対峙(編集しました)
恐る恐る頭に手を乗せてみると気持ち良さそうに目を細めた。
(なんだか猛獣と言うよりも猫を相手にしているみたい)
そう思いながら耳の後ろや顎も撫でていると突然ビクッと震えた。
「え?」
どうしたのだろうと思ったら遠くで物が割れる音がした。続いて野太い男の叫び声が聞こえてきた。
虎が怯えた様子で一層くっついてきたので落ち着くように撫でていると足音が近づいてきた。
「失礼します」
彼女が帰ってきたと思ったら彼女の後ろから見覚えのある男が入ってきた。
「邪魔するぜ」
「…」
人懐っこそうな笑みを浮かべながら私の前に座るが、私はさっきのリボンとブローチを隠し持ちながら警戒する。
「中々起きねえから心配したぜ」
「心配?」
男の言葉に皮肉混じりの声が出てしまう。
「誘拐しておいて心配だなんて、よく言えますね。」
「そりゃそうだ。病気にでもなったら大変だからな」
「…残念ですが、私を誘拐しても大した身代金は出ませんよ」
「ん?」
「私の家は位こそ高くても財産はほとんどない貧乏貴族です。あなたが満足できるような金銭は用意できませんよ」
男を睨みながら言う。獣相手ではすくんでしまうけれど、相手が人間なら饒舌戦でなんとでもなる。
「じゃあ、お前はどうしてほしんだ?」
「国に返してください。今ならまだ誘拐自体をなかったことにできますから」
私の言葉に男が呆れ顔をした。『何言ってんだ?この女』と顔にはっきりと書かれている。
「私の父は騎士団の団長を務めている将軍です。父に話を通せばあなたの罪状をなかったことにできます」
「いやいやいや、あんた自分が何言ってんのかわかってっか?」
「大体今の時代に誘拐して身代金の要求をするなんて無謀です。受け取りや私の身柄の引き渡しで必ず捕まってしまうでしょうに」
もっと言ってしまうと水魔法に『探査』の呪文があるから時間がたてばたつほど私の居場所が割れて男側が不利になるのだけれど誘拐犯にそこまで言ってやる義理はない。
と、いきなり男が笑い出した。
「あんたおもしれぇな」
しばらく笑った後に言った男に私は睨んでいた目をさらに眇めた。
「…女性に対してその表現は失礼だと思います」
「いや、おもしれぇよ。知らん男に知らん場所に連れてこられてそこまで口が回るのも珍しいぜ。普通は小さく縮こまっているものなんじゃねぇのか?」
「知りません。誘拐されたのは今回が初めてですから」
「おし!決めた!」
何を決めたのか、いきなり両手を勢いよく打ち付ける男。
「お前、ここにいろ」




