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ウタカタノヒカルさま  作者: 紗菜十七
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カヤノナカノシンジツ


イーストタワーの最上階にある会員制レストランで

トップアイドルの三人は昼食を取っていた。

弘徽はテーブルに軽く肘を付き、探るような目で将院を見る。


「ねぇショウ、なぜ急に宴に出る気になったの?」


考え事をしていたのか?将院はふと顔を上げると

少し遅れて優しく微笑んだ。


「別に深い意味はないよ」


「嘘でしょ?僕が本当の理由を言ってあげようか?」


「じゃあ、お前こそどうして右近に入ったんだ?

お前が敵にまわると、簡単には勝てそうにない…

椿先生に頼まれたのか?」


「椿に頼まれたのは事実だけど

僕は魅力を感じるモノでしか動かないよ。だから椿じゃない」



「…じゃあ他に誰かいるのか?」



二人の話など気にも止めず、ヒカルは無言で食事を続けていた。



「いるよ。僕の新しい獲物が代表メンバーに入ったんだ」



その言葉にヒカルの視線が微かに動いた。

将院はかなりびっくりした様子でグラスを倒しそうになる。


「まさかっ⁉」


「そう、そのまさかだよ」


「そうかぁ!弘徽もやっと普通の人らしく恋をするようになったのかぁ!」


朱雀の恋愛に前から疑問を抱いていた将院は

ホッとした様に笑った。


「普通って言葉、嫌いなんだけど」


「まぁ気にするな!で、どっちなんだ?

顔ははっきり覚えてないが、格闘技の方か?それとも長距離?」


「か、格闘技⁉」


「右近のメンバーに入った体育会系の子だろ?」


「怒るよショウ‼」



「なんだ、違うのか?」


「勘違いにも程があるよっ!

この美に対して敏感な僕がだよ?

よりによってあんな女子を狙うだって⁉」


「なんだ、てっきり同じチームに入って口説くのかと思ったよ…」


「ありえないよ!」


「そうなのか?」



二人のやり取りを今まで黙って見ていたヒカルの凛々しい唇が開いた。



「はっきり言えよ、お前が興味を持ったのは誰なんだ?」


「やだなぁ、ヒカルも解からない?とっても魅力的な子なのに?」



将院はハッとすると、急に表情が厳しくなる。



「あの子は駄目だ」



「なんだ、やっと分かってくれたの?

でもどうしてダメなの?葵がショウの新しい彼女だった?」


「違う、彼女じゃない」


「じゃあいいよね、僕が狙っても」


将院は素早い動きで、弘徽の胸ぐらを掴んだ。


「いいか、相手を自分の暇つぶしや

ゲームのコマでしか見られないやつに、葵は絶対渡さない」


将院のいつになく真剣な態度に対し、弘徽はニヤリと笑った。



「へぇ~…

ショウと僕が取り合うなんて初めてだね?面白くなりそう」


「なにっ⁉」


「いい加減にしろっ!」


エスカレートしそうな二人の間にヒカルが割って入る。


「ここでお前たちが争っても無意味だろ?

はっきりさせたいのなら、その女の所へでも行ってこい!」


「それもそうだね、無駄な争いは止めておこう。

宴で僕達の魅力をアピールして

どちらが相応しいか彼女に決めてもらおうよ」


「お前が勝手にアピールすのは構わないが

無理やり自分の物にするのは止めろ!

もし少しでも変な動きをしてみろ、お前を絶対に許さない」



将院の目が鋭く光る。



「もぉ~怖いよショウ!

もちろんこの僕がそんな野蛮なマネする訳ないでしょ?」


軽く流すように弘徽はそう言ったが

欲しいものは手段を選ばず必ず手に入れてきたことを将院は知っていた。


ヒカルは不愉快だといわんばかりに荒々しく席に着く。

そして珍しく嫌味な言葉を発した。



「精々女の為に二人で頑張ればいいさ」



穏やかでいられない将院は、二人を残し無言でその場を立ち去った。








ノーブル学園にある二つのドームは

中央の校舎を挟んで左右に別れ

上空から見るとそれぞれの名前通り

橘と桜の形で作られていた。


左近のメンバーは桜ドームに集まり

最後の一人、将院を待っていた。


(遅いなぁ?どうしたんだろ…急に仕事が入ったのかな?)


葵は一番端の空いた席が気になり落ち着かない。

藤原は諦めたのか

テレビ画面の前に立つと曲がりかかった背筋を伸ばした。


「まだ頭之中君が来ていませんが

時間を無駄には出来ないのでそろそろ始める事にしましょう。

まずはみんなお互いを知らないだろうから…

じゃあ若宮君、座ったままでいいので簡単な自己紹介をして下さい」


すると若宮は机に肘を突き、気だるそうに藤原を見た。


「え~、僕もするの?

みんな知ってると思うけど?

この中で僕を知らない人~…はい、いないので次いってくださーい」


見た目からは想像できない、あまりにもデカイ態度に

桐壺と葵は顔を見合わせる。


若宮の背はどちらかというと低くめで

ごく普通の地味~な顔立ちであった。

有名なのは世界お金持ちクラブ会員の父を持つ

若宮春鶯という名前だけ…。


藤原も拘る熱血タイプの教師ではないので

ここはすんなり飛ばす事にした。


「じゃあ隣の大内くん、お願いします」


少し躊躇いながらも大内は席を立つ。


「はい、3年D組大内記才です。

生徒会の副会長をやっています。

宴に選ばれるのは初めてですが

全力を尽くして頑張りますので宜しくお願いします」


大内はこの学園の数少ない特待生である。

いかにも努力や苦労が全身からにじみでているタイプで

黒縁の眼鏡を掛けたノーブル学園らしくない生徒であった。


そこへ若宮が顔を背けたまま口を挟む。


「特待生は学費タダなんだから、しっかり点数稼いでよね」


「これこれ若宮くん、口を慎みなさい。

同じ左近のメンバーになったんだから

仲良くやっていきましょう。では次、桐壺さん……」



こんな調子で、一人のお坊ちゃまは事あるごとに口を挟み

初日から(わだかま)りが残ったまま打ち合わせは終了した。







「これじゃあ誰かさんのおかげで

チームワークなんてのは無理だな?

それに、こんなスケジュールで右近に勝てるのか?」


藤原がドームを出た後

帰り支度をしながら、桐壺がぼやいた。


「このスケジュールで物足りないなんて

さすが一年で選ばれるだけのことはあるね。頼もしいよ」


先ほどまで緊張で硬い表情をしていた大内がぎこちなく笑った。


「相手がめっちゃ強敵なのに

こんなトレーニング内容で満足していたら勝てませんよ。

それより将院先輩どうしたんだろ?葵、何か聞いてるか?」



「ううん、何も聞いてない」



葵は俯き加減で首を振る。


「残念だな。頭之中くんがこのチームで一番頼りになる人物なんだけど」


「急に仕事が入ったとか?

忙しそうだもんな…でも次はきっと来るよ!なっ、葵」


「うん!そうだね」



チームの繋がりを三人が意識し始めた頃

蚊帳の外にいた若宮が面白くないといった感じで

〝フンッ〟と鼻を鳴らした。


「分かってないな~、将院先輩はプロなんだよ?

特別扱いに決まってんじゃん。

一般庶民とアイドルが

一緒に肩を並べてトレーニング~なんてありえないし」


「なんかいちいち嫌味なヤツだな?ウザイから早く帰れよ」


「レイ!」


桐壷のきつく言い放った言葉に葵は釘をさす。

だが若宮は気にも留めず話を続けた。



「あっ、それともう一つ…」



人差し指をピンと立て思い切り葵目掛けて指を差した。


「おまえ」


「…わ、わたし?」


「おまえしかいないだろ?なんで選ばれたの?

何の取り得もない平凡…てゆーより以下だっ、その前髪!

キモイんだよ!

お前みたいなのが宴に出るのおかしくないか?」


「なんだとこいつっ⁉」


我慢の限界に達した

桐壺はとっさに若宮の髪を鷲掴んだ。


「いててててっ‼」


「やめなよ」


葵が慌てて桐壺の手を引き離すと同時に十本ほど毛が抜けた。


「いたいっ‼」


若宮は悲鳴をあげる。



「すぐに手を出さない!この間も肩がぶつかったくらいで

相手を殴ったでしょ?」



「ぶ、ぶつかっただけで殴った⁉」


若宮は手で顔を覆うと

ふらつきながら一歩大きく後へ下がった。


そこへ帰り支度を終えた大内が、鞄を机の上に〝トンッ〟と置く。


「まぁ確かに、若宮くんの言う事も一理ある…」


思いがけない大内の言葉に、桐壺は耳を疑った。



「なんだよ、先輩もこいつと一緒かよ⁉」


「だけど…それなら若宮君も同じだよね?

頭も運動神経も優れているって聞いたことがない。

どうして代表選手に選ばれたの?

左大さんが下ろされるなら

若宮くんも降りないといけないことになるよね?」


「ああ!なんだそ~ゆうことかぁ?

なかなか言うじゃねぇ~か先輩!」


〝バシッ〟


桐壺が大内の肩を力強く叩いたため、大内はよろめいた。

一方、今まで何でも自分の思い通りになってきた若宮は

逆らわれた事に腹を立て怒りを露にする。


「特待生のくせに

僕に偉そうなこと言ったね?

パパに言えばこの学園から追い出すことだって簡単にできるんだぞ!」


「うわ~こいつ最悪!」


「ほんと最低!大内先輩は関係ない」



「そーだよ、原因はおまえだけどね…

でも先輩は僕を怒らせちゃったから、見せしめに追い出してやる」



若宮はゴールド色したド派手なスマホを取り出した。

葵はこんな展開になるとは思わず

後ろめたい気持で一杯になった。


確かに葵は実力で選ばれた訳じゃない。

舞衣の負担が少しでも楽になればと

藤原に嘘をつき、メンバーに押し入ったのだ。


「やっぱりこいつ、一発殴らないと解からないようだな」


「待ってレイ!

……私が、ここに居るのが問題なんだよ。

代表を降りたら、大内先輩はやめさせないよね?」


「何言ってんだよ葵!」


「まぁ、大内は戦力になるからね。

同レベルの選手を探すのは大変だ。

それに比べておまえ以上の変わりならいくらでもいる」



大内は鞄をギュッと握り締めると、出口に向かって歩き出した。


「俺、このことを藤原先生に言ってくるよ」


「へぇ、まだ庇う気なの?

大内先輩はそんなにこの学園を辞めたかったんだ~?」


若宮はニヤリと笑うとスマホの画面に手を掛けた。


「待ってください大内先輩

若宮君の言うとおりです。私が降りた方が優勝に近づきます」


「分かってるなら最初っから代表選手

受けないでよね?ほんっと鈍い女!」



「誰が鈍い女だって?」



そこへ背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

全員が一斉に振り替える。

するとそこには、今まで見たことのない

怒りに満ちた顔の将院が立っていた。

いつもの優しく爽やかなイメージはどこにも無い。


「将院先輩‼」


若宮は直ぐさま立ち上がり

まるで好きなアイドルに出会えたかのように顔を輝かせ駆け寄った。


「待ってたんですよ!僕、若宮春鶯と言います!

先輩の大ファンなんです!

あっ、それでですねぇ

今みんなで作戦会議をしてたんですけどぉ~

ちょうど一人ダメなヤツを降ろしたところで…」



「ダメなヤツ?それはお前だろ」



若宮を見ようともせず、将院はき捨てる様に言い放った。


「せっ、先輩ったら、冗談きついですよ?」


「冗談じゃない、本気だ」


「そんなっ⁉僕じゃなくてこの女…」


「葵を降ろすヤツは、俺が許さない」


唐突に出てきた将院の言葉に

ドーム内が一瞬シーンと静まり返った。



「……え?」



何かの聞き間違えか?と、若宮は一字一句を思い返した。

将院は冷ややかな視線を若宮に下ろす。


「お前にはっきり言っておく。

俺が代表に入ったのは、葵が選手に選ばれたからだ。

葵が降りるなら俺も代表から降りる」


「そんな⁉向こうは朱雀先輩がいるんですよ!

朱雀先輩を相手に出来るのは将院先輩しかいません!」


「どう言われようと

葵が宴に出ないなら出る理由がない…」



そのやり取りを見ていた大内が

ハッとした様に顔を上げ、グーにした手を

(てのひら)の上でパチンと叩いた。


「もしかして!

左大さんは頭之中くんの彼女なのかい⁉」



「かっ、彼女⁉」



若宮の声が裏返る

まさか普通では到底考えられない組み合わせに目を丸くした。



葵は〝彼女〟の響きに見る見る顔が赤くなり

同時に頭の中を将院との記憶が駆け巡った。



靄がかかり、枠の端いっぱいに花が敷き詰められている。


(たしか、最初はココアの出会いだった。

そしてドライブに誘われて…

次は私が宴に出るから将院先輩も出るってことになって?

……まさかっこれがお付き合いの始まり⁈

知らなかった……


前に朝露が持っていた雑誌で読んだことがある。

〝つき合おう〟

とか言われないままに今の彼氏とつき合っているってっ⁉


男性経験のない葵は、てっきりこう思い込んでしまった。

鼓動がドキドキ鳴り始める。


葵は髪の毛の隙間から将院をこっそり伺った。


だが将院は慌てる様子も無く

いつもの様に甘く微笑み魅力的な唇がゆっくり開いた。



「いいや、彼女じゃない」



〝ドッカーンッ‼〟



いとも簡単にあっさり否定されてしまった。


大きなバケツが頭を直撃した様な激痛が走る。

心の奥までギュっと締め付けられ、葵はようやく自分の気持に気が付いた。



(もしかして、この苦しい思いは……将院先輩に恋してる⁈)








葵が家に着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

着替えを済ませリビングへと向かったが足取りは重く

思っていた以上に将院が心の中に入り込んでいるのが分かった。


恋する乙女の気持ちになれた瞬間、否定された…


〝彼女じゃない〟


まぁ、今まで将院に告白されたわけでもなかったが

あの感じからして

恋愛感情も抱いていない事が葵にでも読み取れたのだ。


「はぁ~、あの優しさは何だったのか?

……ってゆーかみんなに優しぃんだ?

このばかっ!勘違いにも程がある!」


葵は拳で自分の頭を何度か小突くと一気に階段を駆け下りた。



「お姉ちゃん!」


「わっ⁈」


階段の影から突然、朝露が葵の前に飛び出した。


「びっくりした~、なに?」


「聞いたよ!学園のトップアイドルが宴メンバーに入ったんだって?」


「え?何で知ってんの?」


「あのねぇ

三人は世界的有名人って言ってもおかしくないんだよ?

知らない訳ないじゃん。

それよりさっ

どっちと一緒のチームになったの?ショウ?それともコーキ?」


「…将院先輩だけど」


「キャー凄いじゃん!

一緒にトレーニングとかするの?

ってそんな訳ないか?

頼みこんでも嫌って言われるよね」



「するよ。練習の組み合わせ、将院先輩となったから」


「えええっ!マジッ⁈

キャーッ‼お姉ちゃん凄いついてるよ!」


いつもは十三歳らしからぬ

気取った態度をとっていた朝露だが

今日ばかりは顔をくしゃくしゃにして飛び跳ねた。


その横で葵は深くため息をつき

あの谷底に落とされた後の

確かそう言っていたであろう?将院の言葉を呼び起こした。






将院は葵が落ちこんでいることなども知らず

構わず宴の本題に入り始めた。

少々疑問も残る大内だったが

それほど興味のある話でもなかったので、流れを遮るのは止めにした。


若宮はそりゃそうだと大きく頷き

葵はスポンサーの娘か何かだと納得する。


唯一…桐壺だけが葵の動揺に気付いていたが

こんな立場に立たされるのは初めてだったので

どう慰めていいのか分からずアタフタしていた。


その落ちつかない桐壺の肩を将院はポンと叩くと

どうかした?的な表情を見せ、再び話しを続けた。


『右近に弘徽が入ったため、かなり難しい勝負になった。

こっちも本気でかからないと負けは確実になる。

それで考えたんだが、効率良く能力を伸ばすため

二手に分かれて集中特訓をすることにしよう。

大内と桐壺さんは若宮を徹底的にしごいてくれ。

特訓方法は大内に任せる』


『分かった。短い期間で何とか戦力になるよう予定を組むよ。

桐壺さんは体力面での特訓をお願いしていいかな?』


桐壺はジロリと若宮を睨みつけ、プイッとそっぽをむく。


『何だよその態度は……ハッ⁈』

(ヤバイ将院先輩が見てる)


将院が来てからというもの、若宮の態度は一変して大人しくなった。



『俺は、葵と別メニューで特訓をする。

来週の月曜から始めることにしよう。

葵は俺のプライベートルームへ直接おいで。いいね?』



将院の声がぼんやり頭を通り過ぎる…。

ショック状態が続いていた葵は

言われた内容を理解しないままただ黙って頷いた。






(恥ずかしい…全然釣り合わないのに勘違いしてしまった。

こんな思いのまま二人っきりでプライベートルームなんて酷過ぎる!

とりあえず将院先輩に気持を知られないようにしないと…)


「…ちゃん!お姉ちゃん聞いてる⁈」


「ああ、ごめん、ボーっとしてた」


「しっかりしてよお姉ちゃん!

ショウやコーキの前でへまだけは止めてよね!」


娘たちの騒ぐ声に何事かと、舞衣が二階から降りてきた。


「あらあら何の話で盛り上がってるの?」


「それがママ!

宴選手にあのショウとコーキが入ったんだよ!」


「まぁ、凄いじゃない!

テレビや雑誌に良く出ている人でしょ?」


「ねぇお姉ちゃん、サインもらってよ!」



「やだ、仕事忙しいみたいだし、それに断られるに決まってる」


「ケチ!」


「まあまあ、そのうち葵ちゃんの魅力に負けて

いくらでもサインをくれるようになるわ」


「ハーアッ、また始まった。ママの妄想」


朝露はしらけた顔をするとテーブルにだらんと寝そべった。


「あっ!そうそう!

そのトレーニングは明日からじゃないわよね?」


「うん、月曜からだけど、どうして?」



「とうとう来てしまったの…

気軽にご飯食べて、適当にお話して、さっさと帰ってくる日…」


舞衣の意味ありげな言い方に葵は首を傾げたが

朝露ははっきり言葉に表した。


「あぁ、明日お見合いの日だったね」


リビングに〝お見合い〟の声だけが木霊する。



「す、すっかり忘れてた!」



「と言うわけだから

ママの魔法で今から大変身しちゃいま~す!」



舞衣は後ろ手に隠し持っていた

鋭く尖った物を目の前に出すと

葵の髪に手をかけ、嬉しそうにチョキーンと空を切った。

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