素晴らしき上司
井上は高校を卒業し、事務職としてある企業に就職した
元々性格が真面目なこともあり
与えられた仕事を黙々とこなした
上司から重宝された
ある時上司の山川に魚釣りに誘われた
公私ともにお世話になるようになった
その山川は非常に有能な人で、周りから一目置かれいた
井上は山川に可愛がられる事で、社内で優位な立場に立った
その後、山川の優しさに甘え、仕事は一生懸命であったが、
自己啓発らしきものは、なんの努力もしなかった
ある時山川から次のように言われた
「仕事ばかりそんなに一生懸命になるな。
手を抜け。もっと本を読め」
最初自分の耳を疑った。あんなに仕事のできる上司が、なぜ仕事は適当でいいなどと言うのだろう
全く意味が理解できなかった
あれから20年今やっと、その時、山川さんから言われた意味が理解できる気がする。
当時井上は、仕事一辺倒の人間で、仕事中心の人間であり、家庭や回りの状況に、目を向ける余裕など全くない状況であった。
この状況を危惧した山川が、井上の将来を心配して出た言葉だった。
案の定、井上は仕事熱心なあまり、ある時ノイローゼになってしまう。
井上はノイローゼにもがき苦しみながら、何とか正常な精神状態を取り戻す。
仕事を愛し、仕事以上に人を愛した山川さんは、昨年癌でなくなりもうこの世にはいない
山川さんから教えられた様々な事を、次の世代に引き継ぎたいと井上は思うのであった。
それが、山川さんに対する最大の恩返しと井上は信じている。