問題ないようだ。

少し小指が赤いから、軽い靴擦れか。よしよし。


「ちょ、くすぐったい、あははっ」

「小指触るぞ、承認しろ」

「はい?」

「いいから。痛くしないし、

くすぐったくもしない。分かったと答えろ。

ほら、はやく」

「…分かっ…た?」


不思議そうにしているが、まあしょうがない。

それよりもこっちだ。口の中で小さく呟くと、エレナが痛みやこそばゆく感じないように、そうっと小指を両手で包む。

よし、これでいい。終わった。


「ほら、靴下と靴」

エレナは、いそいそと履きながらますます不思議そうに俺を見ている。

「ねぇ、今のは何?」

「さあな。痛くなくなりますようにっていうおまじないだよ」


そんなわけあるか。さあて、食い付くかな。


「…えい、やぁ」


エレナは立ち上がると足踏みしたりジャンプして、

あれ?とかわぁ、とか言ってる。

そのうち満足したのか、ベンチに腰をおろした。


「ねぇ、おまじない効いたよ、痛くないんだもん!すごいすごい!」


シロか。ならまぁ良かった…かな。


「平気なんじゃなかったのかよ」

「あ……」


やれやれ。大丈夫だな。少し警戒をとくか。


「まあいいけどな。それよりほら、蒸しパン」


エレナは受けると、両手に持って食べ始めた。

なんかハムスターみたいだ。

案の定、あっという間にひとつめを完食した。

ふたつめを渡そうと差し出した。

「セオは?」

「なにが?」

「だって、私がこれを食べたらセオの分がひとつだけになっちゃうから」

「腹減ってるんだろ?気にしなくていいって。

ほら」

「…はんぶんこしようよ」


意外と粘るな。これならどうだ。

「俺は店の中でひとつ食ったから大丈夫。ほら」

無理矢理その手にパンを握らせた。

最後のひとつを俺は食べはじめる。

あまり旨くはない。

二口目を食べようとして――


「むがっ」


蒸しパンが俺の顔に押しつけられた。

「おい!」

「顔にくっついたんだから、

それもセオが食べなきゃね。

ほぅら、はやくはやく」


やられた。

すっげぇ嬉しそうな顔をしている。くそっ。


「店の中で食べたなんて嘘ばっかり。会計してすぐ出てくるの、私、ちゃんと見てたんだから」

「………」

「私はひとつで十分、大きな荷物を運んだ力持ちさんこそ、ちゃんと食べなきゃ。――ていうか、口つけたんだからちゃんと責任を持って食べてね」

「くそ…やられた…」

「3勝2敗、やったね勝ち越した!ふ~う!」

「あ"ー、すっげぇ腹立つ」

「言い負かしたなんてすっごく幸せ何よりの喜び、人生最良の日」

「やなやつ」

「今週中に私が勝ち越したらひとつ言うとおりにしてくれるんでしょ」

「…わかったよわかった、着いてくるなり勝手にしろ…くそぅ」

「やったぁ」


しばらく睨み付けてやったあと、しょうがないからふたつめの蒸しパンを食べはじめる。


くそぅ。

こいつの部屋に忍びこもうとした不審者をぼこったあと、こいつに話しかけなきゃよかった…

見たら無事だって分かるのに、なんで大丈夫かなんて話しかけたんだろう。連れていけって言われた時に振り切ったらよかった…

あ~、くそぅ。俺の3ヶ年計画が台無しだ…


「今にみてろ」

「返り討ちにしちゃうんだから」


はぁ、なんか疲れた。

パンを食べ終わったら宿屋に戻るか。

それで、これからのことは……


「ねぇ、やっぱりちょっとだけ分けて」

「……」

「ごめん、だっておいしいんだもん。

ありがと、ん~、最高においしい」

また今度考えよう。

「ごめん、もう一口」

「……」

「これが最後!お願い!」

「ばかエレ」

「人の名前を略さないでよ」


うん、それがいい。そうしよう……

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