舞崎さんの変わった友達事情(仮)
良い子は必ず本編見てからこっち見てね。
1:これは、浮いてる比野君の友達理論が案外リア充な件のストーリーと一切関係がないと申し訳ないなぁ。
2:この物語は比野君の友達事情(仮)の中で登場した人物達のスピンオフになるといいなぁ。
3:コメがあったら良いなぁ。
___
助けるって、根本的に何なんでしょう。
困っている人の支えになる事が助ける、と必ずしもそう言える訳でもないですし、かと言って過剰に人に干渉する事も助けるという事にはなりません。
人によってその理論は様々ですが、人が考える助けるという理論に何か革新的な理論が欲しいと思った時、私はこう思います。
助けるとは媚びに答える事だ。
一見さっきと変わらない意見でしょうが、媚びに答えるのと困ってる人の支えになる事は違います。
媚びと言う物無しに媚びに答えることは出来ません。
対して、媚びられている訳でもないのに困ってる人の支えになると言う行為は一種の偽善です。
好意で人に支えようとする欺瞞です。
それに該当しない、機械的、使命的に人の支えとなる人種が執事やメイドと言った存在ですね。
助けると言う言葉がふさわしいのは恐らくその人達の方です。
友人の為、親の為、先生の為、そう思う「助ける」に全うした正解なんてありません。
だって…どれだけ親愛している人を助けても、裏切られたら誰も耐えられませんものね。
___
わああああああああああい!
「どわっ!」
あ、流石に強くどつき過ぎちまったぜ…テヘッ☆
「ってぇなぁ…何だよ紫苑…」
「やっほ〜皆、元気してる?皆のアイドル兼先輩の用心棒、舞崎紫苑の登場だぜ〜!」
___ゴチンッ!
「あふぅっ!」
「何がアイドル兼用心棒だ。用心棒は主人に抱きついたりしない」
くっ…そうやってどつかれてるところを読者に見せて私にに情けないってイメージを植えようったってそうは行かないぜ、旦那!
「え…なんか今変なこと言った?」
改めて、私、舞崎紫苑です!
華の女子高生です!
職業は高校生と居候です!
って高校生はもう言ったか…てへぺろ☆
「え…なんか今こいつすごく殴りたいんだけど…」
それで、この般若顔は比野青娥先輩、私の唯一の旦那です!
「あの、般若顔は別に良いんだけど、旦那は誤解が生じるからやめて。何で若干江戸っ子でキャラブレブレなんだよ…。それから何ですかこれ」
「え〜。先輩、ここまで来てまだ何も分かりませんか?」
「分からないも何も、ここ来てからラリアットと抱擁しかもらってないんだけど。もう帰って良い?」
「ダ〜メっ♡しょうがないから、何も分からない先輩の為に、私が、手取りぃ…足取りぃ…ねっとり、この物語について教えてあげますからねっ!」
「…か、帰りたい。全身全霊で帰りたい」
___
この物語、Another tale 比野君の変わった友達の友達事情(仮)について、紫苑お姉さんからのお話だよっ。
この作品は本編、比野君の変わった友達事情(仮)の登場人物達の過去の姿を描いたスピンオフ小説になってるよ。
それ故におふざけ満点の小説になってるよ。
面白くなかったら許してね?
だって、筆者が笑いのセンス皆無だからね☆
___ゴチンッ!
「いひゃぃ!」
「デリケート過ぎるだろ!そこ触れたら本編もこっちも終わるわ!」
「…言われてみればそうですね…。ま、まあもし許してもらえないなら私のムッチムチの身体で、世の欲求不満な男子達をノックアウトして見せ…」
___ゴチンッ!
______
起。
「ねぇ〜紫苑。アンタにしか頼めないんだよ。お願いっ!一生のお願い!」
私に頼み込むべくして合唱しつつ、永続的なウインクをキメる困り顔の少女が私の友達だった人。
名前は、白辺 李藍。
当時、私と一番親しかった人だと思う。
いや、その言い方には多少の語弊が存在する。
「そ、そんな事して、変な人〜とか、卑しい人だって思われたりしないかな?」
「大丈夫!私だもん、何かあったら紫苑の事、私が守ってあげるよ」
「李藍ちゃんが言うなら安心だね」
李藍ちゃんの説得力は凄かった。
何故なら李藍ちゃんはクラスで一番顔の立つ人だったからだ。
所謂、スクールカースト最上位の人間だった。
それ故に、誰もが彼女を慕い、崇めている。
私はどっちかって言うと、下かも…って言うか下です。
もう超下です。
で、でも、ちょっと羨ましいなぁ…とか別に全然思ってないからね?
ほんとだからね!?
「分かった、私に任せてよ!」
任せてって言うのは私の役目って言うのかな…アイデンティティって言うのかな…。
兎に角、私はメタい話、本編同様、名の知れた広報担当でした。
つまり情報屋だったのです。
この日も、彼女にトクな情報、所謂李藍得な情報を持ってきて欲しいとせがまれて快く引き受けてた所です。
内容はクラスの男子事情を訊いてくる事。
って言ってもピンと来ないだろうし、でもはっきり言っても分からないと思う。
クラスの男子が、周りの女子の事をどう思ってるかとか、リアル充実してるかとか、そんな人のプライベートの事を訊いてくるなんて…プライドが高い李藍ちゃんらしいけど幾ら何でも不自然な内容だった。
でも、そう言う話が話題のタネだったりするからしょうがない。
「お前あいつと付き合ってるんだって〜?」
「う〜わ、もうバレてるとかwww」
とか言う会話が一例。
プライベートな話題ほど食い物にされる話なんてそうそう無いし、刺激が欲しくなっちゃう中学生期には、李藍ちゃんの様に人の事が知りたいなんて言われても、しょうがないとか、だって楽しいんだもの、と飲み込む他無い。
寧ろ、それプライバシーだし、深入りはダメでしょと否定する人なんて一切いない。
だってそう言うお年頃だもの。
さて、話を戻して、そんな不自然な状況を打開するスキルが私にだけある。
それが、中学の新聞部のステータスである。
だからこそ李藍ちゃんは私を頼るし、私もそれに身を委ねている。
とは言え今思ったらやっぱり李藍ちゃんおかしいよね絶対。
だってほら、自分の事を見て欲しいネット民とか、精神異常者とか、そう言う類の人みたいになってるもん。
表現はちょっとマズいけど…。
__________
私と李藍ちゃんとは中学校に入学した頃からの付き合いなんだ、ってまあ実のところそれは誰もがそうなんだよね。
彼女は中学一年生の、まだ制服姿に初々しさが残るあの頃、突如編入生として私たちの前に現れた。
そして編入初日であっという間に人気者扱いされていた。
魔王を倒した勇者が、無名の町村にルー〇して歓迎されている光景を見ているかのようでもあった。
編入生、容姿端麗、誠実かつ博識、更には異常な程の優しさを兼ね備えた彼女ならではの実績だろう。
漫画のヒロインかよ。
それだけ李藍ちゃんの中のスター性って言う奴が凄いんだろうね。
私には分からないけど…。
そんなこんなで…。
「そうそう、調査、ぜひ協力して欲しいなぁ…」
「勿論。女子についてだろ。校内に掲載するの?」
「うーん、色々問題ありそうだから検討かな。こっちもあまり勝手な判断はできないから深入りは勘弁してね、(てへぺろ☆)」
これでうっわぁ可愛い…なんて思うのが今系男子!
私のてへぺろは結構良い武器です。
それこそ、女子の反感を買うくらいにウザ可愛いです!
「ああ、結構ひどいよなこのQ&A。この学校で一番良いと思う女子って…」
「そこだよ!一番カムフラージュする所!」
「ここカムフラージュすんの!?ここが一番知りたいのにぃ…」
「まあ大目に見てよ、ね?」
もちろん記事になんてほぼなりません。
だって李藍得だし。
それでも李藍ちゃんや私が変人だと思われないのは、記事になるような内容を上手〜い具合に混ぜ込んだりするから。
本当に罪悪感しかないけど、仕方ないって割り切るのも辛い…。
パパラッチにしては少し情が深すぎるのが私の一番のジレンマです。
それでも私が新聞部に入ったのには訳があります。
何を隠そう、私は人の長所を見つけることが大好きなんです!
あの子はスポーツが得意、この子は数学に強い、色んな人の色んな良いところを見つけて皆に共有する。
すると人との輪も自然と広がって行く気がするんです。
あまり分かってもらえないかもしれませんけどね…。
簡単に言えば、アホの子なのです!と思って貰えれば今は良いかな。
「李藍ちゃん、調べてきたよ」
「ありがとぉ〜!で、どうだった?」
こんな意味もなさそうな気休めを聞いて、自分の地位を確認するのが彼女の日課になりつつあった。
そして、パシリの如く彼女の犬として働いている日常の中で私の中に湧いたのは、李藍ちゃんは何が欲しいんだろうと言う疑問だった。
名声?注目?
…ぶっちゃけなんだっいいや。
私はただ一つの噂に夢中だった。
李藍ちゃんを敵に回した人が悉く不登校になって行くと言う、にわかに信じがたい噂の事。
恐らく、李藍ちゃんの事を意識し始めたのはその話を聞いて直ぐだった。
それはほんの数日前。
_____
「ねぇ聞いた?朝倉最近不登校なんだって」
「誰それ?」
気さくな会話と言えば確かにそうなのだが、どうも内容がブラックな話だったので、私はつい、本当、つい、その会話を小耳に挟んでしまったのだ。
勘違いしないでね、決して盗み聞きしてた訳じゃないよ!
だいたいあいつらの声が大きいのが悪いんだ!
わたしはなにもわるくなーい。
「なんか虐められて学校来なくなったとか聞いたけど」
「はぁ?それマジ?っつーかアイツもそれで不登校とか、メンタル弱ぇ〜」
_____
以上が私が聞い…聞いてしまった、一部始終だ。
とまあ、彼女が来てからイジメの噂が増えるようになったと言う話である。
だからこそ、私は彼女を知りたかったのだ。
そして、時は一年を終えて、心改まる二年生の始まり。
でも、数ヶ月頑張って来て、その努力に綻びが生じてくるのも仕方ない事で…。
__________
承。
廊下、廊下、廊下。
新聞部の朝、じゃなくて夕方は忙しい。
放課後、学校中を駆け巡って新聞を掲示板に貼り付けて行く。
しかし、その仕事は何故か新聞部の一人にしか回って来ない。
理由は簡単。
新聞部は少人数の為、廃部の危機に面しているからだ。
部員は私ともう一人、同級生の男子がいる。
それでもたった二人では部として成り立つものも成り立たないと教師陣に烙印を押される筈なのだ。
それでも私が新聞部の仕事を全う出来るのは、私の新聞掲載の才能を見込まれたからだ。
これでも、将来有望な記者だったりするの、私。
人々が欲しいている情報、旬な情報、それらを取り入れる才能は誰よりもあったつもりだった。
だけど、そういうところが皆の癇に障ったのかな…。
仕事終わりの部室にて。
「ん〜っ!疲れたぁ…」
伸びをする体の持ち前のCは、制服などと言う着痩せ王道のコーディネートすら凌駕し、その巨大さを強調する。
ふっふっふ、凄いだろ?
揉みたいだろ?
いいぞおJCのCカップ……。
きもっ。
あ、これ先輩のでしたね。
「おい、なんか苦情来てんだけど」
ふてぶてしく返してくるその少年こそ新聞部の部員、青坂星太。
通称ブルースター。
リーじゃ無い。
新聞部唯一の私の相棒だ!
唐突な話だけど、どうしてかは知らないけどブルースターだけは李藍ちゃんと対等な関係にあった。
って言うのは、彼だけは李藍ちゃんから嫌われているように振舞われているのだ。
これも所謂噂の一環なのか、やはり虐めは李藍ちゃんによるものなのか。
そこで多少疑問を持ってたりする。
だけど不思議と彼は人が寄り付かない訳じゃ無い。
仲のいい人だって沢山いるし、誰かと不仲だって噂を聞くことはまず無い。
そして彼女自身、ブルースター嫌っているように振舞っているだけで、決して完全に突き放したりはしないのだ。
何と言うか、本当に絶妙な距離感があるのだ。
とすると、李藍ちゃんの虐めという線は実はないのかな?
と、いろいろ考えてたら頭パンクしそうだしもうや〜めた。
勿論彼は特別優れた人な訳じゃ無い。
李藍ちゃん程人気がある訳でもない。
李藍ちゃん程才能がある訳でもない。
極々普通の中学生だ。
でも、この子だけは、そんな李藍ちゃんの事をなんとも思ってないみたいだし、李藍ちゃんと接する時は彼女にひれ伏し、頼る人達とは文字通り違った。
そう言う意味では、ブルースターは彼女と対等であり、私は彼が少し羨ましかった。
「苦情って?ああ!」
「…何言ってんだよ」
「一人アドリブ劇場だよ?」
「いや意味分かんねぇけど…」
呆れ顔と共に無造作に差し出された一枚の紙には新聞に対する文句と言う文句が殴り書きされている。
いくつかを適当にピックアップすると____
記事がつまらない。
もっと見る価値のある記事書け。
ブス。
「最後違くなぁい!!?」
「そうじゃねえだろ…。先ずは仕事ぶりを振り返って反省するべきだ」
「仕事を振り返るだなんて、パパラッチのパの字も無いクソガキに言われとう無いわ!」
んーでも何も悪いことしてないしなぁ…。
私がまだまだニーズを理解し切れてないのか!?
「言いたい事と心の声が逆になってんだろ?言ってる事ゲスいのに顔がぶりっ子だぞ」
し、しまったついギャグ漫画にありがちなパターンをッ!
つい下目使いで、しかも両手を顎の前に添えてあらでもない事をッ!
気を取り直して…____。
「わ、悪いことしてないのになぁ…」
「今度は顔がゲスいですよ」
…。
いや、心当たりはあるのよ。
だってパパラッチっぽい事やって記事書いてる訳だし、それを李藍ちゃんの為に使っている訳だし…_____。
「大体、この前の記事、教師陣から苦情来た奴。不謹慎すぎるだろどう見たって。若干プライベートな部分の暴露だし…」
「うっ…」
ホラ来たー。
言うと思ったよ。
「いーじゃんか〜。そう言う記事じゃないとやって行けないんだよウチは。我慢しなさい」
ウサギみたいにぶぅぶぅとブーイングする私も可愛いよ!
「オメーはオカンか!そうじゃなくてもっとみんなが関心持つニュースがあるだろ…」
それ言っちゃプライベートってド直球でソレなんだよね。
確かに不謹慎だけど、一応コレ李藍ちゃんの考えだし、それなりに受けてるし、生徒ってニーズがそれを求めてるんだから良いと思うんだけど…先生方から苦情が来たりもしたし、それで健全な内容に変えたらこのザマだし、それこそハンニバルだし___。
「何ブツブツ言ってんだか…。それより、記事の事、見直しとけよ」
「じゃあ手伝って〜」
状況打開策が無い以上、甘えさせて欲しいと態度で表す。
本当そうだよ色んな意味で。
そもそもパパラッチだから記事に賛否があるのはしょうがない事だ。
多少反感買われても仕方がないって思っちゃう。
何処かのセンテンス〇〇リングとか、書く内容がプライベートばっかだし、似たようなものじゃんか。
でも問題はそこじゃなくて、パパラッチと校内掲示する新聞は違うって事だ。
多少不謹慎でもネタ集めに必死なのがパパラッチ。
新聞で不謹慎な事を書いたら問題だよ。
そもそも取材までがパパラッチ、新聞を書くとなったらそれは記者になる事が必要だ。
でも…_____
「自分の仕事っしょ?俺はやらないよ」
「えーっ!?記事のアドバイスぐらい頂戴よ〜」
「アンタ俺よりここ長いし部長だろうが!もうちょっとしっかりしろ!」
それを言われると…。
で、でも情報の共有だって大事じゃんかぁ…。
「ケッ、つーか先公供も皆も文句言い過ぎなんだよ。いいじゃねえか多少不謹慎で面白いニュースでも」
「なんか急にグレたんだけど…」
部活の大会出場を祝う集会があって明るく見送られた後、ボロ負けで初戦敗退して来たとか、体育祭で優勝したグループの歓喜ムードの中で不正行為が発覚したとか、そんな記事の方が不謹慎でしょ。
仮に悪い部分を隠して記事を書いても…___
Part 1
「〇〇がさぁ、部活の大会初戦敗退して帰って来たんだよね〜」
「プフッ、だからああ言う激励会とか時間の無駄なんだよね〜」
「分かるーそれ〜」
Part 2
「〇〇団優勝、コレって△△団の不正があったから優勝になったんでしょ?」
「えっ、それマジ?クソじゃん」
思い出すだけでちょっとガッカリだよ…。
私はただ忠実に記事を書いただけなのに!
苛々の表現を握り拳と剣幕で表しているとそれを冷ますかの如く冷徹な声が響く。
「大体、この部活を続けてられる事自体ありがたい事なんだから、ここで結果残しとかないと本当に廃部だぞ…。だからとりあえずは生徒の意見を聞いて…」
「ダメっ!それじゃあ私の真意の反する!私は誰得な記事なんか書きたくない!」
反射で返事をする。
それが出来るあたり私はまだグレてない!…と思う。
とは言っても…___
「でも、これを見た生徒側は得してないみたいだが?それとも先生方の苦情を頂く記事でも書くのか?」
「うっ、それ言われると反論材料が…」
苦情が来ると言うのは苦情を書いた人にとっては価値の無いものだったと言う事になる。
それでは結局私の真意に反するのだ。
誰もが見れる記事、それが私の理想の新聞だ。
私やっぱりパパラッチの才能アリ?
…熱意だけ、ね?
「反論材料探す余裕があるなら記事書けこのバカラッチ」
「ば、バカラッチィ!?」
これは何というか、一面楚歌…?
いや、三面楚歌かな?
記事に文句言う派閥等とブルースター後輩…。
うぅ、先輩は辛いよ。
本当どうしよう…。
__________
ジリジリと照りつける太陽光。
自分はソーラーパネルで充電完了したのかって思うくらいに私は元気だった。
言い換えればウザいくらいに。
この前頂いてしまった胸を締め付けるような苦情の事なんかもさっぱり忘れて。
「李〜藍ちゃんっ!」
「うわぁっ!」
「元気ないじゃん?どした〜?」
「い、いや…考え事…。それより前に頼んだ事、どうだった?」
私は李藍ちゃんに気さくに話しかけられる程の仲になった。
それはそれで凄く良い事だ。
でも、最近なんだか李藍ちゃんの元気が無い。
だから頻繁に、気安く話しかけちゃう。
あくまで気さくにでは無い。
どうしても気安くと感じてしまう。
というのも、何やら深入り出来なそうな事情がある気がしたのだ。
普段の李藍ちゃんはそれはもう抜け目のない完全無欠の少女だ。
頭も良く、運動も出来て、皆の人気者だ。
その彼女が、元気がないところを見ているのが、何となく嫌で、そして不安だった。
心配と言っても、その意味は悪い予感と言う意味で不安だった。
何より嫌なのは私の良心だ。
友達が困っているのを見逃せない私のプライド、いや、ポリシーと言うものなのだろうか。
まあ、とにかく許せないのだ。
ブルースターの件だって例外じゃない。
彼もまた困っていた。
だから私も悩んだ。
「あ、あの、私で良ければ相談に乗るけど…」
気安く、訊いてはいけないかもしれない事を訊いてみるあたり私は馬鹿だ。
そっとしておけば良かったのに。
そしたら…___
「誰にも言わないでくれる?」
「勿論!私と李藍ちゃんの秘密ね!」
「じ、実は…」
_____日常も壊れなかったかもしれない。
__________
転。
「つまり…こ、コレは…恋だ…」
「そ、そうなんだよね」
李藍ちゃんは案外すんなり私に悩みを話してくれた。
しかも意外な内であった。
無敵だった李藍ちゃんの弱点と呼べるそれを聞いてしまった。
「で、告白するの?」
軽薄な質問は続く。
今思えばやっぱり馬鹿な行為だった。
「そ、それを調べて欲しいからアンタに色々頼んだのよ!」
「え、そうだったの?だったら___」
本当、馬鹿だった。
何故かって?
理由なんて無いよ。
私は馬鹿だった。
その結果だけがそこにあった。
「直接聞いて来てあげようか?」
「そんな事したら怪しまれるでしょ…」
それだけだった。
「任せときなよ!だって同じ部活だし、怪しまれないように訊ければいいんでしょ?」
「ま、まぁ…」
「私、李藍ちゃんの為だったら___」
_____何でもするよ!
本当に?
本当に私は彼女の為なら何でも出来たの?
死ぬ事さえも?
「じ、じゃあ、訊いて来てもらえる?」
それは妄言だよ。
盲目だよ。
愚劣だよ。
何の力も無いのに、無責任に何でも人のためにしようだなんて
「うんっ、任せて!」
「しぃ、声が大きいって!」
人差し指を立て、口を半分に隔てつつ、甲高い息を吐く李藍ちゃん。
余程訊かれたくなかったとも取れる。
やはり、私は気安かった。
どうしようもない、馬鹿だった。
_____
再び部室。
閑古鳥が鳴きそうな無人の部屋かと思いきや、私より早く部室にやって来た働き者が一人、黙々と記事を見返している。
入口の引き戸には小さな小窓があり、そこからその仕事ぶりを覗くのが私だ。
ちょっとだけ微笑ましいものが拝めたと満足気に引き戸を引く事で、彼はどんな顔をするのだろう。
取り留めもない事を考えて無造作に開ける引き戸はガラガラと無骨な音を立てた。
「たっのも〜!」
威勢のいい声と同時に入室。
そのままうるせぇとか、びっくりしたとか、言ってくれればそれで良かった。
まあそう言うからには、帰って来た反応が冷めていたって事になるけどね。
「よっ…」
「あ、あれ…冷えてるなぁ…」
いつものノリを忘れずに、もう一度ブルースターにアタックを試みる。
まずは腕を肩に乗っけて〜_____。
「もぉ〜連れないなぁ、もっと元気よく行こうよ!ホラ、ハッピージャムジャ____」
「ちったあ黙ってられねぇのか!今記事書いてんだから退いてろ!ペンがブレるだろ!」
「えっ…」
私の勢いは彼の怒涛の怒りに沈められた。
しかし、それとは別に私は一瞬思考が停止しかけさえした。
今、ブルースターが…記事を…_____。
「廃部、嫌だろ?」
私の心は満たされた。
仕事しなくて済んだわ〜とか安心とかもそうだけど、何より青坂君はすんごく優しい人なんだって事に気づけた私が達成感みたいな嬉しさに満たされた。
口で表現するなら_____。
あぁっ!コイツ、イケメンですわっ!
「うりゅうりゅ…」
「は?」
「泣きそうな声を出してみた…ぐすん…」
「間違っても泣くなよ。今お前に構ってやれる時間なんてねえよ」
本当なら泣き喚いて抱きつきたいくらいなんだけど、流石の私もそこまで真剣だった彼にそんな真似は出来ないと我慢する。
先輩なら、良いんですけどね。
「私は…何をすれば_____」
「何もするな無能部長」
「この前よりひどい言い草になってる!?」
私は多分、今日という日を一生忘れないだろう。
だって、一番知りたかった事が知れたから。
有意義だなんて言葉で表せるようなものじゃない。
とにかく、最高に嬉しかった日だった。
ハッ…これって…恋?!
え、うそマジ?
…はいただの冗談ですごめんなさい。
嬉しかったのは、今まで彼の事を一寸も知らなかったからだろう。
初めて知れた彼の本性に少しばかり自信がついただけなのだろう。
故に私は、舞い上がってしまった。
__________
事は数日後だった。
私は今教室の真ん中に立ち、クラスメイトに囲まれるという状況に追い込まれている。
一体何があったのか。
ありのまま今起こった事を説明しよう。
事は数分前だった。
私はこの物語を心温まる話風に仕立て上げたかったんだけど、実はそうも行かない。
どうやら私は、掲載した新聞について、やっと、本当にやっと、大体一年半くらいかけて初めて、プライバシーの侵害を訴えられた。
しかし、私はそんな事は絶対に認めない。
私の仕事ぶりは、教師陣が大いに認める程のものだ。
プライバシーを侵害する内容はあらかじめ許可を得て掲載するのが当たり前で、私はそれを欠かした事がない。
それもあるけど、もっといろんな部分も含めて私の仕事は完璧だった。
でもみんな中学生だからね、プライバシーの侵害を普通に許可する事くらい何とも思ってないからもしかしたらって事もある。
ふっふっふぅ、自画自賛しすぎだって?
けど、私が中学校に入学する時に潰れる筈だった部を私とブルースターの二人で維持したって言えばなかなかの功績に聞こえない?
そして、やっと今その綻びが出てきた。
それだけ。
要は、書いた覚えの無い新聞が問題視されてて、その所為で私は今盛大に周りから責められてる。
しかも、プライバシーの侵害を何とも思ってない連中から。
よほど酷い内容を掲載した新聞なんだろうなぁってこの時思った。
でも違った。
皆が奮起している理由はすぐに解った。
_____訴えた人が李藍ちゃんだったからだ。
「ねえ紫苑、どういう事なのか説明してくれる?」
李藍ちゃんがここまで怒ってた理由、それを把握する為にまずは問題となった記事に目を通す。
なんて書いてあったかなんて大体想像出来た。
「紫苑言ったよね?私と李藍ちゃんの秘密って。私を裏切ったの?」
ほら、その通りだった。
それは良しとしよう。
問題はこの記事を書いたのが私ということになっているという事だ。
わ、私じゃないんだけどなあ…。
そんなこと言って許されると思う?
そもそも許される所以がないじゃん。
ここで取るべき行動は…私にも分からないや。
「ねえなんで黙ってるの?私の秘密を知ってるのってアンタだけなんだけど…」
それが何よりの証拠だ。
じゃあなんて言えば良いんだろう。
なんて言えばこの誤解が解けるだろう。
そして、次に私がとった行動が一番の愚行だった。
「さ、最近青坂君が記事を書いてたなーなんて_____」
「そんな事信じる訳ないじゃん!」
「ま、まあまあ、一応聞いてみてよ」
一斉の注目がブルースターに集まる。
ブルースターの回答が期待される状況となった。
だが、彼は予想とは裏腹な答えを吐き出した。
「…知らないな。そもそも俺は記事なんて書いてない」
「えっ…」
絶句。
しらばっくれる青坂星太。
この時、私の中で違和感が大いに働く。
彼は確かに記事を書いてた。
私は現場だって目撃してた。
じゃあどうして彼は書いてないなんて言うのだろう。
その記事を書いた覚えがないという回答を私は予想していたのだから、すごく狼狽えたと思う。
彼がそんな事する筈ない。
私はそう信じてた。
いや、信じていたかったんだと思う。
それは妄想だった。
不確かな事実から目を背け、幻で自分を覆って守りたくなったが為の幻想だ。
故に私は根本的にこう思った。
_____李藍ちゃんにだけは絶対に嫌われたくない。
李藍ちゃんの噂なんて嘘だ。
あの子は人を虐めたりしない。
絶対に嘘だ。
私は一人になりたくない。
ほら、馬鹿でしょ。
ここまで追い詰められて、恐らく彼が書いたであろう記事の事について何処かでブルースターも李藍ちゃんも嘘をついているように思ってたのかもしれない。
だけど、当時の私にそんな事考える余裕は無かった。
もう一つ重大な事に気づいた。
相手が李藍ちゃんだという事。
彼女が敵の場合、彼女を慕う人々が皆私を攻め立て始めるという事。
それ程に彼女のスター性が輝いているッ!
ま、眩しいゼッ!
彼女らが企んでいる事にも気づく事なく、慌てふためいて逃げ出した。
この時、教室に1秒でも早く引き返してれば、私の心の中に入った亀裂はもっと大きくなりはしなかっただろう。
「…うぐっ…どうして…どうして私が…違うのに…違うのにッ!」
駆けながら泣いた。
ひっそり泣いた。
あんな経験初めてだったから。
酷く苦しくて、辛くて、胸の内が張り裂けそうだ。
痛いよ。
コレが、虐められるって事なのかな…。
_____
楽しかった学校生活が____終わった。
あのあと私どうしたっけ。
逃げて。
逃げて。
逃げ続けて。
気づいたら学校の中でも足を踏み入れるような所ではなさそうな場所の行き止まりで蹲ってたっけ。
「ねぇ、なんで逃げるの?」
「李藍ちゃん…」
これは…捕らえられて凌辱される前にくっ殺せのパターンなのか!?
そ、それはなんというか…も、萌えるっ!
おっと一度味わってみたいだけで別にそういう趣味がある訳じゃないんです。
興味本位ってだけです。
本当にそうだったら、良かったんですけどね。
「そっか、私のことなんてどうでも良いんだね」
「違うっ!」
「何が違うの!?」
「私は…李藍ちゃんの為なら…なんでも」
虚言。
なんでもなんて大嘘だった。
結局今だって何も出来ない。
ただ佇んでるだけ。
それならいっそ…とか考える事もしなかった。
「じゃあ私の為に_____」
なんだって受け入れよう。
ここまで来たら嫌われない為の最善を尽くそう。
私は一人になんてなりたくない。
李藍ちゃんは私に手を差し伸べてくれた。
李藍ちゃんは私と新聞を書いてくれた。
お弁当食べたり、面白い話をしたり、それから_____
「私と絶交してよ」
李藍ちゃんは、私を裏切った。
「えっ…」
言うまでもなく、呆気なく、足を前に出すようにいとも容易く私を裏切った。
そう理解するのには時間がかからなかった。
「…これ、先生も知ったら怒るよね」
「言いふらそうよ。あれだけ平等がどうこう言ってたのに」
李藍ちゃんの取り巻き女子達が教室で零した言葉がいくつか聞こえた。
ダメだ。
皆李藍ちゃんの味方だった。
私じゃ、彼女達には勝てない。
「信じられないよね〜マジで」
「さいてー」
ただ悪口が私の耳の中に入って、脳で反響した後すぐに抜けて行ってしまった。
私を恨む声は止まらなかった。
李藍ちゃん、なぜ…___
裏切ったの?
ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
私がいけないの?
君がいけないの?
誰がいけないの?
ねえ教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ。
「私の…何がいけないの?」
___調子乗んなバァカ、お前なんか誰が助けてやるかよ。
白辺李藍
やだ、やだ。
ひとりにしないで。
わたしはひとりなんてやだ。
誰か…助けて___。
__________
結。
闇ニ沈ム。
暗キ底ヨリ現ルハ_____。
「もう良いだろ、その辺で」
青い星。
「せ、星太!?」
忘れてた。
彼は新聞を書いていた張本人だ。
じゃあ、何故新聞を書いたことを黙ってたのか。
ま、まさかそれを白状し、私を助けに来たのかッ!?
くっ殺せ!女剣士ならこのまま惚れて性奴隷に…ッ!
全く、人気者は困るぜ…てへp
「お前もう帰れ」
お前はどうやら私に向けられた呼称らしい。
そう言いながら私の元へ寄って来るなり強引に彼は私の手を引いている。
そして逃げる事を勧める。
「堕天した事が気に入らないラファエルが、私と言うルシファーを追いかけてくるのかッ!?」
「言ってる場合か…お前な、李藍に仕組まれてんだよこれ。詳しいことは後でいくらでも話すから早く行け、ここは俺が引き受ける」
「あぁー!ズルいぞ!自分だけここは俺に任せて先に行けってセリフでカッコつけちゃってぇ、このハゲェェェェェェェェェェ!」
「ハゲてんのお前だから!もう色々とハゲ切ってるから!部活までハゲさせてんじゃねえよ!」
新聞部の廃部回避。
私が今一番望んでいる事かもしれない。
でも、どうすればそんな事…。
「ここ行き止まりだから、後ろに逃げ道なんかねえぞ。早く、前から行けよ」
「行き止まり…ここは地獄に繋がる獄門かッ…!?」
「もう好きに言ってろ…」
しかし、私は納得出来てなかった。
この状況全てに。
何故私はこんなに嫌われるようになってしまったのか。
何故ブルースターは私を助けてくれるのか。
何故僕のヒーローアカ○ミアは面白いのか。
私はここでそれをはっきりさせたい。
そして、全て終わらせたい。
何より、新聞部を残したい。
私のたった一つの、アイデンティティを。
「早く行けよ、俺もあいつに言いたい事あんだよ」
「ねぇ、その前に、いくつか質問したいんだ」
「バカ、ンな時間…」
「お願い…李藍ちゃん」
ブルースターは吃驚した顔で振り返った。
すると李藍ちゃんの血相変わった鬼の様な顔が目に入った。
でも、動じちゃいけない。
訊かなくちゃ。
本当の事。
本当の気持ちを。
「どうして、私を裏切ったの?」
「どういう意味?」
「私、知ってた。李藍ちゃんが青坂君に新聞書かせた事。あの時、たまたまその現場を見ちゃって、そしたら、書ける筈のない記事を書いてたから」
_____李藍ちゃんには好きな人がいるんだよね。
「そんな事を書かれたから…って事ないよね。だって私、そんな記事書いた覚えがないもん、そうでしょ?青坂君」
「…あぁ」
申し訳なさそうにブルースターが答える。
私は忘れていた。
彼が記事を書いていた内容の事を。
あの時は、彼が記事を書いてくれてた事に喜んじゃってて、それですっかり忘れてたっていうか、見ちゃったけど気にしてなかったっていうか…てh_____
「じゃあ、なんで私と李藍ちゃんの秘密を彼が知っててそれを記事にしちゃったんだろうね」
「…からだけど、何?」
「えっ?」
だんまりだった李藍ちゃんもやっと口を開いてくれた。
「あんたがウザいからだけど、何?それ以外に教えることなんてないわよ。あんたがウザい、だから星太に頼んでここまでやってもらったの」
ウザいから、と言って、学校中の人達を動かす程の事が出来るのだろうか。
そこまで私の事が憎いのは何故?
李藍ちゃんを傷つける様な事したかな?
あざとい事?
アンケート取った事?
なんでも良い、知りたい。
だが_____。
「だそうだよ、クラスの皆さん」
とブルースターの一言に咄嗟に李藍ちゃんが後ろを振り向いた時、驚きを隠すことが出来ないと言わんばかりに、李藍ちゃんの後を追いかけた生徒の塊が唖然としてた。
李藍ちゃんのスター性にヒビが入った瞬間だった。
「み、みんな…違うのっ!これは…」
「俺がこいつに頼まれて、こいつの秘密を暴露する記事をでっち上げた。紫苑は悪くないし、ただただ李藍の使い捨ての遊び相手にされてたってことだ」
どよめき。
もう静粛にはならない。
その中でも、私は続けた。
「じゃあ質問変えるよ。どうして、青坂君は私の事、助けてくれるの?」
これは革新的な質問だった。
これで、私は白辺 李藍と言う悪意に、トドメを刺す!
絵に描いたように李藍ちゃんが顔をもっと硬ばらせる。
それに構わず、ブルースターは答えた。
「…紫苑が、大事だから」
「えっ…?」
「お前の、友達でありたかったから」
周りが、時間が、全てが凍りついた気分だった。
その幸せに、絶望の中見出したたった一筋の光に、温かみを感じていたかった。
裏切りの最中見出された光明を握っていたかった。
「せぇぇぇいいいたあああああああああ!」
しかし、流れる数的の雫を拭い、視界に映ったのはブルースターに無意識に殴りかかろうとする李藍ちゃんの姿だった。
私は思わず一歩踏み出しかけた。
でも、彼はそうはさせなかった。
「俺の友達には指一本触れさせはしない!」
見事に李藍ちゃんの暴君の如く拳を避け______。
パンッ________。
頰を思い切り叩いた。
「ッ!?」
李藍ちゃんは感傷に浸るようにヒリヒリする頰を摩る。
しかし、そんな事を機にする余裕はもう残されてなさそうだ。
だが、まだ逃げる訳にはいかない。
質問を続ける。
「さ、最後。あの記事を書いたのって君の意思じゃないんだよね!」
「さっき言ったろ、そんな事どうでもいいから早く行け!男が女叩いてる所とか見せたくねえんだよ」
…信じて良かった。
圧倒的に李藍ちゃんを信じたあの瞬間を恥じ、再びブルースターの事を考えて良かった。
確かに記事を書いたのは彼。
でも彼には明確な別の目的があった。
それは自分で、これは誰かの意思によるものだと、伝えたかった事。
根拠は恐らくない。
でも、多分、突然記事を書いているなんて言ったら怪しんでくれるとか考えるよね、普通。
だって、それが信じるって事だもんね、ブルースター!
「アンタが、星太に気に入られるとか、ウザいんだよ!ぶりっ子しやがって!キモいんだよ!」
今思えば、えっ、何?そういう事?って感じかな。
李藍ちゃん、多分でっち上げた記事なんて書かせてなかったのかも。
「今のテメェのが、よっぽどクズに見えるぜ、李藍」
「っ!?」
その言い合いに、私は二人の絆を感じた。
彼らもまた信じ合っていると言う事を感じた。
根拠はやはり無かった。
でも、分かる。
それが私の長所。
私は人の良い所を見つけるのが得意だ。
そうい所を探して、皆に伝えるのが、私が一番好きな事だから。
それが、皆に知ってもらいたい情報だから。
星太の長所は…人を信じれる事だ。
「最後のセリフ、ここは俺に任せて先に行けの方が…じ…じっくりぎますよ…」
嬉しさのあまり泣きながらのボケになっちゃった。
「…ブルースターの花言葉って、知ってる?」
私の所為できっと李藍ちゃんも星太も傷付けちゃった。
私が星太を好きになっただけで、星太が私を好きになっただけで、李藍ちゃんは嫉妬した。
そう言う事になる。
分からなくもない感情だけど、あくまで私達は____
「信じ合う心…」
友達だ。
李藍ちゃんを受け止めながら顔だけ振り返った体制で、後光が差している彼は、そんな誠実な花の様に、美しく、カッコよかった。
辛くて、真っ直ぐは見れなかったけど、私は、李藍ちゃんや星太の為に、退くべきだと思った。
李藍ちゃんはプライドが高いからね…。
分かってあげなくちゃ。
プライドが崩されるのなんて誰もがやだもんね。
「李藍充、爆発しろおおおおおおおおおおお!」
泣きながら、一輪の紫苑の花は散った。
泣きじゃくって走った。
走った。
走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走った。
その声を聞いて吃驚する人達を後ろ目に、星太に最後の一言を言いそびれちゃった。
___ごめんね。
______
確かに伝わっている。
これはあいつが望んだ展開じゃない。
紫苑を、もう少し辛い思いをさせずに済む方法は、信じる方法は無かったのか…?
もっとやれる事があった筈だろ。
俺にも、少しでも、やれる事が…。
「悪いな皆。さっきのは嘘だ」
俺は俺でやれる事をやる。
「…は?」
一同全員絶句した。
そうだ。
そのまま納得してUターンして帰れ。
「本当は李藍の指示とかじゃなくて、俺が自分でやった事なんだよ」
テメェらが恨むべき舞崎 紫苑はもう居ないんだよ。
お前らが恨むべきは俺なんだ。
俺を犠牲に、あいつが助かるなら、俺をは恨まれても良い。
俺に、気ままに話してくれた、最初で最後の最高の親友の為に。
「ただ単にアイツが鬱陶しいから少し身の程を教えてやろうって思ってこんなことしただけだ」
それが嬉しくて、幼馴染ってだけでくっついている李藍とは違う何かを味わえた。
それだけで十分だ。
「考えても見ろ、皆の白辺李藍だぞ。そんな人を虐めたりとかするわけねえだろ」
分かる。
李藍の力が抜けて行っている。
そもそもこの件の言い出しっぺはこいつだ。
俺じゃない。
でも、それを知ってる俺がそんな事言ったら、こいつはみんなから恨まれてしまう。
「…何だよ、もう隠してる事はねえぞ、早く帰って勉強でもしてろよ。もうじきテストだろ」
「意味不明www」
「アーサイコサイコwww」
「まあ舞崎ちょっとウザかったけど」
「そんなこと言ったら可哀想じゃん」
「なんか今日の変だよなアイツ」
ブツブツ言いながら少しずつ、人が帰って行く。
もうめんどくさくなったんだろう。
そりゃそうだ。
散々舞崎ひでぇなって言ってたのに、実は俺が悪いから今度は俺を…って、めんどくさくて誰もが構いたくなくなる。
中にはふざけるなとか、死ねとか言う奴もいたけど、李藍が何も言わなかった所為か、そんなに盛り上がるものでも無かった。
全員が帰った数分後。
俺は李藍の脱力した体を支える様に李藍を抱いた。
彼女は一瞬吃驚した様で、明らかに鳥肌が立っている。
「…コレでいいと思ってるの?」
「そりゃこっちのセリフだ。なんで俺が紫苑と仲が良いだけであそこまでした」
「煩い!私には、友達だなんて言った事無いのに!」
「バカはお前だ!昔同じ思いをしたのを忘れたか!」
李藍は昔、さっきまでの紫苑の様な仕打ちを受けた事があった。
スクールカーストトップの彼女が何故そうあったかと言うと、単純にあいつより凄いスクールカーストトップ層がいたってだけだ。
で、あいつは蹴落とされた。
アイツはただ友達を作って威張ってたかっただけなんだ。
調子乗ってるってだけで虐められて、でも誰も助けちゃくれない。
擁護すると今度は自分が虐められるって思ったから、誰も声をあげれなかった。
でも、幼馴染っていうのもあったし、放っては置けなかった。
紫苑みたいに、あの時の李藍も庇って、傷ついて。
「幼馴染としてはっきり言うが、お前は、俺は嫌いだ」
「ッ…!」
李藍の両拳に力が入るのが分かる。
悔しがってる証拠だ。
そうだな。
一度昔を思い出して反省してもらわなくては。
「だって、星太私の事全然見てくれないんだもぉん…」
「バカ言うな、見てるに決まってんだろ」
「友達だって言ってくれなかった…うぅっ」
「今も昔も、お前を助けた友達の仲のつもりだったけどな。お前はそうは思えなかったか?」
「ズルいよ…そんなに人気でもないのに…ぅぅぅっ…」
「人気じゃないと友達が出来ないなんて誰が言った。そういうところに固執するお前は嫌いだ」
「じゃあどうすれば良かったのッ!?」
咆哮した。
その声は俺にちゃんと届いてる。
俺はコイツの質問に見合った回答をしなくちゃならない。
「解んないよぉ…解んない解んない解んない解んないよぉッ!」
「俺には解る。寧ろ、紫苑と仮初めとはいえ仲良くしてて分からなかったか?」
「分かんないからウザくて、だから…ッ!」
「それだよ。お前にはそのウザさがない」
「私にあんな風になれっていうの!?」
「別に良いだろ。アイツ別に嫌われてないし。あとさ、別に紫苑になれって言ってるんじゃなくて、お前の素顔曝け出してみろって言ってるだけだからな」
「…やっぱり、解らないよ。悔しぃ…悔しいよおおおおお!ああぁあああああっ!」
慟哭。
泣きたいのは俺だっつの。
でも、昔のコイツも、俺が話しかけたらこんな風に泣いたっけな。
懐かしい。
でも、あの時の面影は最早無くなってしまった。
今や自分の人気ばかり気にして生きてるこいつは、平気で人を傷つけることを厭わないモンスターだ。
そんな奴じゃないだろ、お前は。
あの一件で人を信じる様になれた、立派な人間様だろ。
俺の、友達なんだろ。
後光が差して眩しい校内の辺境で、ひたすらガキみたいに泣きじゃくる李藍を、俺はいつまでも放さなかった。
_____
以上です。
「いやぁ、感動のストーリーですね!」
「最後雑にボケすぎじゃね…?終わらせ方も雑じゃねえか」
「まあまあ、それより、どうでした?私の秘話!」
「…いや、なんか…ゴメン」
「どうしたんですか?先輩」
「いや、なんでもない」
「あれあれぇ?先輩もしかして泣いてるんですかぁ?」
スッと顔を背ける先輩。
プフッ、面白い…!
「だ、大体なぁ、そんなに親しい男がいるなら俺なんかに構ってないでそっちに行けってんだ」
「なぁに言ってるんですか、先輩といたって親友なら浮気関係にはなりませんし、問題ないですよ」
「いやそう言うことじゃなくてな」
「そう言うことなんです。だって___」
「私、先輩、大好きですから!」
___________
どうもSieg004です。
作品を一個にまとめようと頑張った結果、最後の方が雑になりました。
本文注意事項にも書きましたが、会話が多いギャグ要素【つまらん】入りです。
つまらんと思った方はブラウザバックするかニコニ○に逃げましょう。
今回は舞崎紫苑、本編小説で初めに登場した紫苑の花がモチーフの女の子です。
花言葉は…追憶、君を忘れない、遠くにいる君を思っている、などが挙げられますね。
んー如何にもリア充してそうな花言葉ですね。
でもイメージ的には惜別の念が感じられる花です。
是非リア充爆発するときに、相手方に送ってあげると良いでしょう。
僕は送る人いませんけど。